「相棒」
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Leroy Carr & Scrapper Blackwell
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リロイ・カー(ピアノ、ヴォーカル)とフランシス”スクラッパー”ブラックウェル(ギター)は、ブルース史上、最高のコンビだと思うのですわ。 物憂げなピアノとヴォーカルのスロー・ブルース『Midnight Hour Blues』、ブルーム調の『I Believe I'll Make a Change』、ブギウギ調の『Take a Walk Around the Corner』など、'32~'34年に録音されたアルバム『Blues Before Sunrise』では、絶妙なコンビネーションを聴かせてくれます。 音楽で稼ぐ前、10代の頃から密造酒作りなんぞしてツルんでた連れだったんですな。 事実、大好きな酒が祟り、30歳の若さでリロイが早逝してしまうと、相棒を失ったフランシスはギターを弾くのをやめちゃったみたいです。
っぱ、リアルなほうの端くれギター弾きである阿呆烏は、スクラッパー・ブラックウェルのギターに耳が逝っちゃいますわ。 このひとのスタイルは、戦前のギタリストでは、2番か、3番を争うくらいに好きなんです。 シティ・ブルースの立役者のように言われるリロイ・カーですが、フランシスのギターには、カントリー・ブルースの荒々しさが色濃く残っております。 ほんで、音がユニークでして、同時期の他のアコースティック・ギターの音に比べ、えらいソリッドで、カラッとクリスピーな音なんですな。 他がツイード・ツインだとすると、こっちは銀パネ・ツインみたいな...はたまた、アコースティック界の”Greeny”みたいな。
このコンビの音楽性は、『It's Too Short』のような人間の本能を突き動かすパワーのある曲を聴くと、「ソフィスティケイトされたシテ・ブルース」という言葉で括るのは難しく、”カントリー・ブルースから、シティ・ブルースへ”、”バレルハウスから、ブギウギへ”の到着点的な立ち位置になるんでしょうか。
時は、世界恐慌。 大不況の真っただ中、人種差別と貧困から逃れるため、”南部から都会へ”移り住んだ黒人たちがぶち当たった「幻滅」に、寄り添って流れていた日常の音楽なんですな。
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