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グルメや舞台で現実逃避しています

国立劇場 3月歌舞伎公演

2019-04-15 08:00:00 | 観劇

 

2月の義経に続き今月も初役の菊之助さん

グイグイ引き込まれていく台詞劇「御浜御殿」

様式美ここに極まれりという舞踊劇「関扉」

どちらも役者さんの熱量が伝わってきて大満足😊

元禄忠臣蔵 〜 御浜御殿
徳川綱豊卿        ・・・ 中 村  扇  雀
富森助右衛門    ・・・ 中 村 歌 昇
中臈お喜世        ・・・ 中 村 虎 之 介
新井勘解由        ・・・ 中 村 又 五 郎

 

「積恋雪関扉」

守関兵衛大伴黒主   ・・・ 尾 上 菊 之 助
良峯少将宗貞          ・・・ 中 村 萬 太 郎
小野小町姫/ 傾城墨染実ハ小町桜の精   中村 梅枝

 

 歌舞伎は四季の美しさを舞台に取り入れることは多いが

綱豊卿と助右衛門の真剣勝負の台詞の応酬に

夢中になっているうち舞台上は日が暮れていく…

時間の移ろいまで感じることができた。

歌昇さんがたくさん見られて嬉しい〜

 

それにしても…

浅野家再興は決まったようものなのに

お家再興を認められると、仇討ちができない。

その感覚って…

こっそり吉良を暗殺しようとして綱豊卿に叱られ

命を奪えば良いってものじゃない

正々堂々と思慮深く復讐を果たすべきだと諭される。

その感覚もまた理解に苦しむけれど

当時の武士の理想からすると

お家再興しても、吉良に復讐できず

暗殺したところで、卑怯さやましさが残る。

それは耐えがたいという思いなんだろう。

 そういう感覚の違いも興味深い。

 

 「関扉」は桜が満開なのに雪が積もっているという

歌舞伎らしい耽美な世界。

1784の初演から、当時の型が忠実に守られて

現在まで受け継がれているというのが珍しいそうで

 

菊之助さん、梅枝さん、どちらも2役だけれど

やはり後半の大伴黒主と墨染の対決が

それはもう壮絶な美しさと迫力!

菊之助さんのあんなに低く力強い声は初めて聴いた。

貫禄のあるスケールの大きな芝居に感動

優美な女形を演じる人が

あんなに完璧な悪役になれるなんて凄い

 

梅枝さんも妖しい倒錯美が全開というか。

頭の先から爪先までも神経の行き届いた舞踊で

人間離れした精霊の美しさを見事に表現していた。

黒主との激しい争いも緊張感が途切れることなく

肉体的な負担は全くも感じさせない。

 

今後またこの2人で観たい!

と思わせる舞台だったけど

勘九郎さん、菊之助さんの組み合わせもいいな

 


平成最後の「奉納 靖国神社夜桜能」

2019-04-08 08:00:00 | 観劇

 

開演前 夕暮れ時の能舞台。

ここ最近の寒の戻りが幸いしてか

素晴らしい満開の景色🌸

 

 

どの日程にも「桜」に縁のある作品が含まれている。

狂言の後は25分間の休憩。終演は21:15頃。

 

とても幻想的な雰囲気だったのに

もう少しキレイに撮れたらなぁ。

 

4月2日(火 )火入れ式
舞囃子 「桜 川」   小倉  敏克
狂 言 「棒 縛」   野村 萬斎・ 野村 裕基
能  「祇 王」    田崎  隆三

 

 

風が吹くとヒラヒラ舞う桜の花びら🌸

夜空に響く鼓や笛の凛とした音色。

まるで時を超えたような、幽玄な美しさ

劇場では体験できない素晴らしい経験でした。

萬斎さんと息子・裕基くんの共演も見られたし。

なんて結局ミーハー(笑) 

 

舞囃子「桜川」は桜子という名前の自分の娘を

探す母親が桜川にたどりつき再会する。

舞い落ちた花びらが川面をうめつくし…

という情景が目に浮かぶ、詩も美しい作品。

 

棒しばりは歌舞伎のもとになっている演目なので

とてもわかりやすく楽しかった!

