増田カイロプラクティック【読書三昧】

増田カイロプラクティックセンターのスタッフ全員による読書三昧。
ダントツで院長増田裕DCの読書量が多いです…。

東京大空襲のこと

2008-03-16 22:49:13 | 増田裕 DC
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丸谷 才一
朝日新聞社

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本書のなかに「東京大空襲のこと」という随筆が載っている。読んだはずなのに、すっかり忘れている。さすが、丸谷氏は見ていたのですね。

「フォッグ・オブ・ウォー」の試写の感想が書かれている。エロール・モリス監督の映画でアカデミー賞受賞作である。

「マクナマラ元国防長官がほとんどでづばっりで、回想し、証言し、反省する。彼がケネディ、ジョンソン両大統領の下でかかわったベトナム戦争についての否定的見解だが、なかに日本とのいくさの思い出もまじる。戦争末期、若いマクナマラはグアム島にあって、司令官ルメイの指揮下に、統計将校として働いていたのだ。東京大空襲について彼は言う。「たった一晩で、われわれは十万もの民間人を殺していいのか。戦争が終わってから、ルメイはぼくに言った。もし敗けていたらおれたちは戦争犯罪人だね、と。その通りだと思う」。わたしは東京への無差別爆撃についてアメリカ人がこの種のことを述べるのをはじめて(しかも当事者の口からじかに)聞いたので、その倫理感と率直さに衝撃を受けた。」

丸谷氏はヒロシマ、ナガサキについての言及については物足りない気がしたと述べている。確かに、マクナマラはこれについては直接明確に述べていない。それは、間接的に、あれだけ、日本全土を無差別爆撃して日本の抗戦意思を打ち砕いたのだから、原爆投下はやり過ぎだと批判しているのである。彼にとっては、焼夷弾による夜間無差別爆撃の衝撃が大きかったと言うべきか。

丸谷氏はマクナマラの贖罪をキリスト教におけるペテロなどの信仰から挫折へ、挫折から新たな信仰へという振子運動と同じものを見る。こうした深い人間洞察は学ぶところが大きい。




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