![]() | 博士の愛した数式 (新潮文庫)小川 洋子新潮社このアイテムの詳細を見る |
この本はとても素晴らしい。この本を知ったのは「読んだ、飲んだ、論じた」(鹿島茂、福田和也、松原隆一郎)の書評であった。この書評を読んで購入した。これは映画にもなったから知っている人も多いでしょう。
素晴らしいと思ったのは数学の美しさだ。記憶を失った博士が大の阪神ファンで、しかも江夏の大ファン。江夏の背番号は28で、これは完全数の1つ。完全数とは約数を全部足すと、元の数字になる数字のことである。たとえば、6は完全数。約数は1,2,3であり、1+2+3=6、28の約数は1、2、4、7、14でこれを全部足すと28になる。非常に美しいですね。江夏は天才肌の投手だから、小説の背景としても美しい。
それから話者の誕生日と博士の時計の番号が220と284が「友愛数」であることもロマンチシズムを搔きたてている。
この書評で川上弘美の「センセイの鞄」も知った。その類似性との比較が論じられていた。そこで、知ったのだが、小川洋子も川上弘美もともに芥川賞の選考委員になっている。今やこうした若手の女流作家の時代になっているのだ。