偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏734安波山(宮城)大杉神社

2017年06月02日 | 登山

安波山(あんばさん) 大杉神社(おおすぎじんじゃ)

【データ】安波山 239メートル▼最寄駅 JR気仙沼線・気仙沼駅(気仙沼線は一部バス運行中)▼登山口 宮城県気仙沼市裏の安波山公園駐車場▼石仏 安波山山頂下、地図の赤丸印。青丸は磨崖仏▼地図は国土地理ホームページより

【案内】安波山は大杉神社を奉る山。大杉神社は茨城県桜川村阿波(現稲敷市)が本社で、古くから航海の守護神として、近世には疫病除けの神としても信仰されてきた。霞ケ浦の近くではあるが、内陸部の神社が航海の神とされたのは、この地がかつては内海に突き出た半島だったことに起因する。その半島の名が安婆島、境内にあった大杉が航行の目印になったことから大杉神社になり、あんば様、大杉神社として利根川流域から東北の太平洋岸に広まった。別当は安穏寺で、文治年間(1185~1190)に多くの奇跡を起こした常陸坊海存の容姿から、天狗信仰へ発展したという(注1)。
 上の写真は茨城県大杉神社の天狗。


 気仙沼の安波山は公園になっていて、街から中腹まで車道が通じている。狛犬代わりの阿吽の龍の間が山頂への道。トイレや展望台が続いた先で、右へ「奉待庚申己巳供養 元文三年戊巳(1738)」銘の磨崖仏の道を分ける。
 さらに上で大杉神社への道が右に分かれる。細い道を少したどると大杉神社。新築されてさほど経っていない社殿だが、先の東日本大震災以来手つかずのままなのだろう、内部は荒れていた。それでも三方に置かれた「海上安全大漁満足 安波大杉神社御」の御札、壁に掛けられた本殿新築協賛芳名板から、この神社が大勢に人たちにより信仰されていることがわかる。
(注1)大杉神社縁起
下の写真は山頂。

【独り言】シンガーソングライター・紅晴美の歌に「安波さまの唄」があります。リリースは平成25年。その出だしは「浜の街では男衆は漁に出て、女衆は安波さま海の神にいのるのだ……」。この歌をラジオで聴いたのは数年前。いまどきこういう唄を作るのはどんな人なのだろうと思っていました。後に福島県いわき市の中年の女性と知り、納得しました。茨城の大杉神社の信仰は〝あんば様〟として、太平洋岸の福島から三陸まで広がって、勧請先でこういう唄が生まれるのは遅きに失する感はありますが、本人は先に東日本大震災で落ち込んでいる人たちに元気を伝えるための唄であり、当然だったのです。
 小島俊一氏の『陸中海岸の石仏』(注2)の「海の信仰」の項には、岩手県宮古市の大杉神社は「享保年間(1716~1736)鍬ヶ崎の五十集屋藤井家が、銚子アンバ様を勧請と伝え、船でおいでになった。お神体は大スギまたは、網の浮キのアバで、漁業神として拝む」とあります。そして7月の例祭には〝あんば踊唄〟「あんば様からふきくる風は、イワシとれとれ松の風」で盛り上がったそうで、大杉信仰は勧請先で唄や踊りになって、地元のしっかり根付いていった様子がわかります。
(注2)小島俊一著『陸中海岸の石仏』昭和60年、熊谷印刷出版部


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