アジア映画巡礼

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『バルフィ!人生に唄えば』のプリヤンカー・チョープラーのこと

2014-08-13 | インド映画

『メアリー・コム(Mary Kom)』のプリヤンカー・チョープラーの姿が脳裏から消えません。旅先ですが、『バルフィ!人生に唄えば』のジルミルちゃんのご紹介ついでに、プリヤンカー・チョープラーのことをちょっとご紹介したいと思います。

(C)UTV Software Communications Ltd.

『メアリー・コム』のお話は最後にするとして、『バルフィ!人生に唄えば』のジルミルにはすっかり欺されました。予告編をシンガポールの映画館で見た時、「これ、誰?」と全然わからなかったのです。子供の出演者だとばかり思っていて、「新人かしら?」と考えたりしていました。くるくる天パーの髪型(えー、戦前によく洋画を見ていた亡き母は”テンプルちゃん”と言っていました)や子供服デザインのスカート、白いソックスにストラップの付いた靴など、外見を見事に変えていただけではなく、その表情もしぐさも、12、3歳の女の子そのものだったのです。精神的な障害を持つ女の子、という設定も上手に表現されており、「子供ながらすごい演技力がある。将来名女優になるかも」などと思ったのでした。あとでプリヤンカー・チョープラーとわかって、文字通り仰天しました。

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「ジルミル(Jhilmil)」という名前もステキです。「キラキラする、輝く、閃光」といったような意味で、彼女を可愛がっていた祖父がつけたのでしょうか、音の響きもとてもいいですね。最初に聞いた時から、「チルチル・ミチル」の名前が二重写しになる感じです。実はデリーの地下鉄には、同じ名前の駅があります。レッドラインのカシミーリーゲート駅から東へ6つ目の駅で、いつか一度行ってみようと狙っています。

ジルミルの祖父はダージリンの大金持ちで、亡くなった時に財産の大部分をジルミル名義の信託にしたことから、ジルミルは誘拐事件に巻き込まれていきます。その背景には、ジルミルの両親が彼女の存在をうとましく思っているという事実がありました。遺産はジルミルに持って行かれてしまい、自分たちには信託から毎月の生活費しかやってこない。ハイソな生活を楽しみたい両親にとって、ジルミルは邪魔な存在だったのですね。

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ジルミルがなついていたのは、遠くの村から働きに来ていた乳母。インド東部州地域のどこかから、という設定のようで、父親に解雇された乳母を、のちにジルミルとバルフィが訪ねて行くことになります。ジルミルを乳母の元に送り届け、バルフィはこれで自分の役目は終わった、と思っていたのですが、そうは問屋が卸しませんでした。そのあと、ジルミルとバルフィの人生第2章がコルカタで始まるのです....。

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コルカタでのジルミルは、だんだんと大人の女性になっていく、という面が描かれていきます。そこはちょっと微妙な演出なのですが、そこまでのプリヤンカー・チョープラーはもう素晴らしいのひと言。ぜひ、皆さんご自身の目で確かめて下さいね。

プリヤンカー・チョープラーは1982年7月18生まれ。2000年にミス・インドのタイトルを獲得、ミス・ワールドの大会に出て、見事こちらのタイトルも射止めます。世界一の美女になり、インド映画界がほおっておくはずはなく、映画界入り。以下、2002年のデビュー作以降の女優としての成長記録(?)を、代表作をピックアップしながら見てみましょう。特にことわってないのは、ヒンディー語の映画です。

2002年 『タミル人(Thamizhan)』(タミル語/監督:マジート/主演:ヴィジャイ)~YouTubeに英語字幕付きで全編がアップされています。デビュー作、単に可愛い女の子、という感じですね。

2003年 『ヒーロー:あるスパイの恋物語(The Hero:Love Story of a Spy)』(監督:アニル・シャルマー/主演:サニー・デオル)~いまひとつヒットしませんでしたが、モダンな大人の女性という彼女のイメージが早くも出来上がっています。これもYouTubeに全編が。

2003年 『スタイル(Andaaz)』(監督:ラージ・カンワル/主演:アクシャイ・クマール)~フィルムフェア誌賞の新人女優賞獲得。歌のシーンはこちらとか。この頃はまだ、アブナイシーンの導入時には雷が鳴っていたのですね(笑)。

