報道関係をにぎわわせているシャルレ社の創業者らによるMBOですが、まとめと題していろいろ書いていきます。
シャルレのMBOについては、シャルレ社は今年9月22日までに創業者らによるMBOを決定し、モルガン・スタンレーとハヤテインベストメントとMBO契約を結び、1株800円
で公開買い付けを開始しましたが、この価格に対し利益相反であるとの内部通報が出されました。そこでシャルレは第三者委員会を設置することとなったのです
が、その第三者委員会によって検討されたのはDCF法によって公開買い付け価格を算定する際参考となる利益計画の策定手続きでした。そこで弁護士を中心と
する第三者委員会は、「株式に対する公開買付けに関する賛同意見表明に至るまでの手続経過等の調査に関する第三者委員会調査結果の報告について」の結論中で
とされました。(下線は筆者)そして、最終的には創業者である林さんが解任されP&G出身でマーケティングに自信ありの岡本さんが社長になり、モルガン・スタンレーはMBOを中止しました。
今回、内部通報を発端にMBOが中止されたというのがとても気になっ
た。というのは、MBO時における取締役の利益相反性を避けるための方策として今まで主に日本に導入され議論されてきたものは、株式買取請求権の制度や社
外取締役の設置といった方策であったが、今回、内部通報によって第三者委員会の設置がなされ、MBO自体が頓挫してしまったのは面白い。しかも、公開買い
付け(二段階買収の一段階目)が始まったあとでなされています。コーポレート・ガバナンス的な解決が難しいMBOの事例では今回の事例は貴重な一例となる
のではないかと思います。
モルガン・スタンレーと創業家らはシャルレが買収案に賛成しない場合、MBOの前提となるTOBに応募しない契約を結んでいたらしく、MBOを中止しましたが、市場の反応はすさまじかったの
で、投資家の方々はかなり苦労なさったのではないでしょうか。TOB成立の行方は不明ですが、TOBが失敗したとなると投資家や社内のフラストレーション
もたまるのみですね。今回の事例はプレスリリースによると非公開化による経営再建が目的だと考えられますが、MBOの目的自体が疑われますね。創業者とのMBOでなければやめるとしたモルガン・スタンレーの態度を見ると、社内の内部通報通り「今回のMBOは創業者の相続税対策」だったのかもしれないと考えてしまいますしね。
MBO取引自体がかなり複雑な取引ですのでその論点についてただ規制をかければいいってもんじゃあないですし…。創業家によるMBOは利益相反的要素が強く、経済産業省(神田先生)による指針が出されていますが、どのようにそのそれを防ぐのかは難しい論点であります。
それでは、また。
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