Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さん中国④

2020-05-16 14:03:10 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月4日(木)既朔の夜 中国

モンゴルの夜もふけて、ルーモと風さんは草原の草の香りに包まれながら、ゆらゆらとこの大陸を下へ下へと流れていきました。

そこには中国という大きな国がありました。どこかの大きな都市にはたくさんの人が住む集合住宅が立ち並び、窓々に暗めの灯りが灯っています。今の中国では子供を産んだお母さんは一か月くらいはお休みしますが、そのあとはすぐに働くのが普通です。多くの人が、たくさんお金を稼ぐためせっせと働きます。だから、赤ちゃんや子供のお世話は、ベビーシッターがすることが多いのです。

ルーモが辿りついたおうちのお母さんは遅くまで仕事をしていました。小さな男の子には、若い娘のシッターさんがおりました。そのシッターさんは、昼間は音楽の学校に通う生徒でした。シッターさんの習う楽器は中国の伝統楽器二胡でした。



二胡という楽器は、お水をくむ柄杓を想像してください。柄は柄杓の面の10倍くらい長く、そこに二本の弦がついています。その弦を弓に挟んで音を出すと、独特の豊かな音色が響きます。勇ましい音から柔らかい音、動物の鳴き声のような音まで奏でることができ、その音色は人の心に郷愁と喜びを生み出します。大らかな中国大陸の雄大さ、大らかさ、和やかさ、美しさを十分に表現する素晴らしい楽器です。

シッターさんは男の子のおうちにも二胡を持ってきて、時々練習がてら二胡を弾き男の子に聞かせていました。男の子は今夜も、寝る前に二胡の演奏をリクエストしました。シッターさんは喜んで二胡を奏でます。

「いつものあの曲がいいな」
あの曲とは、『蘇州夜曲』という曲です。

「この曲は、日本人が作った曲なのよ。それを中国人の李香蘭が歌って大ヒットさせたの。私はあの綺麗な李香蘭が大好きで、この歌も好きになった。これからたくさん勉強してお金を稼いで日本に行って李香蘭みたいな歌手になるの!」
「うん、お姉さんならきっと行けるよ。歌手になったら僕をコンサートに招待してね」

男の子はお姉さんが大好きでした。お母さんのお帰りが遅くてもとても幸せな男の子なのでした。

二胡の響きが、シッターさんの素敵な夢を乗せて空に舞い上がりました。ルーモと風さんも一緒に昇っていき雲の上でゆらゆら漂うようにダンスをしました。

ルーモは日本に来たいと思うお姉さんの夢が叶うように願いました。ルーモが願うと願った人の未来の道を明るく照らします。きっと、お姉さんは日本に行くことができるでしょう。お姉さんが日本に行くとき、男の子はその別れに泣くかもしれません。でもその頃には男の子も今よりもっと逞しい少年になっていることでしょう。

2人の心は『蘇州夜曲』歌で永遠に結ばれています。

※「蘇州夜曲」(そしゅうやきょく)は、西條八十作詞、服部良一作曲の歌謡曲である。 解説 李香蘭(山口淑子)の歌唱を前提に作られ、李香蘭主演の映画「支那の夜」(1940年(昭和15年)6月公開)の劇中歌として発表された。