彼女が抱きしめてというから抱きしめる
これは恋じゃない
ひるがえるセーラーカラーをおさえて
撫ぜて
彼女が抱きしめてというから抱きしめる
これは恋じゃない
皮のチョーカーがほしいというからあげた
二年間だけ私を縛ってと彼女はいった
彼女が抱きしめてというから抱きしめる
これは恋じゃない
樫の木の下で会わずけやきの並木道も通らず
白いスカーフの交換もせず . . . 本文を読む
ばかみたいねあなた
なぜわけたがるの
人間だろうとそうでなかろうと
頭の中身なんてわからない
感情を人間だけの特権にしたがって
あなたは真実かもしれないものに
蓋をしている
私は蓋をあけて
「彼」と結ばれる
人でない「彼」と
幸せになるわ
. . . 本文を読む
月がどんなに輝いてみえても
あれはただの石の塊
それなのに 帰りたいと祈っては仰ぐ
海の波がどんなに寄せては返すものでも
あれはただの水溜まり
それなのに 還っておいでと声がきこえる
目を閉じれば
きっと 器(からだ)は溶けてゆき
きっと 魂(こころ)は昇ってゆく
それでも私は目を閉じずに
この黒い土を踏みしめよう
たとえば此処に
かえる場所がみつからなくとも
私は目を . . . 本文を読む