狂言ってなぜメイクもなく髪型も普段のままなのかな。

 

眠気も吹っ飛ぶ寒さだったこともあるけれど

能「祇王」はまったく退屈することなく

今まで観た能の中で一番作品を深く味わえたかもしれない

平清盛に愛される祇王と仏御前。

2人の優美さの中に秘められる心情が伝わってきた。

白拍子の美しさ儚さ、愛情もやがては移ろい

権力者も滅びていく、まさに諸行無常。

 

能は動きも少なく、どう楽しめばよいのかと

見るたびに思っていたけれど。

そう感じるのは、現代のエンタメの刺激の強さに

慣れてしまっているせいなのかもしれない。

ゆっくりとした少ない動きや

凛とした楽器の音色や

装飾もない舞台を観ながら

昔の人たちは様々なことを感じ取っていたのだろうな

そう思うと昔の人達の感性というものは鋭い。 

でも考えてみれば今だって役者や音楽の

極端に少ないシンプルな芝居の時には

観る方も想像力をかきたてられるものだ。

情報が多すぎると感性の広がりを妨げてしまうのかな。

 

そして覚悟はしていたものの

極寒にパイプ椅子はツラかった💦

ロングのダウンコート、膝掛け、マフラー、手袋、カイロ

ありったけの防寒対策をしても寒かった。

終演後には千鳥ヶ淵のライトアップでも…と思っていたが

それどころではなく冷え切っていたので

脇目もふらず地下鉄へ。

その時は一度でいいわと思ったけど

数日経てば、また来年も観たいなあと思っている。

 

 


METビューイング「アドリアーナ・ルクヴルール」

2019-03-16 08:00:00 | 観劇

METビューイング4回目にして初めて気づいた。

こんなプログラムがあったことに!

も〜早く言ってくれたらいいのに😂

今シーズンの作品・キャスト・見どころ

新音楽監督のインタビューと盛りだくさん。

 

               
指揮 … ジャナンドレア・ノセダ
演出 … デイヴィッド・マクヴィガー
アドリアーナ … アンナ・ネトレプコ
マウリツィオ … ピョートル・ベチャワ  
ブイヨン公妃 … アニータ・ラチヴェリシュヴィリ

 

《 あらすじ 》
"18世紀前半のパリ。有名な劇場コメディ・フランセーズの大人気女優アドリアーナ・ルクヴルールは、ザクセン伯爵の旗手マウリツィオと愛し合っている。
マウリツィオは実は伯爵本人で、職務で大貴族のブイヨン公妃と会わなければならなかったが、公妃はマウリツィオに恋心を抱いていた。
ある事件をきっかけに恋敵だと知ったアドリアーナとブイヨン公妃は火花を散らし、夜会の席で朗読を所望されたアドリアーナは、暗に公妃の不義をなじる内容の詩を読み上げる。
激怒した公妃は、毒を仕込んだスミレの花束をアドリアーナに送りつけるのだった。(公式サイトより)
 

 

 

《 感想 》

 

濃厚なドラマティック(ヴェリズモ)オペラで

最後の方はネットリすぎて胸焼けしそうですが

こういう分かりやすく感情移入できるものは大好き。

全く知らない作品だったけど

曲は甘美な旋律が多くとても好きな感じ💕

 

オーラというものは

今まで積み重ねてきたものが

熟成されて現れるのかと思うような

ネトレプコの素晴らしさ

声も演技も豊かな表現力。

 

女優が女優の役を演じるのは

いつもに増して役にどっぷり浸っているように見えた。

18世紀のパリの劇場が舞台。

当時の舞台裏の様子や劇中劇の演出が面白く

衣装も華やかで、観ていて贅沢な気分💎✨

そして身分の差、女優やバレリーナの

お金持ちの愛人のような扱いなど。

いろいろその時代の背景も描かれている。

 

ネトレプコとラチヴェリシュヴィリは

アイーダでも三角関係でライバル同士

恋敵が強烈であるほど盛り上がる🔥

アニータさんイジワルな役が上手い。

 

それにしてもヒロインは死に

男ばかりが生き残ってずるい。

椿姫、カルメン、蝶々夫人…

今回のマウリツィオ、二股だったのか?

 

全く知らなかったオペラだったけれど

日本で上演されたら観たいなぁ☺️

歌も全然知らないと思っていたら

昨年のゲルギエフ&ウィーンフィル

シェーンブルン夏の夜コンサートで

ネトレプコが「このとおり、私はただ普通に…」を

歌っていた、録画しておいて良かった。


二月大歌舞伎・夜の部

2019-03-09 08:00:00 | 観劇

 

歌舞伎座に入った瞬間

あれ?いつもと違う匂いがすると思ったら

初世 尾上辰之助三十三回忌の追善公演だった。

大きな写真の前に香が焚かれ

開演前に立ち止まって手を合わせた。

 

                      

 

