「中国の担々麺は汁無し」というのを知ったのは
いったいいつ頃だったのだろう?
かなり早い段階で知っていたと思うし、
「タンタンメン」の漢字は「坦々麺」ではなく
「担々麺」であることももちろん知っていた。
それは単に私が物好きなだけはなく、
そこそこ中国への知識もあったからだと思う。
そんな汁無し担々麺。
濃厚な芝麻醤味のものもあれば、
さっぱりとした黒酢味のものもあって、
食べ比べてみると奥が深い。
どちらが好きとは決められず、
そのときの気分でこってりかさっぱりを食べ分ける。
もちろん四川で食べた担々麺は汁無しだったけれど、
不思議なことに北京や上海で食べた担々麺は
汁そばになっていた。
スープの味がいやに薄い、さして美味くもない麺だった。
汁有りの担々麺で比べれば、圧倒的に日本の方が美味しい。
だけど。
やはり汁無しをぐちゃぐちゃとかき混ぜて
ビールで喉に流し込む幸せを味わいたくて
ついつい汁無しを食べにいく私なのであった。
歌舞伎町はいまだに謎だ。
何がどうなっているのかさっぱりわからない。
そんな歌舞伎町に湖南料理の店がある。
中国の湖南省といえば毛沢東の故郷。
そして湖南省といえば激辛料理が有名だ。
毛沢東に思い入れはないが、
辛い料理はほどほどに好きである。
そんなわけで数年ぶりに湖南菜館のドアを潜った。
雑居ビルに入っている小さな店で
とにかく雰囲気も怪しげだけれど
出てくる料理はきちんとしているのが
これまた不思議なところである。
今回は水煮牛肉の一択。
辛くて美味くて香ばしい。
ご飯にも合う。
多分麺にも合うだろう。
もしかしたらパンにも合うかもしれない。
そんな可能性を秘めた水煮牛肉。
食べるときには覚悟をしっかり決めてください(笑)。
餃子は美味しい。
水餃子のぷっくりふくれたお腹と
モッチリした生地は間違いなく美味しい。
カリッとした食感で
香ばしい味わいの揚げ餃子も美味しい。
焼き餃子?
焼き餃子はもちろんその中間的存在で
両方のいいとこ取りなのだから
これまた絶対美味しいに決まっている。
カリカリに焼けた底面を
恥ずかしげもなく露呈させて、
はんなりと身をよじった姿は
そりゃもう、辛抱たまらん、
何が何でも喰らいつきたくなるものだ。
ここ、銀座天龍の餃子は
モンキーバナナよりも一回り大きいくらいで
とにかく大ぶりなのが有名だ。
その大きさゆえか、中身の餡は
ふっくらしていてジューシーである。
1人前が8個だけれど、1本、また1本と食べ続け、
気づけばいつの間にか皿は空になっている。
いや、今度は自分のお腹が餃子みたいになっちゃったね。
それはそれはオソロシイものらしい。
ある店で「5番辛口」と呟くと
そのオソロシイものが出てくるらしい。
あるものは打ちのめされ
あるものは撃沈する。
それが「5番辛口」なのだ。
で、「5番辛口」って結局何なの?
それは定食の5番、麻婆春雨を辛口オーダーしたもの。
とにかく赤い。
唐辛子の赤さ全開である。
「もはや料理ではない」と呼ぶ者もいれば、
「唐辛子の中に春雨が混じっている」と
詩的な表現をする者もいるようだ。
そんな「5番辛口」。
恐る恐る食べてみたい。
ナルホド、唐辛子の海で春雨が泳いでいる。
もはや唐辛子を食べているのか
春雨を食べているのかわからない。
それなのに。
食べ終わってしばらく経ったら
また食べたくなってきた。
やっぱり「5番辛口」はオソロシイ。
その店は徹底的に庶民的だ。
店の前にはおすすめ料理のサンプルが並び
夜でも定食メニューが提供されている。
店のドアをくぐると、近くの住民らしき
ごく普通の客がテーブルを囲んでいる。
どうでもよさそうな態度で席に案内され、
ビールと料理を注文すると、
あっという間に料理がテーブルに出てくる。
まるで注文される料理が分かっているかのように
すかさずテーブルにのってしまうのだ。
「海老ぷりぷりワンタン!」
魔法の呪文のように一言唱えれば、
あっという間にテーブルに現れる。
ぷりぷりとした海老がごろりと入ったワンタンは
2個目を誰が食べるかで揉めてしまう。
あるとき、呪文を唱えても(!)
いつまでも料理が現れないことがあった。
これはおかしい、と呪文を唱えなおした。
料理は無事に現れた。
呪文が長くなりすぎると魔法の効力が薄れるらしい。(笑)