偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏番外 飯岡・石尊山(栃木)姥神

2019年10月28日 | 登山

飯岡・石尊山(せきそんさん) 姥神(うばがみ)

【データ】 飯岡・石尊山 480メートル▼最寄駅 JR東北本線・矢板駅▼登山口 栃木県塩谷町飯岡の星野神社、地図の黒丸印▼石仏 石尊山の中腹、地図の赤丸印▼地図は国土地理院ホームページより

【独り言】 丹沢の大山石尊大権現を移し祀ったという飯岡石尊の不動明王や石祠は、このブログの石仏879飯岡・石尊山で案内しました。今回はその続きです。

 岩混じりの尾根道を登ると、初めに出会うのが姥神です。岩の上のポツンと座っているこの石像を見たとき、この山は出羽三山を勧請した山と直感しました。北関東には出羽三山を移し祀って、山中に出羽三山羽黒山の本地仏観音、月山の阿弥陀、湯殿山の大日石仏を祀った山をいくつも見てきての直感でした。出羽三山についてくるように姥神も祀られてきました。これらの姥神の共通点は豊満であり乳房を出した坐像です。飯岡石尊の像も穏やかな顔で、小さいですが乳房を出しています。
 しかし、この山に肝心の羽黒山・月山・湯殿山が祀られた形跡がないのです。姥神の背面を見ますと「十九夜講中」とありました。
 十九夜講は十九の月齢の夜に集まって念仏・歓談などをする月待行事の組織。主に女性の講でした。主尊は如意輪観音。その様子を『日本石仏辞典』(庚申講話会、昭和55年、雄山閣出版)から抜粋します。「安産を祈り、中には女人が死後血の池地獄の苦を逃れる祈願のもられたものもある。勤行が終ると共同飲食や雑談になる。女人の講なので安産や育児の祈願が多く、また婦人の病の祈願も行われる」。
 また同書には『下野の野仏』(昭和48年、栃木県教育委員会)からの引用として、「栃木県では二十三夜塔六百二基に対し、十九夜塔は実に千五百九十九基に達しており」とあるように、飯岡石尊山がある塩谷町あたりも十九夜塔が多いところです。つまり女性による十九夜の月待講が多いところということになります。その講がどうして姥神を立てたのでしょうか。そのヒントは出羽三山を移し祀り、姥神もある北関東の山にあります。茨城県日立市の御岩山にあった姥神は、乳の出ない人が参ると出るようになる、という伝承がありました。栃木県日光市の男体山の姥神は、子育ての神としての信仰がありました。姥神の役目が子育てになっているのです。
 各地の山にある姥神をみますと、その役目は禊場の守り、女人救済などいろいろです。それに姥神のルーツは必ずしも出羽三山にとどまりません。出羽三山の姥神の先には越中立山の姥神、さらに三途の川の奪衣婆、地獄の血の池などにつながっているからです。
 栃木県北部は出羽三山信仰が盛んな土地柄です。塩谷町近くの宇都宮市今里町には、出羽三山を勧請した羽黒山もあります。そこで結論です。飯岡石尊山の姥神は、出羽三山信仰のなかから姥神だけを、女人救済の役目を担って取り出し祀ったもの。としておきます。

姥神についてはホームページ・偏平足の「姥神・血の池信仰」をご覧ください。

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 石仏879飯岡・石尊山(栃木)... | トップ | 石仏880鶏岳(栃木)石祠・浅... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。