暁 朝 昼 夕

物語詞。登場人物の述懐、および断片的な言葉。

カサンドラ

2005年09月19日 | 私のフィクション
     彼女が抱きしめてというから抱きしめる これは恋じゃない ひるがえるセーラーカラーをおさえて 撫ぜて 彼女が抱きしめてというから抱きしめる これは恋じゃない 皮のチョーカーがほしいというからあげた 二年間だけ私を縛ってと彼女はいった 彼女が抱きしめてというから抱きしめる これは恋じゃない 樫の木の下で会わずけやきの並木道も通らず 白いスカーフの交換もせず . . . 本文を読む

新世紀

2005年09月16日 | 私のフィクション
    ばかみたいねあなた なぜわけたがるの 人間だろうとそうでなかろうと 頭の中身なんてわからない 感情を人間だけの特権にしたがって あなたは真実かもしれないものに 蓋をしている 私は蓋をあけて 「彼」と結ばれる 人でない「彼」と 幸せになるわ    . . . 本文を読む

憧れぬ想い

2005年09月02日 | 私のフィクション
    月がどんなに輝いてみえても あれはただの石の塊 それなのに  帰りたいと祈っては仰ぐ 海の波がどんなに寄せては返すものでも あれはただの水溜まり それなのに  還っておいでと声がきこえる 目を閉じれば きっと 器(からだ)は溶けてゆき きっと 魂(こころ)は昇ってゆく それでも私は目を閉じずに この黒い土を踏みしめよう たとえば此処に かえる場所がみつからなくとも 私は目を . . . 本文を読む