波の音と潮の香りがどんどん大きく強くなっていき、やがて前方に出口らしきものがうっすらと見えてきた。
「もうすぐ出口だぜぇ、今日は月が出てるから少し明るいみたいだなぁ。」
足元の岩は、いつの間にか鍾乳石ではなくなり、ゴツゴツとした岩と岩の間に波に洗われて丸くなった小石が敷き詰められ、歩くたびにじゃりじゃりと音を立てた。
一歩進むたびに足が沈み込むような感触に気を取られ、下を向いて歩いていたので、 . . . 本文を読む
暗い洞窟を歩いていくと、やがて遠くに水の流れるような音が聞こえてきた。
洞窟の岩が水気を帯びて懐中電灯に照らされると、キラキラと光を反射し、時折ピチョンピチョンと滴の落ちる音が聞こえる。
洞窟の上からも下からもツララや筍のようにツルツルの岩が三角形に伸び、水滴を互いの間で滴らせていた。
少年の後を少し離れて歩いていたXANXUSの背中に頭上から滴が伝い落ち、びっくりした拍子に足元を滑らせて派手に転 . . . 本文を読む
歩き続けると、やがて森を抜け小高い丘の頂上に辿り着いた。
そこからは蒼い海と少し遠くに島が点在しているのが見えた。
ふと視線を下げれば、XANXUSが飛び出してきた別荘やその下にある漁村が一望できた。
森を歩いていたため気が付かなかったが、いつの間にか空はどんよりと雨雲が垂れ込め遠くの方から雷鳴のゴロゴロという音が聞こえ始めていた。
雨が降っては面倒だと思ったが、別荘へ帰る気も起こらずしばらく思案 . . . 本文を読む
のんびりとしたその光景は、まだ父に引き取られる前の幼い日、母に連れられて祖母のうちに行ったとき光景に重なり、XANXUSは母を思い出した。
記憶にある母は普段ひどい酒飲みで、昼日中から酒を飲んでは泣きながらXANXUSに暴力を振るったこともあった。
そんは母でもXANXUSにはたった一人の大事な家族だった。
母がある時から口癖のように繰り返していた言葉が甦る。
『お前の父さんはボンゴレ・ファミリ . . . 本文を読む
夏休みも終わり、暑かった夏から秋へと季節が移り変わろうかという10月初めの月曜日の早朝、綱吉は隣家からのなんとも言われぬ奇声にたたき起こされた。
「う゛おぉぉぉいっ!○×△□※●っ!!!」>
「はぁうっ!な、なにーっ!!」
辺りを見回しても、まだ鼻ちょうちんを膨らませ目を開けたまま眠るリボーンがいるだけ、時計を見やればまだ6時前。
「な、なんだったんだ?夢か?
でもあの声、なんか聞き覚えの . . . 本文を読む
父に手を引かれて玄関のドアをくぐると、少女が駆け寄って父に飛びついた。
年の頃は14、5歳といった感じで、XANXUSより頭ひとつ背が高く、すらりと伸びた手足と少し吊り上った目が印象的な少女だった。
「おじ様、遅かったじゃない。私も兄さんもずいぶん待ってたわ。」
「やあ、待たせてすまなかったね、フェンネッラ。
紹介しよう、この子がワシの息子のXANXUSだよ。
XANXUS、この子は従姉のフェ . . . 本文を読む
夕暮れも間近な夏空一面に広がった雨雲から叩きつける様な雨粒が雷鳴と供に降り注ぐ。
そんな夕立を窓から眺めていると、ふと遠い日の記憶が甦る。
子供の頃、たった一日の冒険を思い出す。
「坊ちゃま、お支度は整いましたか?」
メイドに急かされてXANXUSは身支度を整えると、少し大きめの旅行鞄を持って部屋を出た。
部屋の外では、父が待っていた。
「XANXUS、仕度は出来たようだね、さぁ行こうか . . . 本文を読む
「ゆりかご」・・・9代目がそう名付けたクーデター。
ボンゴレ最大の禁忌とされたそれは、詳細を明かされることも無く終わった。
一生付いていくと誓った彼の人は、今や冷たい氷に閉ざされ分厚い鋼鉄の板で囲われて、暗いあの部屋に死ぬことも許されず繋がれている。
このことを知っているのは、9代目と自分を含めた極々一部の関係者のみだ。
あの時やりあったボンゴレの幹部にさえ、表向きXANXUSはボンゴレを離れて . . . 本文を読む