3日間だけ映画館で上映『 王様と私 』

まぁ差別や偏見を含むミュージカルは山ほどあるけど。
3日間だけ映画館で上映『 王様と私 』
まぁ差別や偏見を含むミュージカルは山ほどあるけど。
音楽・作詞・劇作・脚本 ・ デイブ・マロイ
演出 ・・・小林香
原案・原作 ・・・レフ・トルストイ
ピエール ・・・ 井上芳雄
ナシャータ・・・ 生田絵梨花
エレン ・・・ 霧矢大夢
アナトール・・・ 小西遼生
ソーニャ ・・・ 松原凜子
ドロホフ ・・・ 水田航生
マリア ・・・ はいだしょうこ
パラガ ・・・ メイリー・ムー
マーリャ D ・・ 原田薫
アンドレイ/ 老公爵・・武田真治
《 ストーリー 》
19世紀初頭、モスクワ。貴族の私生児として生まれたピエールは、莫大な財産を相続したが愛のない結婚をし、その人生にどこか虚しさを抱えながら、酒と思索に耽る毎日を送っていた。ピエールと親交のある、若く美しい伯爵令嬢ナターシャは、婚約者のアンドレイが戦争に従軍し寂しさを募らせていた。そんなある日、美しく魅力的な男アナトールと出会ったナターシャ。その誘惑に抗えず遂には駆落ちを計画する。だがそれは失敗に終わり、アンドレイとの婚約も解消されてしまう
一方、ピエールは妻エレンの不倫を知り、不倫相手のドロホフに決闘を申し込む。かろうじて勝利するものの、意味の無い命を賭けた闘いに、ますます鬱屈した気持ちを募らせていく。
虚しく生きる男と全てを失った少女、やがて2人の運命はやがて重なり… (公式サイトより)
《 感想 》
客席の扉を開けた瞬間…
なんて斬新なステージ!
見たこともない空間、舞台の中に設置されたコメットシートが目を引く。
話題になっていた客席融合型ステージ
ロシアの酒場?ナイトクラブ?
高い場所に店のドアがあり、緩やかにカーブした階段が印象的で、どこか退廃的な雰囲気。
役者さん達の客席降りも何度も、隅々まで観客を盛り上げていて、後方席でも充分に楽しめた。
ステージというより花道のような舞台
複雑な動線を歌い、踊り、演技しながらって、さすが役者さんは凄い😳
音楽はテンポの速いロシア民謡風や、エレクトリックポップ風だったり、ここぞという見せ場で井上さんが壮大に歌い上げる。
肝心な物語の感想というと…
挫折しても、再び立ち上がって生きていくことへのメッセージ…でいいのかな?!
登場人物も多く絡み合っているけど、ストーリーはわりと単純な恋愛もの。
視覚的に目を奪われて、物語はサラッと楽しんでしまった。
タイトルのグレードコメットは1811年に接近した大彗星のことで、シャンデリアのようにキラキラしたものが下がってくる印象的なラストだったけれど、舞台の中で語られることはないので
その辺も、原作「戦争と平和」を読めば、繋がるエピソードがあるのかもしれない。
生田さん、とても良かった!天真爛漫でピュアなお嬢様という役がぴったり✨
モーツァルトの遊び人の妻役の時は、少し無理のあるように見えたのに。
歌も演技も上手い女優さんはたくさんいるけれど、本人の魅力とぴったり合う役はこんなに素敵なのね!
