Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さんフランス⑰

2020-05-03 14:20:30 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月17日(水)小望月の夜 フランス

イタリアからフランスへはモンブランという山を越えました。そして、ルーモが行きたかったフランスの片田舎ツゥールーズへと風さんは運びます。遠い昔ルーモがまだ妖精という形を持たない精霊だったころキラキラした光になって、この地方の農村のヒース野原を駆け巡っていたのです。

フランスの昔話には、王さまや王女さま、魔法使いや魔女、精霊や妖精などが登場して洒落ていてにぎやかです。そして、どのお話もまずまずハッピーエンドであることが多いです。

今夜の寝る前のお話に聞きたい物語がありました。ルーモは今夜語るお母さんから魔法でそのお話を引き出すことにしました。そのお話は、『フランス妖精集』の中のお話です。この中は27の民話が「変身譚」「愛」「嫉妬」「試練」「不思議な動物」「妖精」「プシュケ神話」の7つのテーマに分かれています。その中でも好きなのは、テーマ「愛」のお話、「ヒース野原の魔女」です。

農家のおうちの可愛い姉妹が眠る前に、優しいお話好きのお母さんがベッドサイドに来てくれました。さあ、お話が始まります。

~ヒースは病気に効く植物です。ピンク色の小さな花がたくさん集まってそれは美しい花です。ヒースの野原は見事な景色。ここにはヒースを守る魔女が住んでいました。この魔女はヒースの花ようにとても美しかったのですが、自分がだんだんと年を取ることが嫌で嫌でたまりませんでした。若い頃はたおやかで優しく温かい魔女でしたが、最近は、自分の顔にシミやしわが寄るのを見るたびに冷たくいじわるな魔女になっていきました。

そんなところに5人の小人がヒースを取りにきました。小人たちには大好きな優しいおじいさんがいて、そのおじいさんがリウマチで苦しんでいたのです。ヒースはリウマチによく効くので摘んで薬にしようと考えたのです。

ところがヒースを取りに来た小人たちを見て、魔女は自分からヒースを盗んで自分をもっとを醜くさせようとしたと怒りました。そして、小人たちに「主を称える歌」を完成させるまで、ヒース野原で真夜中から夜明けまで踊り歌う呪いをかけました。魔女は小人たちが「主を称える歌」を完成させたら、神様が自分の美しさと若さを返してくれると思ったのです。

おじいさんには孫娘がいました。その少女はヒースの魔女が昔そうだったように美しく愛らしい少女でした。少女は、仲良しだった小人たちがいつまでも戻ってこないので、ヒース野原に探しに来ました。そこで小人たちが困りながら歌い踊り続けているのを見た少女は、小人たちが魔女の呪いにかかったことを知りました。

小人たちを助けるには、「主を称える歌」を完成させなければなりません。少女は、幾夜にも渡って歌の文句をつけ加えてあげることにしました。「主を称える歌」は歌詞がとても長く難しいのです。誰かが手伝わなければ小人たちは永遠に毎晩同じ文句を繰り返し歌い続けることになります。

少女は毎晩、家から聖書を持ちだし、ヒース野原にやってきては主を称える歌の歌詞を教えました。雨の夜も、風の夜も、凍えるように寒い晩も。幾晩続けたことでしょう。とうとう、やっと「主を称える歌」が完成しました。小人たちもがんばりました。長く難しい歌詞をすっかり覚えて美しいメロディにのせて朗々と歌えるようになったのです。その歌声はしっかりと魔女の耳に届いていました。

美しい歌詞の意味は、心の優しさ、美しさ、気高さ、深さ、温かさが神さまに一番に愛されると伝えていました。歌の美しさが、固く醜くなった魔女の心を柔らかくほどいていきました。外見の美しさを通り超えたとき、本物の美しさが現れてくることを知りました。そして、誰もが歳を取っていくことを悟りました。魔女の心は、もとの優しい氣高さを取り戻りました。

小人たちの呪いは解け、ヒース野原は以前にもまして美しく輝き出しました。おじいさんのリウマチはすでに魔女の魔法と小人たち、そして孫娘の愛の力で治っていました。少女はこの出来事で、立派な美しい女性に成長しました。

本当の愛や美しさとは、時として、あるがままを受け入れることなのだと、このお話は教えています。~

お母さんの語りは素晴らしいものでした。ルーモは感動してヒース野原の魔女に会いに行きました。このお話は人間が作ったものですが、作られたものは必ず世界のどこかに本当に存在するのです。ヒースの魔女は今は皺くちゃなおばあさんでしたが、どんなに美しく愛らしく健康な女性でも、若いうちは決して持つことのできない虹色と黄金のオーラを全身から放っていました。そして、魔女は全て世界に愛を与えることのできる立派な魔女になっていました。だから、神様からも存分に愛されていました。

ルーモはこんなに美しい女性を見たことがありませんでした。
魔女はやさしく微笑むとヒースの花々に溶けこんで一層の輝きを放ちました。




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