「ゆき」の情報館

”クリント・イーストウッドの一ファン”

子供たち「短足化」進む

2010-12-10 | Weblog
ぜんそく過去最悪、視力も悪化

 文部科学省は9日、児童生徒の健康や発育状態を調べた平成22年度学校保健統計調査の速報値を公表した。ぜんそくを患う児童・生徒の割合が幼稚園、小学校、高校で過去最悪となったほか、視力の悪化も進んだ。戦後、全体的に伸び続けていた子供の平均身長が頭打ちとなる一方、男女ともに「短足化」が進んでいる実態も明らかになった。

 ■ハウスダスト?
 調査は昭和23年度から行われ、今回は4~6月、5~17歳の幼稚園児と小中高生合わせて約335万人の健康などを調べた。
 ぜんそくを患っている割合は幼稚園で前年度に比べ0・6ポイント増の2・75%、小学校で0・2ポイント増の4・19%、高校で0・2ポイント増の2・08%といずれも過去最悪。中学校も前年度より増加し3・02%だった。文科省は「ハウスダストなどが原因ではないか」と分析している。
 視力の悪化も顕著で、裸眼視力1・0未満の小学生の割合が29・91%、中学生が52・73%でいずれも過去最悪。0・3未満の割合は、幼稚園児と小学生で過去最悪となり、それぞれ0・79%、7・55%だった。文科省は「テレビやゲームなど近くでものを見る機会が増えている」とした。
 虫歯では改善がみられ、12歳の永久歯の虫歯は1人当たり1・29本で、過去最少を更新した。 

■身長は頭打ち
 男子の平均身長は、調査開始以来初めて5~17歳の全年齢で前年度より伸びていなかった。女子でも13歳と17歳が0・1センチ伸びたのを除くと、すべての年齢で横ばいか減少した。子供の身長は戦後伸び続けていたが、ここ10年はほぼ横ばいで、文科省は「食生活などの環境も安定し、日本人の平均身長は頭打ちになりつつある」と推測した。
 発育がほぼ止まる17歳の平均身長は男子が170・7センチ、女子が158・0センチ。30年前と比べ男女とも1・0センチ伸びているが、ピーク時の値を下回った。

 一方、高校生の「足の長さ」を調べたところ、親の世代より短いことも分かった。スタイルがいいといわれてきた最近の高校生だけに、文科省は「意外な結果」と驚いている。
 高校生男子の平均身長から座高を引いた「足の長さの割合」は15歳と16歳で46・3%、17歳で46・2%。30年前の昭和55年度と比べ15歳で0・3ポイント、16、17歳で0・4ポイント減少していた。女子の15~17歳も0・1~0・2ポイント減っていた。

※産経新聞「12月10日」から引用しました。

【海老蔵事件】 「一生かけ、人間として成長する」

2010-12-08 | Weblog
海老蔵サイドからの事件展望

 事件の半分しか明らかにしておらず、真相はまだ闇の中である。しかし海老蔵サイドのダメージも大きく立ち直りには時間がかかりそうだ。思い上がりの姿勢を猛省するとともに、真正海老蔵に期待する。

 《会見開始から既に1時間以上。記者からの質問は肉親への思い、事件の事実関係、今後のことなど多岐にわたり、まだ途切れない》

 --さきほど、謹慎は当然とお父さまに言われたと。お父さまにはどんな謝罪をしたか
 「入院している間、父は京都におわびにいったり、会見をしたり…。父も病み上がりで、そんな父をそのように動かしてしまったことが、本当につらい。誕生日の日に祝ってもらうのがあたりまえと思ってきたが、両親には『生んでくださってありがとうございます』と自然といえたことが、謝罪にはなりませんが、思いが伝わったのではないかと思います」

 --にらみにはどんな影響が
 「骨が5つに粉砕し、約8ミリの陥没でした。それが三叉(さんさ)神経の一部にさわり知覚障害になっている。お医者さまからは、ゆくゆく(しびれが)とれるかもしれないし、とれないかもしれないといわれた。この状況を受け止め、(歌舞伎を)再開する、にらむこと、それは考えておりません」

 --質問がなくなるまで、(会見を続ける)覚悟なのかもしれないが、きりがないのではないか
 「今の私はそのようなことは決められません」
 《グラスの水を一杯飲む》
 --現場から海老蔵さん以外の血痕が見つかっているが、心当たりはないか
 「捜査中なので申し上げられない」

 --(相手が)鼻血を出していたというが
 「心当たりがございません」

 --海老蔵さんが介抱した男性だが、ご自身が飲ませすぎたことはないか
 「確かにご一緒に飲ませてもらったが、最初から(相手は)酔っぱらった状況だった」

 --(松竹の)社長から『市川宗家として、自覚と猛省を促したい』と発言があったが、これからどんな歌舞伎役者を目指すか
 「まずは、今回のことを、きちんと反省し受け止め、一生をかけて、人間として成長するということを先に考えたいと思います。役者としては、どのような形になるか分かりませんので、お答えできません」

