水時計の謎

ある朝
ここに来て
蛇口をひねりました。
水を出して何をしようとしたのか
覚えていません。
(手を洗おうとしたのかな…)

とにかく水は、こんな風に三段階に
ジョボジョボ落ちてきました。

蛇口を閉めて
立ち去ろうとしたときでした。
ジョボジョボ落ちる水音が
やけに、いつまでも聴こえてきて
振り返ると…

僕は戻ってきて
写真を撮り
ぼんやり考え込んでしまいました。

蛇口、上段、中段、下段　の順に
水は流れを終えていくのです。
最後に残った下段の水溜まりからは、
本当に、びっくりするくらい、いつまでも
ジョボジョボと水が落ちてきます。

ここから仕事場まで、まだ３ｋｍほどあります。
僕は、ゆっくり歩きながら、考え込むことにしました。

水の粘度
表面張力
慣性力
物理に詳しい人なら明確に説明しちゃうんでしょう。
たぶん、そういう現象ですね。

ただ、なんとなく、僕は、
例えば人間の記憶とか学習とか
そういう営みに似ているなと思って
なんだかスゴイことを発見した気になって
ウキウキ歩いていきました。

それから、ふと、母が亡くなったときのことも思い出しました。
医師から死亡宣告があって1分以上経ったとき
母の口が動きました。
眠っている人がムニャムニャと口を動かすみたいに
実際、生きているかのように。。。
でも、母は、死んでいる。。。
蛇口は閉じている。。。
なるほど
78年の生涯は、
死んだからといって、
そんなに急には止まらないんだ。。。

人間は…というか生き物は…水で動いてるんだなと、
無理やりな感じで、深く納得した、初冬の朝でした。