新じゃがのやうな笑顔に育ちたり
掲句は「NHK全国俳句大会」題詠(新)の部 正木ゆう子・選(秀作)に採っていただいた。「入選作品集」に続いて「賞状」が送られてきたことには驚いたが、嬉しくもあった。
この句の背景には、幼稚園児たちと行ったじゃがいも栽培の経験がある。4月早々に植え付けて7月ごろ収穫したように記憶している。4歳児と5歳児の2クラス、海を見はるかす高台の幼稚園。近くの農地をお借りして栽培した。
何と言っても収穫時の光景が眼に浮かぶ。茎や葉を残しておくので、子どもたちは力一杯それを引っ張るということになる。抜けたじゃがいもが転がり出る時には、子どもは大きく尻もちをついている。でも、誰も泣いたりしない。土を付けて輝いているじゃがいもと、土を付けて笑っている園児たち。子どもが笑い、じゃがいもが笑う。先生たちも笑顔、海からの風が心地よい。子どもたちと過ごしたあの幼稚園の日々を忘れることはない。
あの子たちの笑顔は今も「新じゃが」のように輝いているだろうか。
海の見える大好きな幼稚園、3.11で大きく崩落し、廃園となった。