2006年 『DON 過去を消された男』(監督:ファルハーン・アクタル/主演:シャー・ルク・カーン)~日本版DVDも出ています。かなり激しいアクションにも挑戦。歌のシーンはこちらとか。男前なヒロイン役がよく似合っていました。

2008年 『ファッション(Fashion)』(監督:マドゥル・バンダールカル/共演:カングナー・ラーナーウト)~国家映画賞とフィルムフェア誌賞の主演女優賞を獲得。印象的な演技のシーンはこちらとか。押しも押されぬ一人前の女優に成長した、という感じでした。ファンの方は必見です。

2009年 『悪党(Kaminey)』(監督:ヴィシャール・バールドワージ/主演:シャーヒド・カプール)~このあたりから、下町の貧しい娘ながら、芯も鼻っ柱も強い女性を演じるようになり、それがまたハマり役になります。この系列ではほかに、『火の道』(2012)など。『悪党(カミーネー)』予告編と印象的な歌はこちら

2009年 『あなたの誕生星座は何?(What's Your Raashee?)』(監督:アーシュトーシュ・ゴーワーリーカル/共演:ハルマン・バウェージャー)~12通りの女の子を演じ分けた演技力はさすが。予告編でご覧下さい。

2011年 『7つの殺人の赦し(7 Khoon Maaf)』(監督:ヴィシャール・バールドワージ/共演:イルファーン・カーンら)~ラスキン・ボンド原作の映画化で、7人の夫を持った女性を演じて見せたのですが、ちょっとすべった感がありました。残念。予告編はこちら

2012年 『バルフィ!人生に唄えば』~いよいよ8月22日(土)より公開です! 公式サイト公式FB、チェックしてみて下さいね。ジルミルの、一瞬、一瞬の表情に惹きつけられます。プリヤンカー・チョープラーの演技、もう最高です!

2014年 『メアリー・コム(Mary Kom)』(監督:オムング・クマール)~実在のボクサー役に挑戦。予告編はこちら。再びプリヤンカー・チョープラーの演技力と身体能力が花開いているでしょうか?

今インドのネットでは、「この作品でプリヤンカー・チョープラーが主役メアリー・コムを演じるのは是か非か」という質問が話題を呼んでいます。メアリー・コムは東部インド、マニプール州の人なので、顔立ちはモンゴロイドであるため、インド・アーリア系の顔立ちのプリヤンカー・チョープラーが演じるのはおかしいのでは、ということから出てきた質問です。でも、東部インドの諸州出身者の女性たちは、「そんなの関係ないわ」「プリヤンカーはいい女優よ。どんな演技をしているのか見てから言ったら?」という風に、「そんな質問ナンセンス」といったツイートを返しています。さて、結果はどうなるでしょう? 9月5日の公開が待たれます。

(C)UTV Software Communications Ltd.

『バルフィ!人生に唄えば』では、西ベンガル州の美しい風景も見どころのひとつ。ジルミルとバルフィの純粋な愛の交歓と共に、ダージリンやコルカタの風景もお楽しみ下さいね。上のスチールにも、これはベンガルの物語、と一目でわかるものが写っています。その説明は次回、イリヤーナー・デクルーズの項でまた。  

 


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2 コメント

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楽しみです! (アールゴービー)
2014-08-15 11:15:22
インドのTVで“バルフィ”のダンスシーンを観る度、どんな映画か気になってしょうがありませんでした。その後、TVとエア・インディアの機内で2回観て、すっかりお気に入りの1本になりました。
最初、プリヤンカには合わない役なのではないかと思いましたが、とんでもなかった。素晴らしい演技で、自然で何の違和感もありませんでした。 ランビール・カプールもあまり興味なかったのですが、この作品ですっかり魅せられてしまいました。そしたら、日本で公開という嬉しいことに。インドに戻る予定を2週間延ばして、絶対観に行きます。

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アールゴービー様 (cinetama)
2014-08-16 00:41:43
コメント、ありがとうございました。

確かに、『バルフィ!人生に唄えば』も何度見ても飽きませんね。
最初見た時は時制があっちに飛んだりこっちに飛んだりするのでちょっと混乱したのですが、3度目ぐらいからいろんな細部が楽しめるようになりました。
日本語字幕は藤井美佳さんのお上手な訳ですので、ぜひ日本でご覧になって下さい。初っぱなの「♪ピクチャル・シュルー~♪」から、ステキな訳が続きます。お楽しみに~。
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