Chicago51

ギター、ジャズ、BABYMETAL...ぼちぼちと

Blues、ブルース!ぶる~す!! ~その10~

2011年11月06日 | Blues CD

「漫才師ちゃいますねん。 魔術師でんねん。」

Tampared

Tampa Red

 ”The Guitar Wizard" タンパ・レッドの登場でおま。 みてくれは「ザ・昭和の漫才師」ですが、歴とした「ブルースの大物」、「スライド・ギターの魔術師」でおま。 このひとは、商業的にも大成功し、戦前、戦後と活躍期間も長く、300以上の曲(多くがブルース・スタンダード・ナンバーとして定着。後述)を遺しているので、今回は、写真のP-VINE戦前ブルース・シリーズ収録の’28年~’46年にスポットを当て、ウダウダと。

 阿呆烏は、戦前だとブライド・ウイリー・ジョンソン、戦後では、エルモア・ジェイムズに、マディ・ウォーターズといったお歴々の、泥臭く、えぐい和音スライド・プレイの影響をモロに受けてるんですが(と、クソ生意気に語ってみる)、もひとつ大好きなスタイルに、タンパ・レッドの『You Got Reap What You Sow』、『I’ll Find May Way』のような8小節ブルースを単音スライドで弾くというのがあります。 この単音スライド・プレイというスタイルを最初に確立したのが、タンパ・レッドなわけですな。 

 このひとの音楽には、ブルースの大きな根源である「哀」「怒」が欠落していて、ひたすら明るく軽快で、都会的なパーティー向きの演奏が続きます。 

キラッと光るギターは、ホウカム・ボーイズ時代のジョージア・トム(後の「ゴスペルの父」トーマス・A・ドーシー)や、奇天烈ハーフ・パイント・ジャクスン(『It's Tight Like That』...凄い)といった強烈な個性を持つヴォーカルに埋もれることはございません。 

が、っぱヴォーカルがいない分、単音スライドが歌いまくる『Bumble Bee Blues』(おっ、バンブルビーや!馬鹿には分かるこのうれしさ)、『Boogie Woogie Dance』、『You Got Reap What You Sow』みたいなインストのほうが、この魔術師の凄さがよくわかります。  さすがに’40年代に入ってからは、相棒ビッグ・メイシオの重厚なピアノに押されまくってますが...『Mercy Mama』とか痛々しい...それにしても、凄いピアニストや(絶句)。

 そして、阿呆烏的に、決して聴き逃せないのが、このひと”カズーの名プレイヤー”でもあるんですよ! 30年代半ば、ギターはバッキングのみ、カズーでメロディーをとり、ソロを実に軽やかに気分よく吹きまくる時期があるんですわ。 痛快!!『If I Let You Get Away with It(You'll Do It All Time) 』なんか、タンパ・レッドの曲のなかで一番好きな曲で、クラプトンが『Play the Blues』でこの曲を取り上げなかったのが、悔やまれる。 クリス・クレンショーのトロンボーンでこのカズーのパートを演ってほしかった。 ヴォーカル・スタイルも今のクラプトンには、ピッタリやと思うんですが(一音下げで)。

 彼のスライド・スタイルは直系のロバート・ナイトホーク、アール・フッカーのスライド奏法、BB・キングのスクィーズ奏法に受け継がれ、さらにそのフォロワー達へと引き継がれていくことになります。 

さらに、もひとつの偉大な功績は、彼のうちに身を寄せていた南部からの流れ者から、マディ・ウォーターズ、エルモア・ジェイムス、ウイリー・ディクスン、サニー・ボーイ・ウィルアムスン...などなど錚々たるシカゴ・ブルースの巨星たちが巣立っていくんですわ。 まさに「シカゴ・ブルースの父」だったのですな。

 「スライド・ギターの魔術師」「シカゴ・ブルースの父」そして「昭和の漫才師」と、彼のギター・プレイと同じくいろんな顔を持っていたのです。

『Black Angel Blues』・・・BB・キング

『You Missed a Good Man』・・・ロバート・ナイトホーク

『Anna Lou Blues』・・・エルモア・ジェイムズ、R・ナイトホーク

『Don't You Lie to Me』・・・アルバート・キング、チャック・ベリー、ゲイリー・ムーア

『It Hurts Me Too』・・・ジュニア・ウェルズ、E・ジェイムズ、エリック・クラプトン

『Let Me Play with Your Poodle』・・・ライトニン・ホプキンス

『She Want to Sell My Monkey』・・・リトル・ウォルターの『Oh Baby』の原曲

『Crying Won't Help You』・・・ロバート・ナイトホーク

と、このCDに収録されている作曲がハドソン・ウッドブリッジ名義(タンパ・レッドの本名)の主な曲だけでも、こんだけ戦後ブルースの巨人たちに、そしてそのフォロワーたちにカバーされとります。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Blues、ブルース!ぶる~す!... | トップ | Blues、ブルース!ぶる~す!... »
最新の画像もっと見る

Blues CD」カテゴリの最新記事