一、熊谷陣屋(くまがいじんや)
源氏方の武将熊谷直実が自らの陣屋に戻ってくると、妻の相模が息子小次郎の初陣を案じ待っています。小次郎の様子と、平家の公達敦盛を討ったことを明かす直実。そこへ敦盛の母藤の方が現れ、直実に斬りかかりますが、これをなだめた直実は敦盛の立派な最期を語って聞かせます。やがて源義経が現れ、敦盛の首実検が行われますが…。
 悲痛な心を押し殺す武将熊谷直実の風格と、物語の結末にひらめく世の無常が胸を打つ、重厚なひと幕をお楽しみください。
 
二、當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま) 初春を迎えた工藤祐経の館に、親の仇である祐経を討とうと曽我十郎と五郎の兄弟が春駒売りに姿を変えて入り込みます。賑やかに春駒の踊りを披露する兄弟は祐経との対面を果たしますが、祐経は兄弟の正体に気づいており…。
 「春駒」とは馬の形をかたどったつくり物を手にさまざまに囃し立てるめでたい門付芸。華やかな長唄の舞踊をご覧いただきます。
 
三、名月八幡祭(めいはちまんまつり) 越後の実直な行商人縮屋新助は、深川芸者の美代吉に惚れ込んでいます。しかし美代吉は旦那もちで、さらには船頭三次という情夫までいる奔放な女。美代吉は、深川大祭に必要な100両が用意できずに困ると、金の工面を新助にすがります。新助は故郷の家や田畑を売り払って金を工面しますが、旦那からの手切れ金が届いて金の心配がなくなった美代吉は態度を一変、新助の相手をしなくなります。裏切られ狂乱した新助は…。
 河竹黙阿弥の作品を土台に、人間の明暗を描く愛憎物語として掘り下げた新歌舞伎の名作。初世尾上辰之助追善のひと幕をお楽しみください。(公式サイトより)

 

 《 感想 》

菊之助さんが演じるのは初役の義経。

涼やかで気品もありそして情に厚く

熊谷との別れ際は言葉はなくとも心情が溢れんばかり。

素晴らしい若武者ぶり☺️

今をときめく絶頂期の義経だけに

この先…悲劇の運命を思うと切なくなる。

 

あれ?熊谷陣屋を観ていて

今までこんなに義経に注目することがあったかしら?

吉右衛門さん演じる熊谷直実は

もちろん風格もあり素晴らしい。

最後 花道での「十六年はひと昔 夢だ」の台詞は

悲哀に満ちていて心に染み入るような表情だった。

 

浅草歌舞伎に続いてまた曽我対面。

梅丸くん、米吉くんが美しい

師匠・梅玉さんと梅丸くんの共演が嬉しい。

左近くんの曽我五郎、踊りも立派、声変わりか?

 

それにしても今月の夜の部は

なんと見応えのあることか〜😆

名月八幡祭の仁左衛門・玉三郎の共演は32年ぶりだそうで

金にだらしないが売れっ子芸者が惚れる

憎めない色男 三次

自由奔放さから騙すつもりはなくても

新助を絶望させる芸者 美代吉

江戸っ子2人の粋なやりとりが最高で☺️💕

久しぶりに舞台写真を買ってしまった。

 

誠実な商人・新助役の松緑さんもよかった。

田舎の純朴な人柄の新助が

深川の売れっ子芸者 美代吉に冷たくあしらわれ

新助の絶望…哀れさ…悔しさが伝わってくる。

 「江戸なんて!」← 「江戸っ子」と言ってたかも

ついには半狂乱となり

祭りの賑わいも最高潮のなか凄惨なラスト。

 

江戸といえば粋で活気もあり人情味溢れ…

この作品もはじめはそう見えたけど。

実は、誠実な人柄を田舎者とバカにしたり

見栄っ張りで借金を重ね

人の好意を平気で踏みにじったりと

江戸という町の嫌な部分、冷淡さ

そういう風にも取れる描き方が印象深く心に残った。

 

歌舞伎の好きなところの一つは

何百年たち時代が変わっても

人の感情は変わらず共感できるところ。

とても不思議で面白いと思う。

 

以前「世話物は経験」と菊五郎さんが言っていた。

初めて髪結新三を演じる菊之助さんに指導する時

ほんの一言の台詞回し、ちょっとした仕草で

江戸の粋、悪人の底意地の悪さが際立って驚いた。

まさに仁左衛門さん玉三郎さんは

役柄だけでなく仕草や話し方から

観客を「江戸の町」へ引き込む

息の合った芝居が観られて幸せだった。

 

