超多忙の3月半ばですが、こうなったら問答無用の強行出陣です。
予定も何もかも無視して行って来ました
3月13日(木) サントリーホール
ストラヴィンスキー:歌劇「妖精の口づけ」より ディヴェルティメント
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー:交響曲第6番 「悲愴」
演 奏:BBCフィルハーモニック
指 揮:ジャナンドレア・ノセダ
ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン
まずはBBCフィルハーモニックというオーケストラについてですが、おそらく初めて聞いたなんていう方もけっこういると思います。
BBCと付いてるからには、もちろんイギリスの英国放送協会(BBC)傘下のオーケストラです。
BBC傘下には5大オーケストラがありますが、筆頭格は当然BBC交響楽団でBBCフィルハーモニックはその次のランクという扱いでしょうか・・・
世界中どこでも似たようなもんでしょうが、やはり首都に本拠地を置くオケのほうが若干格上の扱いになるようです。
BBCフィルハーモニックの本拠地は首都ロンドンではなくマンチェスターというところなんです。
マンチェスターといえばあのデビット・ベッカムが在籍していたマンチェスター・ユナイテッドFCというサッカークラブが有名ですが、・・・というかそれぐらいしか知りませんよね
ちなみに音楽的に云うとマンチェスターにはハレ管弦楽団という超有名なオーケストラがあります。
ジョン・バルビローリというこれまた超有名な指揮者が常任指揮者をしていたころが最盛期だったかも知れませんが、まあ名前だけはとにかく有名です
そんなわけでBBCフィルハーモニックというオーケストラはいわゆる新興勢力ということになるんでしょうか。
舞台上の顔ぶれを見ると年齢構成的にはやはり若手が多かったようです。
あと女性陣が多かったのも特徴でしょうか。
この日の木管隊は合計11人いましたが、6人が女性でしたからね。
オーボエにいたっては、3人とも女性でしたよ。
とくに真ん中の人が超美形だったのが印象的だったなぁ
このオケのコントラバス隊には、ジャーマン・ボウというドイツ系のオケで主流の下から弓を持つ構えをしてる人が8人中2人いました。
ヨーロッパ大陸のオケでは弓の構え方が混成することは稀ですが、イギリスとか日本とかではフレンチ・ボウとジャーマン・ボウが入り混じってることがけっこうありますね。
ちなみにイギリスの主流はフレンチ・ボウで、日本の主流はジャーマン・ボウですのでお間違えのないように・・・
そういえばCマシンを付けた奏者がけっこういたのもこのオケのコントラバス隊の特徴だったかも知れません。
新興勢力はあまりお金持ではないので仕方ないのかな
さてコンサートのほうです。
1曲目はストラヴィンスキー作曲の歌劇「妖精の口づけ」よりディヴェルティメント。
曲自体は初めてだったのでよくわかりませんが、『春の祭典』より後に作曲されたわりには極端に変わった曲というわけではありませんでした。
変わっていたのは指揮者のほうで、イタリア人指揮者のノセダ、とにかく指揮台の上で飛んだり跳ねたりが相当お好きな方のようです
観客席も苦笑というか失笑というか、ちょっと唖然としてましたね
2曲目がシベリウスのヴァイオリン協奏曲
この曲を本命に来たファンも相当いたと思います。
開演前に2階のベンチから入り口を眺めていたら、ヴァイオリンを背中に背負った方とか、小学生と思しき女の子たちのグループとか、お目当ては明らかにヒラリー・ハーンでしょうから
ハーンというヴァイオリニストの音はホント凄いですね。
絶対に音程が狂いません
以前の来日リサイタルの時にもそれは感じましたが、あれだけの美音とテクニックを誇りながら音程が微動だにしないんですからね
今回のシベリウスは持ち前の美音を活かした終始優雅で上品なシベリウスでした
ヒラリー・ハーンという人は絶対に破目を外すことをしないヴァイオリニストなんでしょうかね
弓使いがちょっと独特で、端から端まで目一杯使うボーイングのせいか鋭いタッチの音やスタッカートの音はあまり多用しません。
オイラ的にはちょっとおっとりしたシベリウスに聴こえてしまいます。
それでも、音はホントに凄いですけどね
シベリウスのヴァイオリン協奏曲、いわゆるシベコンはオイラの大好きな曲のひとつなのでCD的にも相当頑張って買ってます