 --(元暴走族のリーダーは)全治4週間の唇の裂傷とされているが、やはり殴っていないのか
 「はい」

 --抵抗を含めてか
 「はい」

 --はずみで殴ったことはないのか
 「起こり得た可能性はあると思うが、そのような記憶はない。手を出す余裕はありませんでした」

 --隠していることはないのか
 「言えないことはございませんが、捜査中で言ってはいけないといわれていることがあることはご理解していただきたい」
 《ここで深沢直之弁護士がマイクを取り、海老蔵さんが「被害者だ」と説明。口調は極めて強く、これまで海老蔵さんに不利な報道が流れたことについて、報道陣を牽制(けんせい)しているようにも見える》

 深沢弁護士「彼は被害者。逮捕状が出ている人は加害者。(事件当時)彼は一人で、相手は複数人。被害者と加害者ということをおわかりいただきたい」

 《司会者が「質問をあと2つでお願いします」と報道陣に要望。500人以上の報道陣が詰めかけた注目の会見は終わりを迎えようとしている》

 --事件後重傷の状態だったが、なぜ警察や病院ではなく自宅に戻ったのか
 「家に帰らなくては。妻の元に戻らなくては。その一心で戻りました」

 --タレントや有名人からお見舞いの言葉などはあったのか
 「花は病室に届かない状況です。歌舞伎役者の先輩や同輩から、心の詰まったお手紙をいただきました」

 《1時間半に及ぶ会見が終わると、海老蔵さんは座った状態で深く一礼。席から立ち上がった直後にも、さらに約10秒間頭を下げた。会場を去るまでに計5回頭を下げた海老蔵さん。今回の事件で「梨園(りえん)のプリンス」が失ったものの大きさがうかがえる会見となった》

  ※産経新聞「12月8日」から転載しました。

斜め座りのマドンナ   滝川クリステル

2010-12-07 | Weblog
いろんな仕事にチャレンジ

 「夜の報道番組を“卒業”したので、自分の幅を広げるために新しいことに興味があります。軸はしっかり持ちつつ、必要とされるならいろんな仕事にチャレンジしたい」。少しはにかんだような笑顔を見せた。
 7年間キャスターをつとめた「ニュースJAPAN」(フジテレビ系)の、“斜め座りのマドンナ”。昨年9月でやめた後も、CMではいっそう華やいだ姿を見せているが、趣味を生かした活動や社会貢献など、幅広く活動するようになった。
 そのひとつが、「ルナ・レガーロ~月からの贈り物~」のサポーター。ロシアのグレート・モスクワ・サーカスのパフォーマンスを見ながら、日本の有名スター・シェフのフルコース料理を味わうという、世界でも初めての試みというエンターテインメント&レストランの魅力を伝える仕事である。
  ■  ■  ■
 まず、サーカスが大好き。「ヨーロッパでは移動サーカスが多く、子供のころからよく見ていました。私自身もクラシックバレエやジャズダンスを習ったことがあって、身体表現することが好きです。今回のサーカスはかなりレベルが高いし、いろんなアレンジが加わってどんどんバージョンアップしている。何度見ても楽しいですね」
 食べることも大好き。「私は基本的には素朴な“和”のお料理が好きですが、昨年まではデスクの上で食べることが多くて。だから今は、外で自由にお食事できるのがうれしい」
 さらに、「すばらしいパフォーマンスと、お料理を交互に味わえるのは、とても贅沢(ぜいたく)なエンターテインメント。言葉で伝えるのは難しいんですが、凝縮した時間で両方を体感できる、ワクワクする異空間ですよ」
 よどみなく、涼やかにPRした。
  ■  ■  ■
 日仏のハーフでフランス生まれだが、物心がつく3歳から10年ほど神戸で過ごした。「祖母が神戸に住んでいますし、私は神戸で育ったという思いがとても強いですね」という。今年4月からは「Mr.サンデー」(フジテレビ系)で、大阪で人気の高い元朝日放送の宮根誠司アナウンサーとコンビで司会をしている。
 「宮根さんは“東京は出稼ぎ”っておっしゃいますが、さほど関西弁は使われませんね。ただ、毎週、大阪と東京を行き来していらっしゃるのは大変だなって。今回、私が“大阪へ出稼ぎ”に来てみて、改めてそう思いました」
 最近、趣味でクラシックギターを習い始めた。「楽器はかつて、ピアノとフルートをやったことはありますが、ギターはあこがれだったんです。1曲でも弾けるようになりたい」とがんばっているそうだ。(文・平松澄子 写真・門井聡)

◆たきがわ・くりすてる 
1977年生まれ。青山学院大学文学部フランス文学科卒。「FNNスーパーニュース」「ニュースJAPAN」などで人気を得る。現在はフリーアナウンサーとして情報番組などで活躍している。
 「ルナ・レガーロ~月からの贈り物~」大阪公演は、北区中之島の特設会場で来年1月26日まで開催中。和洋中のジャンルを超えたフルコース料理は月替わりのメニューで、計12人のスター・シェフによってふるまわれる。