武田真治さんは二役の違いが面白く、いつも難しい役を上手く演じる俳優さんだなぁと。
小西さんのプレイボーイ役がハマりすぎー😆💕
歌は全体的に難解なメロディが多くウットリするには難しいというか。
いい場面なのにキビしい歌唱の部分もあって、ちょっと残念。
アンサンブルではAdamsの山田さん、木暮さんも。最初から最後まで、かなり出番が多いので、オペラグラスでずっと追いかけてた。
歌やダンス、いろんな仕掛けがあり、アンサンブルの方々も楽しく、目があちこち忙しくて👀
何度か観て、曲やストーリーをじっくり楽しみたいと思ったので、再演してほしい。
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原作/音楽/脚本 ステファン・ドルギノフ
演出 栗山民也
ピアニスト 朴勝哲
東京芸術劇場 シアターウエスト
盛大にネタバレしています。
◆こちらは腐目線ありなのでご注意ください。
私 松下洸平
彼 柿澤勇人
毎回この舞台を観るときに思うのが
彼は私に対して「愛情」あったのかどうか?ということ。
愛にもいろいろな形があって
「彼」がどんなに酷く冷たくしても「私」だけは自分を裏切らない、見捨てない、そんな自信や甘えも愛情なのかなと思っていたけれど。
プログラムのインタビューを読むと柿澤さんは
「前回は何らかの形の愛があると言ったけど、今回は全くないかも!」とのことで、それはそれで切ない~
でもこのペアには愛情や絆を感じてしまう
昔は何をするにも一緒だった…そういう雰囲気を所々に感じてしまうから仕方ない。
どんな風に観るかは観客それぞれ、シンプルな舞台だけにあれこれ想像してしまうけれど
松柿ペアはどうしても「愛好者」目線になってしまう。
「演技」をしない、栗山さんにも自然にリアルにと何度も言われていたので小さな劇場だからこそできるこを…と書いてあったけれど
吐き捨てるような「あいつ…絞め殺してやる」
耳元で殺人計画を囁く「2人でどでかいことをやってみたくないか」
確かに2人を覗き見しているような、客席も息を詰める緊張感。
あの一本のマッチがすべてに火をつけたんです
その台詞通り「私」の人生で最も美しい瞬間と思えるほど二人の表情や歌声がまぶしくて
「やさしい炎」ラブシーンにしか見えない。
柿澤さんの殺人前のロープやハンマーを確認するシーン、ドライブしよう、判決の前日の夜の場面は、さすが何度も演じているだけあって上手い、素晴らしくコワイ。
犯罪への衝動、高揚感が伝わってきて、やめてー!って心の中で叫んでしまう。
成福ペアとの違いが、とても印象的だったのは
・「99年」を歌いながら二人の立場が逆転するように、彼がジリジリと後ろへ下っていくシーンがすごく良くて
・怯えて震える私の手を握って立たせるところも好きだった。
・仮釈放が認められ「自由…」の場面と手錠が外されら瞬間
・あいつ殺せば…君は「容疑者」だけど、成河さんが一度「罪人」と歌っていた気もしてモヤモヤ
拘置所に入れられ司法取引の取り下げを頼む、レイ助けてくれ…のキスシーン。
彼の手がレイの下の方へ向かったのは、たまたまなのか深読みしすぎなのか。
松下私は、彼とひたすら一緒にいたいと願い
成河私は、彼を自分のものにしたいと求める、むき出しの情熱が凄かった。
福士彼は、俺達は特別な存在と言いながらも、私を利用しているようにしか見えなかったけど
柿澤彼は、家庭で孤立して心の奥底では無条件に受け入れてくれる「私」を必要としている、そんな風に見えた。
スリルミー、いつか再演があるとしても同じキャストで観られるとは限らない。
この役者さんの演じる役は最後かもしれない…
そう思うと一瞬も見逃したくないと思う。
あまりに役と離れた年齢の役者さんだと、うーむと思ってしまう事もあるので
またこの4人のキャストも良いけれど、新しいキャストだったらどんな俳優さんが良いか想像するのも楽しい。
原作/音楽/脚本 ステファン・ドルギノフ
演出 栗山民也
ピアニスト 朴勝哲
東京芸術劇場 シアターウエスト
盛大にネタバレしています。
ご注意ください。
私 成河
彼 福士誠治
成河さんが「私」を演じると知ってから どんなにワクワクしていたことか!
