裸の王様

日常をダラッと垂れ流しております。
時折、マニアックな妄想も垂れ流していますのでご注意下さい。

1(お題:1、小ネタ、SX)

2007年09月26日 19時43分34秒 | REBORN(SS)
8年ぶりに目覚めたXANXUSは、何故ゆりかごで負けたのかを考えた。
生まれてこの方、宿した炎に物を言わせてずっと素手で戦ってきたが、どうやら接近戦に敗因があるらしいと思い至ったXANXUSは、早速武器職人のジャンニーイチを呼んで専用武器を作らせることにした。
ボンゴレ歴代ボスの武器を参考に色々手にとって見たが、一番しっくり来る遠距離戦用の武器はやはり銃だった。

「おい、コレを俺専用に作れるか?」

「任せてください。仕上がりは1ヵ月後になります。」

それからひと月、やっと手元に届いた銃はなぜか1つきり。
不審に思ったXANXUSが問い合わせると、もう一丁の作成に手間取っていて先に出来た一丁のみを届けたのだという。
何事にもシンメトリー(左右対称)を重要視するXANXUSにとって、拳銃一丁ではバランスが悪く格好がつかないのがなにより嫌だった。
とにかく早急にもう一丁を仕上げるように催促したが、早くてもあと1ヶ月待てといわれ、ぶちきれ寸前だ。
そんなところへスクアーロが任務の報告へやってきた。

「う゛お゛おいっ!ボス。報告に来たぜぇ。」

ずかずかと執務机の前まで大またで歩いてくるスクアーロを不機嫌そうに睨みつけたが、当のスクアーロはまったく動じずにや歩み寄って執務机に手を突くと濁声で喋りだした。

「小うるさくちょっかいかけてきた中央イタリアのエットーレファミリーを片付けてきたぜぇ。」

ニヤニヤと不敵な笑いを貼り付けた顔で、立ち位置の関係上、上から見下したようにこちらを見るスクアーロが癇に障る。
ただでさえイライラしていたXANXUSの短すぎる堪忍袋の尾が切れるのは時間の問題だった。

「なぁ、何とか言えよ。報告に来てんだろ。お疲れ様とか、ご苦労だったとか、労いの言葉もねぇのかよ。ああ?」

ブチっ!!

確実に何かがぶちきれる音がした・・・様な気がした。
XANXUSはとりあえず手近にあったインクボトルを掴んでスクアーロに投げつけた。
インクボトルは目にも止まらぬ剛速球でスクアーロの鼻っ柱を直撃するかに見えたが、こともあろうにスクアーロは首をひょいと横に傾けただけで、あっさりかわして見せたのである。
行き場を失ったインクボトルは、そのまま放物線を描きスクアーロの入ってきたドアにぶつかって転がった。
丈夫なボトルと、蓋が閉まっていたおかげでドアにへこみ傷がついた以外の被害は出なかったことは幸いであった。
もし辺りにインクが散らばれば、綺麗好きのXANXUSが耐えられるはずもなく、執務室の内装工事に2~3日費やすことになるからだ。
しかし、スクアーロがインクボトルを避けるなんてことは、XANXUSにとっては想定外の出来事であった。

「てめぇドカスっ!何故避ける!!」

プルプルと怒りに震えながらスクアーロを怒鳴りつけたXANXUSに対し、平然とした顔で両肩をすくめ、小馬鹿にしたような、少し得意げなような、なんとも癪に障る態度でスクアーロは返してきた。

「はんっ!剣士の俺様があんな程度のもの避けられなくてどうするよ。蝿が止まって見えたぜぇ。」

火に油を注ぐということがどういうことか、場の空気を読めないスクアーロにはわかっていないようだ。
プルプルと怒りに拳を振るわせるXANXUSに執務机越しに顔を寄せると、睨みつけてくる緋色の視線をものともせず、右手のひらを無防備に晒された頬の傷を覆うように添えて、触れるだけのキスをした。
あっけに取られたXANXUSが我に返るまで、約3秒。
銀色の長い髪を翻して、背を向けたスクアーロがのたまった。

「今のは褒美代わりに頂いとくぜぇ。」

イライラ増幅の上、セクハラまでされて黙っているほどXANXUSはお人よしではない。
何か投げつけるものはないかと机上に視線を落とせば、届いたばかりの一丁の拳銃。
手を伸ばし、カートリッジに特殊弾が装てんされていることを確かめると、その銃を握り締めて銃口をスクアーロに向けた。

「おいカスっ!光栄に思えよ、お前で試し撃ちしてやる。」

ゆらりと立ち上がり、右手に構えた銃がXANXUSの憤怒の炎を吸収し始めた。
事の次第がわからないスクアーロは、振り向きざま自分に向けられた銃口を見て驚きを隠せない。

「う゛お゛おいっ!何するつもりだボスさんよう。俺は何にもしてねぇだろっ!」

「ドカスが!今した事を忘れたとは言わせんぞっ!!」

「なんだよ、あのくらい。いつももっとすげぇ事してんだろうがっ!!ケチケチすんな。」

「問答無用!!死ねっ!怒りの暴発(スコッピオ・ディーラ)!!」

XANXUSの構える銃に光るが集約されて吸収され、銃口がスクアーロに向かって火を噴いた。
一丁のみとはいえ、連射によって膨れ上がった炎が一瞬にしてスクアーロを襲う。

「う゛お゛おぉぉぉぉい!!」

炎の塊を死ぬ気で避けたが、熱源が眼前を掠める瞬間、避け切れなかった前髪の一部が目の前で蒸発するのをスクアーロは確かに見た。
スクアーロを捕らえられなかった銃弾が着弾した執務室の入り口扉は、廊下の方まで跡形もなくなくなっていた。
銃痕というより、それは爆発の痕に近い形跡を残していた。
こんなのをまともに食らったら死ぬ。
スクアーロは、真っ青になりながらXANXUSに向かって吼えた。

「こ、殺す気かぁっ!!」


「ぶはっ!いい様だなスクアーロ。なかなかいい銃だ、気に入った。」

尻餅をついて、青い顔をこちらに向けたスクアーロの焼け焦げた前髪と銃の威力に溜飲を下げたXANXUSは、右手の銃を満足げに眺めると、そのまま執務室を出て行った。

「こえぇ・・・死ぬかと思った。」

執務室に一人取り残されたスクアーロは、コレに懲りて二度とXANXUSの投げつけるものは避けまいと固く心に誓ったのであった。


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