  ※産経新聞「12月7日」から転載しました。

【日本よ】  石原慎太郎

2010-12-06 | Weblog
核保有に関する覚書

 敗戦後二十七年たって沖縄返還交渉が行われていた際核兵器の扱いについての議論がかまびすしかった。当時の佐藤内閣は、核は持たず、造らず、持ちこませずという非核三原則を標榜してことに臨んでいたが、一方返還交渉に並行して日米間で繊維問題について摩擦が高まり、アメリカの高圧的な姿勢に反発が高まっていた。
 そうした状況の中で毎日新聞の日本の核保有に関する世論調査が行われ、保有を是とする者35%、非とする者36%という際どい結果が出た。
 現在、尖閣諸島で中国による強引な侵犯が起こり、政府の醜態不始末が露呈して国民の間に強い危機感が台頭してきている今、国土への侵犯や経済への収奪沈滞の中で、それは所詮国力の差によるものと自覚し、国力とはとどのつまり軍事力、それも核の保有非保有による格差と覚れば、日本の核保有に関して国民はいかなる姿勢を示すのだろうか。
 この日本は、間近な周囲を中国、ロシア、北朝鮮という、いずれも日本に対して険悪な姿勢を示している国に囲まれ、その日本を守ると称しているアメリカは国力の衰退がはなはだしい。そのアメリカはこと尖閣の問題に関して、国務長官は安保をかざして乗り出すとはいうが、その下の実務担当の高官は穏便に解決せよと圧力をかけてき、あの体たらくとなった。国家の安危に関してこんなに危うい状況におかれ、じりじりと被害を被りつつある国家は今世界に他に例がない。
 しかしあてがいぶちの平和の毒に飼いならされたこの国の国民の意識は、自らの犠牲努力で自らを守るという意識を今後どれほど抱き得るのだろうか。その判断のよすがになり得る、先人の思いがけぬ試みと努力について最近知らされたものだが。
 今年の春に死去した元外務次官の村田良平氏がその死の直前自らの死を意識してとの前置きで語った、1969年日本がドイツと協力し核を開発保有しようという史実の意味は今日的にも大きいと思う。沖縄返還交渉はその三年後に行われたが、その以前の佐藤政権は一方で実はそうした試みをしてい、佐藤総理は当時のジョンソン大統領に、日本は核を持つ意思があると伝えていた。その根拠は、アメリカの日本に対する核の抑止に関する根本的な疑義だったろう。
 私はワシントンでの返還交渉に、竹下登議員と二人だけ総理の許可を得て非公式に随行したが、それを聞いて、親友だった沖縄の返還交渉に総理の密使として活躍していた若泉敬がその帰りに是非ともアメリカの核戦略基地であるNORAD(ノース・アメリカン・エア・ディフェンス)とSAC(ストラテジック・エア・コマンド)を視察してくるようにと建言してくれた。
                   ◇
 その結果NORADを見て、水爆は開発されていたがそれを運ぶ手立ては大陸間弾道弾しかなかった当時(未だ原潜に搭載するサブロックなどは開発前だった)NORADの警備機能はその名の通り日本には及んでおらぬが故に、アメリカの核戦略での抑止力は日本のためにはあり得ないと確信させられた。私がそういったら、案内してくれた司令官は、当たり前だろう、日本はここから遠すぎソヴィエトはそちらに近すぎる、他の政治家が何を言っているか知らぬが現実はお前のいう通りだ。なぜ日本は自分で核を持とうとしないのだと逆に諭された。私に視察を建言してくれた若泉も視察の口添えをしてくれた佐藤総理も、実はそれを知ってのことだったのだと今になって覚らされた。
東ドイツ問題のあるドイツは日本の提案に応じ切れなかったが、その後日本とは全く逆に、ブラント外相時代アメリカを強く説得してドイツにこそ核兵器を持ちこまさせその引き金を引く権利を保障させた。この現実感覚の違いをどう受け止めるか。
 歴史について、もし何々だったら、ああしていたらと想定して計るのは詮ないことだが、しかしわずか四十年前の日本の政府の思惑がもし実現していたら、北朝鮮による多大な数の同胞の誘拐拉致はありえなかったろうし、今日の中国によるやくざまがいの領土侵犯もあり得なかったろうし、ロシアに奪われた北方領土についての関わりも違ったものになり得ていたに違いない。今日の世界の外交問題はすべて国力、つまり軍事力、つまり核の保有非保有を背景に左右されているのだ。という実はありきたりな現実を、我々は直視しなおす必要があるのではなかろうか。
 アメリカの中国に対する意識は、自国の衰弱に沿って微妙に変わりつつある。過去にアメリカが画期的な試みとして、原潜にミサイルの代わりに搭載した巡航ミサイル、中国が最も嫌がる戦略兵器をなぜかアメリカは最近廃棄すると発表した。二国の間にどんな取引があったものか。これについての日本側の反応があまりに鈍いとアメリカの識者は慨嘆しているのだが。
 今日の世界情勢の中で、核兵器は実際に使用されることはまずあり得まい。がなお、それを持つ持たぬが一国の運命を左右もしかねぬというのが、現実なのだ。
 若泉敬が存命中、二人してフランスの実存主義の哲学者レイモン・アロンと会食したことがある。その時話題が核に及んでアロンが、世界で唯一の核被爆国の日本がいまだに核を保有しない訳が分からぬと指摘し、日本にはどうやらドゴールの如き誇り高き指導者がいないようだといわれ、返す言葉がなかった。
 広島、長崎への核投下で殺戮された三十万の同胞は、非核のセンチメントのままにこの国が中国の属領となり、あのチベットのようにその文化伝統も否定されてもなお浮かばれるというのだろうか。