心をわし掴みにされるのは分かっていた。
初めて観たときの2人は、すごい「超人」感。
頭脳明晰で容姿端麗、自分達を特別な存在だと妄信している…実際の事件の2人について栗山さんからかなり聞かされていたそうで。
成福ペアは、THE 芝居という感じ。
初めて観た時は、まるで2人が対決しているような激しさにグイグイ引き込まれた
冒頭、どけっ!では私が思い切りドンと突き倒され、血のサイン、襟首を掴み、ロープばしん!も
弟への憎しみの台詞など、どれも激しめアクション大きめ。
自分の偉大さを証明しようと、次々と犯罪に手を染めていく彼。
彼を止めたい気持ちと、共犯者という唯一の存在でありたいという、歪んでいるのか純粋なのか
抑えることのできない彼への愛情。
未熟な2人が危険な森へ突き進んでしまうのが、恐ろしくも胸が熱くなる。
福士彼は、ただ私を支配するだけでなく
ちょっと大人っぽくなったか?
フッとからかうような友達の顔を見せつつ
クールな歌声と大人の色気、煙草をふかす姿も小西彼と重なる危険な美しさ。
「大学生の私」
「34年間服役している私」
違いをこんなにもはっきり感じたのは成河さんが初めて。
台詞だけなら難しくないだろうけど、歌でも繊細に表現しているのが凄い。
少し背中を丸め、時に彼への思いと後悔を滲ませながら、弱々しくも心に刺さる「私」の歌声。
「やさしい炎」「戻れない道」ただ一緒にいたいと慕う歌声が切ない。
あれから5分後の私、ネクタイを締めながら、なに?銀行強盗?なんてウキウキ感というか高揚感の余韻というか、そこから殺人をもちかけられる天国と地獄。
このペアは殺人を犯してから後がすごく面白いというかスリリングで圧倒された。
「超人たち」「僕の眼鏡/おとなしくしろ」
そんなことで騒ぐな、おとなしくしろ、落ち着けよ、レイ、緊張感にドキドキ。
奇妙なとりが2羽…からは成河さんの独壇場。
「99年」何もかもお前がおまえが仕組んだ…
2人の関係が逆転する最も戦慄する場面。
欲を言えばプライドの高い彼が、もっと絶望して私に恐怖するのが見たかったなぁ。
仮釈放が認められた時の「じ…ゆ…う…」
手錠が外されて、光が差し込み手のひらを開いていくシーンに釘付けになった。
演劇はやはり千秋楽へ向かうほど、台詞も動きも相手との呼吸も作り上げていくものなのか
1月ラストは染み入るような
レイ…の呼びかけ、待ってたよ…の表情
なんだか泣きたくなる。
「舞台は生き物」それを実感できた、2人のスリルに満ちた100分間。
その余韻からなかなか抜け出せず、帰宅後もずっとCDを聴いていた。
待ってたよ……
ほんっっとに待ってた〜ヽ(*´▽`)ノヽ(*´▽`)ノ
およそ4年ぶりの再演
開演直前の客席が息を詰めるシーンとした緊張感
照明が落ちてあのピアノのメロディが流れる…
「沼」にハマる幸せ。
演劇ってなんて面白いんだろうと気づかされる。
感情を抑えつけながら過ごす日常
舞台を観ているときは、自分の心を解放して様々な感情に振り回される快感。
今回は銀河劇場の半分以下のキャパでさらに濃密な芝居を感じることができた。
囁くようなセリフとか、小さいハコならではの演技もスリルを感じることができた。
息苦しくなるほどの心理劇、ごまかしのきかない緊張感が最高。
ピアノは私が観劇したときはすべて朴さん。
オペラグラスで見ると、演奏しながらちゃんと私と彼の動きを確認している。
特に私が大学生と服役囚に代わる瞬間などは
「私」のほうを見ながら呼吸を合わせて弾き始めていて
私・彼・ピアノ、2人でなく3人で作り上げる世界なんだなと改めて。
何度観ても飽きないのはなぜだろう?
シンプルさ…なのかな
ほぼ何もないの舞台の上、役者は男2人その名前さえも無い「私と彼」
すべて削ぎ落された舞台はこんなにも観客の想像力をかきたてられるのか。
2つのペアそれぞれ違った魅力、面白さをみせてくれたので、感想もそれぞれ書こうと思う。