Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さんエジプト⑲

2020-05-01 10:38:38 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月19日(金)十六夜 エジプト

風さんがどうしても行きたかった場所があります。それはエジプトのピラミッドでした。なぜかというとそこに自分のお友達がいたからです。ほとんどの風の精霊は世界中を吹き渡ることができますが、風さんのお友達は特別にピラミッドを守るお役目を持っていて、この辺りしか吹くことが出来ません。

荒々しい風や冷たい風やいじわるな風が吹いてきて、このピラミッドを傷つけたり壊したりしないように守らなければなりません。それでもピラミッドはずいぶん壊れてきています。とても大変なお役目です。なので、風さんはそのお友達のところに来ると世界中のお話をして喜ばせます。それをルーモにも手伝ってほしかったので風さんがお願いすると、ルーモは喜んでこれまでのお話をしてあげました。

昨夜のスペインの踊りや、この旅で耳にした音楽、ピアノや二胡の音をルーモの記憶から聞かせてあげました。すると、風さんのお友達は大喜びしました。

「なんて、温かい。この地上にまだそんな温かさがあるのか。きみのお話で心が温かくなったよ。ありがとう」と言ってお返しに、自分のお話をし始めました。

「私はピラミッドができてからずっとここにいていろんなことを見てきた。ピラミッドがどうやって作られたか、なんのために作られたのかも全部知っている。

作られたばかりのピラミッドやそこに住む人々はそれそれは美しかった。
あの頃のここは本当に光輝くような場所だった。けれど、ピラミッドとは時と共に変わっていく定め。朽ち果て行く構造。

形だけは残っているように見えるが、一番大切なものは当の昔に失われたので、本当は何も残っていない。ここは虚ろなのだ。

この遺産を人が見るとき、少しでもその人の目に本物が映る可能性があることを信じて。私は過去の遺物を守り続ける。そうして、人がその目に本物を取り戻す日が来る日を願っている。」

お友達のお話は、とても重く厳しい感じがしました。

そしてお友達は、ルーモをピラミッドのてっぺんに持ち上げてくれました。ピラミッドのてっぺんからはとても美しいけれど細くかぼそい光の線が宙へと伸びているのがわかりました。お友達は言いました。

「いつかきみのように世界の温かさや優しさを見てみたい」

風さんが言いいました。
「僕が世界のいろんなことを見聞きして君に伝えるさ。いつか、小さな光が大きな光になった時、一目散にやってきて君に知らせる。そしたら、やっと君はお役目を終えて僕と世界中を旅をするんだ」

お友達と風さんは、ピラミッドの、か細い、けれど、美しい光の線を辿りながら行けるところまで宙へ宙へと吹き上がっていきました。

ピラミッドって何なのでしょう?
私たちに何を物語って何千年もの間そこにあり続けるのでしょう?

ルーモにはあの巨大な建物がもうそのお役目を終わりにしたいと言っているように感じました。でも、それは多くの人が何かに気づかなくてはならなのかもしれません。風さんのお友達もピラミッドも可愛そうな気がしました。