  ※産経新聞「12月6日」から転載しました。

マイコプラズマ肺炎患者が急増

2010-12-04 | Weblog
報告は過去10年で最多

せきなどが1カ月近く続き、重症化することもある感染症「マイコプラズマ肺炎」の患者が急増し、過去10年で最多となっていることが3日、国立感染症研究所の調べで分かった。同肺炎は初期段階での診断が難しく、風邪と誤診されることも多い。感染研は「風邪薬を飲んでも治らない場合は、特に注意して」と警戒を呼びかけている。

 感染研などによると、マイコプラズマ肺炎は例年、晩秋から早春にかけて流行する。今年度も10月ごろから患者数が急増。11月21日までの1週間で、調査対象の全国約500の医療機関では、1医療機関当たり0・71人の患者が確認された。昨年同期と比べて約3倍で、過去10年で最も流行した平成18年度のピーク時(0・69人)を超えており、感染研も「例年に比べてかなり多い」と警戒している。

 地域別では青森県が最も多く2・5人。次いで多い順に宮城県(2・42人)▽群馬県(2・25人)▽愛媛県(2・17人)▽沖縄県(2・14人)▽佐賀県(2人)-と続く。

 以前は4年に1度、五輪開催の年に流行したため「オリンピック肺炎」などと呼ばれていたが、近年は流行に一定の周期はない。有効な抗生物質が複数あるが、症状が風邪に似ており、特に初期段階では診断が難しい。

 感染研感染症情報センターの谷口清州第1室長は「小さな子供や持病のある人は特に注意が必要。感染予防のためにも、手洗いやうがいなどの基本的な感染症対策が大切だ」と呼びかけている。
     ◇
 マイコプラズマ肺炎 肺炎マイコプラズマという細菌によって引き起こされる肺炎で、感染後2~3週間で発熱や全身倦(けん)怠(たい)、頭痛、せきなどの症状が出る。特にせきは熱が下がってからも3~4週間続く。せきやくしゃみなどで感染する。肺炎の中では比較的症状は軽いが、重症肺炎になり胸に水がたまるなど重症化することもある。

  ※産経新聞「平成22年12月4日」から転載しました。

中国は優位に立つと嵩にかかる 平松茂雄

2010-12-01 | Weblog
 わが国の政治家、マスコミはどうして尖閣諸島で毎回、同じことを飽きもせず繰り返すのか。今回は、7月ごろから中国の漁船数十隻が尖閣諸島の領海に入って、活動していたという。マスコミが報道したのは9月7日で、そのうちの1隻がわが国の海上保安庁の巡視船に衝突したことを機に、初めてニュースとなった。それまで国民はわが国の領海を、中国の漁船が徘徊(はいかい)していたことをあまり認識していなかったのである。
 尖閣諸島は、明治28(1895)年にわが国の領土に編入された。翌29年、石垣島の古賀辰四郎氏が1島を除く4島を政府から借り上げて主島の魚釣島と南小島で鰹(かつお)節工場などを営み、昭和7年の払い下げで私有地とした。太平洋戦争が近づいて古賀氏が引き揚げると無人島になり、現在は埼玉県の日本人が所有している。
 したがって、周辺12カイリの海域はわが国の領海である。国際法上、外国船は軍艦を除いて通過できる(無害通航)ものの、活動したり徘徊したりすることは認められていない。海上保安庁の巡視船は領海を侵犯した外国船に対しては、その旨を通告して立ち退かせているものの、数十隻の漁船を相手に、追い払ってもまたくるというイタチごっこを繰り返すのは、並大抵の苦労ではなかろう。
 こんな事態を招いたのは、わが国政府、マスコミ、評論家らの事なかれ主義である。今回の出来事の責任は専ら、民主党政権の責任に帰されているが、事なかれ姿勢は、民主党の下ではひどすぎるといった程度の差こそあれ、自民党時代にも通底するものだ。