オイラ的ベストは超個性盤で知られるナージャ・サレルノ=ソネンバーグの録音
異常に盛り上がった演奏は完全にナージャ独特のものでしょうけど、それがまた堪らないんですよね
比較してどうなるもんでもないですけど、ハーンの演奏は強いて云えばクール・ビューティ的なものでしょうね。
改めてシベリウスの楽譜を見ながらハーンの演奏を思い出していましたが、実に楽譜どおりの演奏なのにはビックリです
バッハの無伴奏の演奏のときにもこれは強く感じましたが、ハーンは楽譜を極端に自己解釈するタイプではないんですね。
いい意味での素直な演奏がその特徴だとも云えます。
他の演奏者はもっとスタッカートやルバートを多用して熱いシベリウスを演出してますが、ハーンはそういうことはしません。
ややもすると没個性に聴こえますが、楽譜を拠りどころにした演奏は普遍的なものにも繋がる好印象を与えるのも事実でしょうね
オイラ的好みからすればちょっとおとなしすぎるものでしたが、ハーンの演奏自体は実に立派という感じでした。
それにしても動きの少ないハーンに対して、協奏曲の指揮者のノセダが飛んだり跳ねたりはどうなんでしょうね
そういえばちょっとしたハプニングがありました・・・
2楽章から3楽章へは切れ目無しの演奏を考えていたようですが、ほんのちょっと間が空きすぎたため観客席のあちこちから咳が出てしまいました。
手を挙げていたノセダでしたが、苦笑いをしながらハーンを見てました
おそらくオケの準備がほんのちょっと遅れたのが原因でしょうけど、生演奏ならではの出来事でした
しかし終演後の間髪入れずの拍手はすごかったなぁ
ハーンが何回呼び出されたのかちょっと思い出せません。
アンコールでお得意のバッハの無伴奏からサラバンドを披露してくれましたがこれも実に良かった
ノセダが舞台の上のほうの空いてる席に座って何回も出入りするハーンを見てたのには笑ったけど
3曲目はチャイコフスキーの悲愴です。
いわずと知れた超有名交響曲
3楽章がド派手な行進曲風なのに対して、最終楽章が弦楽器主体で静かに終わるという少し変わった構成の曲です。
メロディーメーカーのチャイコフスキーらしく全楽章にすばらしい旋律が用意されてますが、なんと云っても有名なのが1楽章の旋律です。
メランコリックな旋律を書かせたら右に出るものなしの肩書きはダテではありませんね
ノセダはこの4楽章の交響曲を切れ目無しで演奏するという少し変わった手法を採用しました
オケは1楽章こそ硬さがありましが、次第に調子が上がっていきました。
全楽章通しということもあるのか、全体的に早めのテンポで推移していきます。
1楽章のラストの金管のコラール風の箇所もあっさりと終わってしまったのはちょっと残念でした
2楽章の5拍子ダンスも軽快で若々しい演奏でした。
3楽章はド派手で有名なですが、極めて真っ当な派手さだったと思います
早めのテンポに金管楽器がちょっと窮屈そうでしが、浮つかずにしっかり演奏してました。
この楽章、ティンパニが大活躍するんですが、相撲取りのような巨漢の奏者が4個のティンパニを右に左にと忙しく叩き分けてるのは笑ってしまいました
さて、最終楽章です。
弦楽器の下降音型にホルンが応答するという見事な出だしから始まる有名な楽章です。
いやー、この楽章は実に気合が入ってましたよ
人が変わったように弦楽器隊が頑張ってました
前の三つの楽章とは明らかに練習量が違うと云わんばかりの見事な演奏でした。
サントリーホールが弦の響きを何重にも増幅して極めてゴージャスな空間を作り出してました
それにしてもジャナンドレア・ノセダという指揮者は躍動的というかなんというか、よくもまああそこまで動き回るもんだとほとほと呆れ・・・、感心しました
ゲルギエフの弟子らしく、指揮棒を使わずに手をヒラヒラさせてましたが、あの上背で激しく上下運動されると見てるほうとしてはちょっと忙しすぎなんですけどね
それでも終演後の拍手はすごかったですよ。
一人で平均年齢を上げていたと思われるコンマスがややお茶目でしたが、オケの演奏自体は極めて真面目で一生懸命なところは観客の共感を誘っていたと思います。
とりあえず、無事に終わって余は満足じゃ
コンサート終了は9時半にならんとしてました
オーケストラのコンサートでは最近珍しいほどの遅さですね。
この後にヒラリー・ハーンのサイン会があったというのですから、ハーンもファンの皆さんも大変ご苦労様でした