Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さんスペイン⑱

2020-05-02 14:22:05 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月18日(木)十五夜の夜 スペイン

今日は、満月の夜です。ルーモはこの満月を、昔太陽の国と呼ばれ、世界中を支配するくらい強い国だったスペインの上空で眺めました。青い海と抜けるような空、情熱的で陽気で暖かい人々が暮らすスペイン。

風さんと寂しい田舎の草原の上を飛んでいると、どこからかメロディーとリズムが流れてきます。音の近くに寄っていきますと、掻き鳴らされるギターがふりしぼる東洋的旋律に乗って、女の人が激しい足踏みで踊っています。

ルーモは、汗をかきながら時に苦しそうな表情で懸命に踊る女の人から目が離せなくなりました。この音楽と踊りは、まさに一つの物語でした。ルーモはお話だけでなく、目の前で起こるこうした【踊り】といったストーリーにも入り込むことができました。ルーモはすっかり、自分が女の人になって踊っている感じになったのです。音楽も言葉と同じように、人々の喜びや怒り、哀しみや楽しさから生まれるものです。

そして、踊るルーモの心の中がとても熱くなりました。元気よりももっと強いもの、身体を突き動かすような、炎がすべてを燃やし尽くして灰になるような、洪水が木々をなぎ倒すような、そんな激しい力、破壊の力にも似ています。内側のその激しい力を全身全霊で外側に押し出すように踊ります。さらに、今まで感じたことのない、泣きたいような、怒りたいような、叫びたいような、笑いたいような、たくさんの気持ちが一気にあふれ出てきました。

その力をこの女の人は、おさえて身体のいろんなところに分散し、コントロールするので、ときおり苦しそうな表情になったりするのです。そして、とても美しく素敵な輝きがいろんな色を発しています。

男の人が奏でるギターと女の人は、一心同体となり一つの世界に結ばれて溶け込んでいました。とてもとても情熱的で幸せなひと時でした。

ルーモはギターと踊りの中に引き込まれていくうちに、そこに風さんも入ってきたことを感じました。風さんはいつもの風さんではなく熱く強い熱風でした。ルーモは熱風に巻き取られ、巻き上げられ、回転し、吹き上げられ地上に落ちそうになるところをまた掬い上げられて、波のように揉まれているような気持でした。言葉ではないけれどこんな幸せがあるのだな、と感じながらすべてを忘れていました。

この踊り、フラメンコといいます。昔から、家族や仲間同士でテーブルを囲んで、歌い、奏で、踊り楽しむという喜びが、今はこの国の伝統芸能となり世界中でも楽しまれています。

音がとまり、女の人の激しい息遣いがとまったようです。
気がつくとルーモは、雲の上に休んでいました。
ルーモの頬を優しくひんやりした風さんが撫でています。
ルーモは
「ふーっ。楽しかった。」といい、風さんも
「エキサイティング・・・」と笑いました。
「人間って素敵ね」
ルーモは頬を赤く染め、瞳はうるんでいました。




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