 ≪尖閣の発端は海洋法条約≫
 尖閣問題の発端は、1973年からの国連海洋法条約会議に象徴される「海洋の時代」の到来にある。それまで人類が開発し消費してきた陸上の資源がこのままでは枯渇するので、海の資源、特に海底に埋蔵されている資源が着目されるようになって、それを利用するルールが必要になった。
 条約の討議を前に、世界の沿岸国は自国の海を囲い込んで海洋調査を実施した。南米諸国は何と500カイリを主張、これを受け入れると世界の海の大半が排他的経済水域になり、公海はほとんどなくなってしまう。そこで200カイリで手打ちが行われたのである。
 わが国周辺の東シナ海、黄海でも68年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の調査が行われ、翌69年に結果が公表された。両海の大陸棚には、「中東に匹敵する石油が埋蔵されている可能性がある。特に尖閣諸島海域が最も有望」と報道されている。
 そうなると、わが国の石油企業4社が「日中中間線」の日本側海域に鉱区を設定し、台湾と韓国も鉱区を設けた。ところが、南北の幅が400カイリに満たない東シナ海の中央で3カ国・地域の設定鉱区が重なり、対立が生じた。

 ≪中国がつぶした日韓台開発≫
 そこで、岸信介元首相の仲介により、領土問題を棚上げし石油資源の開発に限定して、3カ国・地域による共同開発を実施するということで合意が成立した。だが、数カ月後の70年12月、突然、中国が新華社、続いて人民日報の評論員論文の形で、「東シナ海は中国の海であり、東シナ海の石油資源は中国の資源である」と主張し、特に日本に対し、「日本はまた中国の資源を略奪するのか。これは軍国主義ではないか」と激しく非難攻撃した。この恫喝(どうかつ)で共同開発計画は吹っ飛んでしまう。
 脅しは効果十分だった。以後、日本は、東シナ海の日本側海域での中国の活動に対しても、警告するだけで排除できないという状況が生まれている。最近では、中国は奄美大島に近い海域での調査も行い、日本側の中止警告を「ここは中国の海だ」と無視して調査を続けるようになっている。
 ここに至った背景には、さまざまな問題がある。例えば、80年代に入り、トウ小平の「改革開放」が実際に滑り出すや、「トウ小平は毛沢東と違う」と礼賛した人たちや、そうしないまでも、経済成長を遂げれば中国は「普通の国になる」と期待する人たちが現れた。そして、日本政府は気前よく、低利で長期の多額の政府開発援助(ODA)を提供、中国は日本を上回る高度経済成長を遂げた。

 ≪右手でビンタ、左手で要求≫
 筆者は50年前に大学院で中国研究を始めたとき、指導教授から、「中国人は相手より優位に立ったとき、嵩(かさ)にかかってくることがある。気をつけるように」、別の教授から「中国人は右手で人の横面をひっぱたきながら左手を出して金や物を要求することがある。よく覚えておくように」と言われたことがある。その時はまさかと思ったが、今回、拘束した中国船船長を帰国させたところ、中国側が「謝罪と賠償」を要求してきたあたりは、まさに、2人の教授の指摘した通りではないか。
 強大化してきた中国を無視することはもはやできない。何か起きたら慌てふためいて対応するのではなく、中国の過去の動向をよく分析して、対症療法でなく、戦略的に対応する必要がある。

    平松茂雄

   ※産経新聞「12月1日」から転載しました。

持ちつ持たれつ中朝「悪の枢軸」 古田博司

2010-11-30 | Weblog
 北朝鮮が23日、韓国・延坪(ヨンピョン)島に砲撃を加え、軍人2人と民間人2人を爆殺せしめた。朝鮮戦争以来の物理的攻撃である。暴挙だと、誰もが怒る。しかし、韓国は本格的な報復攻撃はできない。中国漁船による海保巡視船への体当たり攻撃で露呈した日本側対応と同じである。東アジアには核保有の均衡が存在しないからである。

 ◆東アジアの平和の終わり
 両核保有国は、平時を準戦時状態ととらえ、核を潜勢力として非保有国を脅す。小規模戦闘も辞さない構えで、ボディーブローのように相手を撃ち、しだいに無力化させていくのである。これを「核抑止力攻撃」と仮に呼ぶ。今年3月の韓国哨戒艦撃沈事件以来、こうした攻撃が常態化しつつある。つまり、東アジアにおいては、平和はすでに終わったのである。
 では、日韓にも核を持たせてしまえばよいではないか、というのは米リアリストの学者たちだ。そうはいかない。日本が軍事大国になることを何より恐れているのは米国である。日本が自前で核を持つのは、ハワイまで米防衛線が後退したときでしかないと、カーター元米政権で大統領補佐官(国家安全保障問題)を務めたブレジンスキー氏は言ったことがある。
 私は2007年3月16日付の本欄で、北が寧辺(ニョンビョン)の核施設を手放さないことを予言しておいた。寧辺の核、泰川の電力、亀城の機材、三位一体のこれ以上の立地はあり得ない。09年5月8日付の本欄では、北が08年3月以来、火力発電所を重油稼働に切り替え、水力発電所群が増設されている、と書いた。これらはすべてウラン濃縮に利用された電力で、重油と機材は中国の援助によるものだ。11月22日に報じられた寧辺のウラン濃縮核施設は、その成果である。
 国連安全保障理事会がいくら制裁を決議しようと、中朝国境の物資の流れは止められない。原油パイプラインも中国丹東市から北の新義州市まで伸びている。制裁決議に中国が賛成したとしても、現実は同じなのだ。中国は北を援助し、国境の町は中国製品であふれる。平壌の女性は中国製の口紅で化粧し、元山の女性は中国製の中古自転車で寒風を切って走る。