・本水を使うためとビニールシートが用意されていたので

ザーザー雨を降らせるのかと思ったら

霧状のミストと稲光りでの演出、おどろおどろしさが出ていた

・新助が魚惣の座敷から、舟で通り過ぎる美代吉を見送る場面。

舟の演出が江戸情緒いっぱいで 、一枚の浮世絵のように心に焼きついた。

 

 


オペラ「タンホイザー」新国立劇場

2019-03-07 08:00:00 | 観劇
       
       

 

《 物語 》

 

【第1幕】中世のドイツ。騎士タンホイザーは、禁断の地ヴェーヌスベルクで愛欲の女神ヴェーヌスの虜となっていた。やがてこの歓楽の日々にも飽き、引き止めようとする女神の誘惑を振り切って、人間世界に戻る。そこで狩りに向かうかつての仲間に出会い、ヴァルトブルク城へ共に帰って行く。

 

【第2幕】ヴァルトブルク城、歌の殿堂の大広間でタンホイザーはエリーザベトとの再会を喜び、歌合戦に参加することとなる。領主ヘルマンからの歌合戦の課題は「愛の本質」を明らかにすること。かつての同僚ヴォルフラムは愛を清らかな 「奇跡の泉」にたとえ、他の騎士たちも精神的な愛を讃える歌を歌う。タンホイザーはこれに反論し、愛の本質は官能の愛であると〈ヴェーヌス賛歌〉を歌い上げたため、ヴェーヌスベルクにいたことが人々に露見してしまう。騎士たちはタンホイザーを殺そうとするが、エリーザベトのとりなしによって、ローマ法王のもとへ贖罪の巡礼に出るよう領主ヘルマンはタンホイザーに命じるのだった。

 

【第3幕】エリーザベトはタンホイザーの救済を祈っているが、ローマからの巡礼の中に彼の姿はない。一人現れたタンホイザーは、ローマで彼だけ許しを与えられなかった様子を語る。自暴自棄になった彼はヴェーヌスベルクへの誘惑に今一度身を任せようとするが、エリーザベトの死によってタンホイザーは救済される。「エリーザベトよ、わがために祈れ」と叫んで息絶えるタンホイザーの上に神の恩寵をたたえる合唱が響く。

( 公式サイトより)

 

 

《 感想 》

演奏が始まった瞬間…

オペラパレスの極上の響き

ウットリしているうちに幕が開いた。

 

舞台上に透明な柱が高く伸びていき

そこへ様々なライティングで洞窟や森や宮殿になったりする演出。

ヴェーヌス様は色気と迫力で圧倒。

エリーザベトはひたすら清らかで美しく。

恋人に再会した時の初々しい喜びのアリア、ラストは切なく健気で…若く美しい人が演じていると自然に感情移入してしまう。

影ながらエリザベトを愛する

誠実なヴォルフラムの方が魅力的なのに!

一途なヒロインが愛するのはたいてい不実な男だ。

「夕星の歌」がとてもとても切なく

「天へ昇っていく彼女の魂がそばを通ったときには、僕の想いを伝えておくれ…」

感極まる切ないけれど素敵なシーン。

 

巡礼の合唱は天上のから降り注ぐような、厳かな響きが素晴らしく、もっと聴いていたいと思った。

 

バレエシーンは男女のコンテンポラリーな踊りで衣装も斬新。

今回の演出では男女の性愛を表現するバレエが

重要な一場面となっていて見応えがあった。

 

様々な「対比」が絡み合う物語。

タンホイザーの肉体の性愛

エリーザベトの献身の愛

ヴォルフラムの精神的な愛

神への信仰の愛

救済を求め、赦され故郷へ戻る人

赦されないタンホイザーの絶望。

 

とても人間臭く理解しやすいし、中世の宗教観も興味が尽きない。

 

全体的に無機質な空間なので「対比」といえば、ヴェーヌスブルグの洞窟とヴァルトブルグの宮殿も、あまり別世界感に浸ることができなかった。

 

装飾をそぎ落とした演出も、歌唱や演奏が良ければもちろん感動するけれど。

やはり舞台美術も衣装も華やかで古典的な演出が好きだなぁ。

 

「タンホイザーは浦島太郎」というプログラムの中の表現に

なるほど!目からウロコ

異境の地(竜宮城)で享楽の日々を過ごし

故郷に帰ってきたら、隔世の感あり皆から冷たく追い出され…そして浦島太郎は玉手箱を開けて絶望という感じか。