goo blog サービス終了のお知らせ 

落葉の積もる場所

- The way I was -
 

 ちっぷ 走る  

2014年08月02日 | WEBLOG



















「どうしてだろう」



ちっぷは苛立ちながら立ち上がった。











弟のでーるは、まだ2歳。



こういった用事は僕のところへ来るんだ。













その日、父は警察での勤務を終え、いつものようにまっすぐ帰宅した。



そして忘れ物に気が付いた。









「ちっぷ! 柿の種を買うて来い」








もう夜も暮れかけている7時前。










どういうわけで柿の種が食べたいんだ。



たった一口の酒も飲めないのに。





























10円玉を握り締めて僕は菓子屋に向けて走り出した。







時間はなんとかなる。



閉店の7時までになんとか間に合う。








家の裏は広大な畑で、その端をかろうじて人が通り過ぎれるほどの道があった。






畑の道を走って下り、うっそうとした藪まで来たら左折。









また狭い路地を抜けるとようやく人家が見えた。





もう各家には電灯が灯り、夕ご飯の匂いが漂っていた。

















そのあたりからは道も舗装され、菓子屋まではもう僅かだ。







なんとか7時ぎりぎりに店に入って柿の種を購入した。

















しかし周囲は薄暮というか、すでに暗闇が降り始めていた。



10円分の柿の種の入った袋を握り締め、僕は来た道を急いで帰る。









とにかく急がなければ真っ暗な畑道が待っているから。






































































人家がなくなったあたりから、僕の後ろを歩く音がするのに気がついた。



















こつこつこつ、






いや、ざくざくざく、 かな。





































姿は見えないのに、靴の音だけが妙に耳に響いた。





































悪い人?






普通のおじさん?


























けれど僕の頭の中には最悪なものが渦巻いていた。


















































これは、幽霊?









































































走った。





誰もいない道を思いきり走った。
































一度転びかけたが、委細構わず僕は必死に走った。







































自宅の灯りが見えたところでようやく僕は気がついた。





































いつの間にか、あの足音が消えていることに。















































































































父は柿の種を食べ、母はでーるに食事をあげていた。






どこにでもある昭和の残像。

























































































そして僕はその夜、、




夢を見た。

























皆が寝こんでいる真夜中、



とんでもない悲鳴を上げて、怒られた。

























































































































































ざっ ざっ ざっ ざっ ざっ















軍靴 を履いた人が僕の後ろを歩いて来る。


















ざっ ざっ ざっ ざっ ざっ ざっ ざっ ざっ
































































































































































































































はるか昔、  昭和40年頃のお話。