 ◆助け、裏切り、恨まずの関係
 中朝は助け合うべき地政学的位置にあり、歴史上もそうだった。豊臣秀吉の朝鮮の役では明軍が南下したが、朝鮮の碧蹄館付近で日本軍に撃破され、李朝を捨て和睦に入った。満洲のヌルハチの時には、李朝が援軍を出したが、サルフの戦いで満洲軍に降(くだ)り明を見限った。朝鮮戦争時は、中国義勇軍が故金日成氏(後の国家主席)を助け、手の空いた彼は政敵粛清にいそしんだ。「助け、裏切り、恨まず」の関係は今日も続く。
 この10月25日、中国支援軍朝鮮戦争参戦60周年記念大会が平壌で行われ、金正日総書記は中国の軍事代表団と接見、翌26日には党中央委員会、中央軍事委員会の幹部たちを引き連れて檜倉郡にある中国人民支援軍烈士廟を訪れ、戦死した故毛沢東主席の息子、故毛岸英氏の銅像に献花した。ここには09年10月、莫大(ばくだい)な支援を手土産に温家宝首相も訪れ、有事には安全保障支援を行う意思を示した。北が2度目の核実験を行って、同年6月に国連安保理で制裁決議が採択された直後のことである。
 記念大会にも廟献花にも、10月10日の党創建65周年閲兵式で初めて公式に姿を現した、金正日氏の三男、金正恩(ジョンウン)党軍事委員会副委員長が同行している。高麗人参で太らせ、故金日成似に整形させたというのは韓国人一般の推測だが、そこまで外見的に追いつめられなければならないほど、27歳といわれる同氏は若くて初(うぶ)な姿を労働新聞紙上にさらしていた。

 ◆金正日登場時も破壊活動頻発
 1980年代に金正日氏が後継者として登場したとき、北は国際的にさまざまな破壊工作を繰りかえし、国内的には氏が軍事的英才だと煽(あお)っていた。今回もその路線だとすれば、今後、さらに大きな破壊活動を企図しなければ3代目のカリスマ継承は難しかろう。
 2000年代初め、まだ日朝航路があったころ、北の地方ツアーに参加した。北は山がちで、共同農場を開こうにも平地が足らず、段々畑を耕していた。しかし、インカ帝国よりも稚拙だった。石垣を作らなかったために、山は雨で崩れ、土砂は川に流れ込んで中州を作った。これが毎年8月ごろ、北を襲い、同じ川筋で韓国に迷惑をかける洪水の正体である。
 共同農場には崩れ落ちた岩がごろごろしていた。北には鉱物資源が豊富に眠ると言う者がいる。だが、雨水の落盤で危険な炭鉱からさらに下の層をどうやって掘るというのか。南北統一後を見越して投資を煽る者もいる。だが、あのように荒廃した大地を整備するには数兆ドルもかかることだろう。
 要するに、北は中国のたかり国家となり、中国は核抑止力攻撃のパートナーとして北朝鮮を利用しつつ、膨張政策を続けることだろう。独裁と権を共通価値とする彼らが日米からの安全保障を武力で引き出そうとする限り、この性悪説の世界に終わりはない。

  ※産経新聞「11月30日」から引用しました。

【疑惑の濁流】巨額国費は「寿司」「リゾート」に消えた…

2010-11-29 | Weblog
対中資源戦略にも暗雲漂う“赤字決算”汚職

 石油探査に投じられた巨額の国費の一部は飲食代や旅行代へと消えていた。独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」元職員、平山裕章容疑者(41)による収賄事件の舞台となったのは、資源獲得競争をめぐる対中戦略の要として導入された3次元探査船。だが、平山容疑者は“素人”同然の乗務員らを優先採用する見返りに、業者側から約3千万円のわいろや度重なる飲食接待を受けていた。エネルギー政策を揺るがす不祥事は、ライバル・中国に足元を見られる格好の材料ともなりかねない。(伊藤弘一郎、大泉晋之助)

長崎に北海道、新潟…出張先で深まった癒着
 平成19年末、長崎・佐世保港に一隻の船が入港した。全長約86メートル、総トン数約1万トン。船の後部からは何本ものケーブルが海中に伸びている。日本が周辺海域の石油や天然ガス資源の埋蔵状況を調査するため、ノルウェーの大手地質調査会社から約235億円で買い取った3次元探査船「資源」だ。
 20年2月に運航を開始した探査船はケーブルから海底に向けて音波を出し、反射波を解析することによって地層構造を探ることができるもの。当時、周辺海域の詳しいデータはほとんどなく、資源開発の可能性に大きな期待が寄せられた。
 入港する探査船を見つめる関係者の中に、平山容疑者と人材派遣会社社長、岩松一夫容疑者(62)=贈賄容疑で逮捕=の姿もあった。資源エネルギー庁が運航管理を機構に委託、機構は民間の共同企業体(JV)に再委託しており、機構の探査船チームのサブリーダーである平山容疑者と、JV所長だった岩松容疑者が同席していたのだ。
 2人は佐世保港のほか、北海道や新潟など、探査船の寄港先への出張で同行。以降、親交を深め、委託元と委託先という一線を大きく逸脱することになる。

