昨年、2023年9月16日(土)に日本で公開されたインドのドキュメンタリー映画『燃えあがる女性記者たち』(2021)。ウッタル・プラデーシュ州(UP州)の小さな街で、「カバル・ラハリヤ」という新聞を発行しているダリト(被差別カースト)の女性たちにスポットライトを当て、そのうちの3人を中心キャラクターに据えて彼女たちの活動を追ったものです。インドの現状と地方の街の空気を見せながら、彼女たちの生き方、働き方と周囲の人々とを丁寧に捉えていて、観る者を惹きつけずにはおかない作品でした。『燃えあがる女性記者たち』のデータと予告編は次の通りです。
『燃えあがる女性記者たち』 公式サイト
2021年/インド/93分/ドキュメンタリー/原題:Writing With Fire
監督:スシュミト・ゴーシュ、リントゥ・トーマス
配給:きろくびと
【9.16公開】ドキュメンタリー映画『燃えあがる女性記者たち』本予告
この映画が、このたびDVDになりました。いつもインド映画関連のDVD発売に関しては発売をチェックしているのですが、この映画には気づかず、配給会社のきろくびとさんが送ってきて下さったことで初めて知りました。きろくびと様、ご恵存ありがとうございました。アマゾン沼での紹介はこちらです。
ドキュメンタリー映画のソフト化は、公開規模や興収から言っても劇映画とは違うため、難しいところがあります。これまでインドのドキュメンタリー映画は比較的よくソフト化されていますが、私の大好きな映画『あまねき旋律(しらべ)』(2017)がいまだにソフト化されないなど残念なケースもあり、今回『燃えあがる女性記者たち』のDVDが発売されたことは、とっても喜ばしいです。特に、インドにおけるジャーナリズムや差別問題(カースト差別、女性差別など)に関心のある方は、お求めいただいてじっくりと見ていただければ、大変参考になると思います。図書館などでも、購入して閲覧に供していただきたいものです。もし、このDVDを素材にして学習会などをなさるようでしたら、私が映画上映後のトークに使ったレジュメを提供致します。たいした内容ではないのですが、①インドのメディアについて、②「カバル・ラハリヤ」について、③カースト制度について、をごく簡単にまとめてありますので、ご希望の方はコメント欄を利用してメールアドレスをお知らせ下さい。レジュメを添付ファイルでお送り致します(このコメントは非公開にしますので、ご安心下さい)。
この、『燃えあがる女性記者たち』のDVDには、さらに優れた点が2点あります。一つは、【封入特典】として解説書が入っていること。ここには、この作品の背景説明や「カバル・ラハリヤ」の公式サイトの記述などと共に、前述した3人の女性記者、ミーラ、スニータ、シャームカリという3人の写真やプロフィールも掲載されています。作品を見た後で、この解説書を読みながらみんなで話し合う、ということもできる、すぐれた手引き書です。もう一つの優れた点は、この解説書にあるQRコードを使って、劇場公開時のパンフレットを購入できる、しかも割引購入できること。このパンフレットがスグレモノで内容超充実、シナリオも採録されています。このパンフレット販売方法、他の劇映画も見習ってソフト化時にやってほしいですね。
監督であるリントゥ・トーマス(右)とスシュミト・ゴーシュ(左)はどうしているかしら。今年2月末にデリーに行った時、やはりドキュメンタリー映画作家で、『わが理想の国』の監督ノウシーン・ハーンと会ったのですが、彼女が母校であり、作品の舞台ともなったニューデリー南東部にある大学ジャーミヤー・ミッリーヤー・イスラーミヤー(以下、JMI)に案内してくれた時、その構内に二人の写真がかざってあり、おお、母校の誇りなんだな、と思ったのでした(記事はこちら)。秀作が多いインドのドキュメンタリー映画、これからも公開が続いてほしいものです。