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竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける』を読む

2014年02月21日 | 折々の読書
 地形が歴史に与える影響は大きいと思う。いや、地形に規定されてしまうと考える方がより」自然だ。歴史学者達が論争を重ね、あるいは、結論を忌避してきた問題に理系の著者が臨んだ。回答は明快。地形やエネルギー、情報の交流から日本史の謎の答えを引き出す様は爽快ですらある。

 地形が語ることは多いだろう。その場に立って初めて了解できることがあるだろう。当時の条件を想像して、目の前の地形そのものから当時の状況を再現して行くことは面白い。必然性が見えてくる。文献からでは分からないことが解けて行く。そこに歴史の真の姿が浮かんでくるだろう。鎌倉幕府や徳川幕府関係、農耕民族と狩猟民族など、人文系の既存の歴史観が見落としているポイントから歴史を突いていて非常に面白く読め、また歴史にはまりそうな気がする。

 このような条件は、古楽器の研究と似ていると思う。楽器は地形。音が当時の思想。残された当時の楽器から、失われてしまった当時の音を探るという点で共通しているのではないだろうか。

 江戸時代をはじめ歴史的地形、風景はもう見ることはできない。本当に残念だが、逆に、江戸時代の人間が見ることができない風景を自分は見ているのだ、と思うことにしている。
 それにしても、我々は大きな自然を失ったものだと思う。巨椋池、椿海、関東地方の大湿地帯などなど。埋め立てや干拓に対する狂気にも似た人間の情熱も浮かび上がってくるのは皮肉だろうか。

 ■竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける』(PHP文庫)2013年10月刊.★★★★★