利益提供の総額5千万円…論文提出で偽装工作
 「機構の待遇が悪い。金もうけがしたい」
 20年初め、平山容疑者が岩松容疑者にこんな相談を持ち掛けた。平山容疑者の覚えがよければ、探査船への調査員派遣で有利になるというもくろみがあった岩松容疑者の反応は素早かった。
 岩松容疑者はペーパー会社を通じ、海洋調査業務を発注したように装うわいろの送金システムを提案。平山容疑者は助言に従い、同年3月以降、都内や神奈川県に妻らを代表取締役とする3つのペーパー会社を設立した。これがわいろを受け取る“受け皿”会社となった。
 ちなみに海洋調査業務の実態は、平山容疑者が自分の論文をペーパー会社に提出させただけ。岩松容疑者からの入金を税務申告する偽装工作も行っていた。
 21年10月までの間、計16回にわたって送金されたわいろの総額は計約3千万円。このほか平山容疑者は、所有するマンションの賃料約400万円▽出張先の寿司屋や居酒屋での接待数十万円▽退職後の「謝礼金」約1千万円-など、さらに2千万円近い利益提供を受けていた。受け取った金は、平山容疑者のリゾート施設会員権購入費や沖縄への旅行費へと消えていった。
“素人”も採用、英会話学校で日給数万円
 岩松容疑者が湯水のごとく金銭提供を続けた背景には、当然、わいろ総額を補って余りあるメリットがあった。平山容疑者は探査船調査員の公募採用の総括責任者で、「自分の裁量で何でも決めることができた」(平山容疑者)ためだ。
 平山容疑者は表向き「公募」の形を取りながら、岩松容疑者が経営する人材派遣会社から優先的に調査員を採用。その数は20年3月以降、計18人に上った。中には大学を卒業したばかりで調査員として必要な語学力が足りない“素人”も含まれ、英会話学校に通うだけの採用者もいた。しかし、より高いレベルの技術者と同様、機構から1日数万円の日給が支払われていたという。
 機構から岩松容疑者側に支払われた人件費など総額約3億2千万円のうち、調査員への給与分を除いた岩松容疑者側の粗利は1億数千万円。事実上、粗利の一部が平山容疑者への「見返り」として総額5千万円にも及ぶ利益提供に結びついたことになる。
 「高額な人件費とずさんな採用システムが汚職を産む土壌になった。資源探査が国家事業なのは分かるが、運営管理がお粗末すぎる」
 捜査関係者はそう吐き捨てた。

主導権握る中国、足元みられる日本
 そもそもこの3次元探査船は、東シナ海の海底ガス油田で隣国・中国に大きく水をあけられていたことが導入の契機となっている。
 中国は昭和50年代に東シナ海の石油探査をスタート。平成16年には排他的経済水域(EEZ)の境界線である「日中中間線」付近のガス油田開発が発覚し、日中間で問題化した経緯がある。
 資源競争の激化を受けた日本は重い腰を上げ、20年にようやく3次元探査船を導入するが、当時、中国はすでに自前の探査船12隻を保有。その後も一部地域では両国の共同開発や共同出資で合意したはずが、今年に入って中国側の単独掘削の疑いが浮上するなど、中国側に主導権を握られているのが現状だ。
 尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を受け、中国は対日レアアース(希土類)輸出制限など、資源を武器とした圧力を強めている。こうした時代背景の中で起きた今回の汚職事件に、機構を所管する経済産業省関係者からも「エネルギー政策の根幹部分での不祥事は中国に足元を見られるいい材料だ。今後の業務にも支障が出ないといいが…」と懸念の声が上がる。
 探査船は30年度までに、日本のEEZ内の海底6万2千平方キロの調査を行う予定。だが、現在までに石油埋蔵発見に直接、結びつく調査結果は出ていないという。

 ※産経新聞「11月29日」から転載しました。

砲撃事件起こした金正日氏は逆切れストーカー 矢板明夫

2010-11-28 | Weblog
中国ネットウオッチ

 砲撃事件から間もない24日、中朝国境を流れる鴨緑江を船で渡る北朝鮮のカップル(ロイター) 23日に起きた北朝鮮による韓国、延坪島砲撃事件について、中国共産党の機関紙人民日報が運営する人民ネットの人気掲示板、強国論壇や軍事愛好家系サイト「西陸軍網」などで中国人ユーザーの議論が沸騰している。「砲撃は勇気ある行動」と北朝鮮を英雄視する意見が多数を占める一方、「北東アジア安定を乱す無謀な行為」という冷静な意見もあった。「金正日氏は米国との国交樹立や米朝対話を求めたのに拒否され続けたため、ついに逆切れして韓国を攻撃した。まるでたちの悪いストーカーだ」といった北朝鮮の指導者を酷評する声もあった。
 中国の新聞やテレビなど官製メディアは同砲撃事件について「南北双方ともに相手側が先に手を出したと主張した」という形で伝え、北朝鮮による砲撃が先で、それを受けて韓国側が反撃した事実関係をあいまいにした。北朝鮮と韓国がともに責任があるような印象を読者に与えようとし、北朝鮮を暗に擁護しているが、多くのネットユーザーは香港紙の電子版や各種サイトを通じて真相をすでに知っているようだ。
 「メディアの報道ぶりをみれば、中国政府は(北)朝鮮を支持していることは明白だ」「日米韓はいま全部中国を敵視しているから、戦争が始まった場合、中国は(北)朝鮮側に着かざるを得ない」といった分析の声があった。
 「小さくて貧乏な国だけど、世界のいかなる強権に対しても屈しない勇気は素晴らしい」「(北)朝鮮は大砲で自国の主権と尊厳を守った」といった北朝鮮をたたえる意見が多く、「中国は可能な限り(北)朝鮮に石油や物資を支援すべきだ」と主張する意見が多かった。
 「領土問題で中国政府も(北)朝鮮の毅然(きぜん)とした態度を見習うべきだ」「釣魚島(沖縄・尖閣諸島の中国名)に軍艦を出せ!」などと、9月に尖閣諸島周辺で起きた中国漁船衝突事件に絡めて、中国政府の対外政策を「弱腰だ」と批判する意見も多く寄せられた。
 若い男性ユーザーによるとみられる以上のような勇ましい書き込みが半数以上を占めているのに対し、「(北)朝鮮は中国を戦争地獄への道連れにしようとしているから、気をつけなければ」「北朝鮮と友達になってからもう60年、迷惑をかけられっぱなしで、いいことは一つもなかった」といった冷ややかな意見もあった。
 「(北)朝鮮の狙いは経済援助だ。最近、みんなに相手にされなくなったから、暴れて注意を引こうとしているだけだ。何かモノをやればしばらく静かになるよ」との声もあったほか、「2008年の北京五輪開幕の日に、グルジアとロシアの武力衝突が始まった。今回は広州アジア大会の最中に、(北)朝鮮と韓国が砲撃戦をやり始めた。世界中のみんなは中国をばかにしているのか」という自称、スポーツファンの書き込みもあった。

   矢板明夫

   ※産経新聞「11月28日」から転載しました。

国民の我慢も限界にきた民主党の統治能力

2010-11-20 | Weblog
 民主党政権の統治能力の欠如がまた露呈し、政権運営がダッチロール状態になってきた。
 菅直人首相は19日の閣僚懇談会で「緊張感を持って取り組むように」と閣僚たちに指示したが、タガがはずれている状況をつくり出しているのは、政権を担当する能力が欠落しているためにほかならない。
 問題ある閣僚の続出が、そのことを端的に示している。もはや弥縫(びほう)策では、この政権の行き詰まりを打破することは望めない。国民の我慢が限界にきていることを為政者は深く認識すべきだ。
 国会の焦点は、答弁を軽視した地元の会合での発言が問題視され、閣僚の資質が問われている柳田稔法相の進退問題だ。
 自民党は22日に衆院に不信任決議案、参院に問責決議案を提出するが、野党が多数の参院では問責が可決される可能性がある。
 政府・与党は当初、法相の進退は問わないと判断、柳田氏も参院予算委員会で発言を陳謝したことから、「検察改革も大きな責務。成し遂げなければならない」と辞任しない考えを示していた。
 だが、その後、補正予算案の成立を確実にするためには、問責決議案の動きに合わせて、柳田氏を更迭することは避けられないとの判断へと転換した。
 当初の擁護姿勢は、柳田氏が辞任に追い込まれれば、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件やビデオ流出対応をめぐり、衆院で不信任決議案を出された仙谷由人官房長官や馬淵澄夫国土交通相らに対する問責決議案提出に発展しかねず、それを防ぐためだったという。
 その場しのぎの対応が繰り返されている。こうしたやり方を菅政権が取り続けていることで求心力を失っている。衝突事件で公務執行妨害の容疑で逮捕した中国人船長を釈放したことや、胡錦濤国家主席の来日とアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出席を最優先させた対中姿勢も同じ文脈といえる。
 財政再建や社会保障など与野党で協議して解決すべき課題は少なくない。早急に取り組まなければ危機を脱することができない。にもかかわらず、先送り手法しかとらないのは極めて残念だ。
 民主党政権には無理なのであれば、国民の利益につながる政策を実現するため、国民の信を問い直すしかあるまい。

※産経新聞「11月20日」から転載