偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏番外 青崩峠(静岡)早太郎

2019年06月07日 | 登山

青崩峠(あおくずれとうげ) 早太郎(はやたろう)

【データ】 青崩峠 1082メートル▼最寄駅 JR飯田線・水窪駅▼登山口 静岡県浜松市天竜区水窪町奥領家の池島集落▼石仏 池島から青崩峠への道、地図の赤丸印▼地図は国土地理院ホームページより

 神仏や精霊を頼みとして生活してきたかつての山村。池島集落から青崩峠への道でその姿をとどめた石造物に出会いましたので紹介します。



【独り言1】 鯖地蔵(さばじぞう) 初めに出会ったのが「さば地蔵」の案内がある地蔵菩薩です。右手に杖、左手に小さな魚を握っています。ですが、これは新しいもの。本物は川の向こう岸の大岩の基部にある木祠内に納められた三体のなかの中央の石仏です。こちらは大きな魚を両手で抱えています。弘法大師の鯖大師を思い出させる石仏です。倒れていた案内には「やまめ地蔵」として「この地蔵には、鯖地蔵物語とやまめ地蔵物語の二つの言い伝えがある」とありました。一つは釣られたヤマメの祟りを怖れて供養したというものでした。自然の恵みはほどほどに収穫しろという戒めなのでしょうか。やまめ地蔵は行者風、残る一体は合掌する菩薩形、もう一体は不明です。




【独り言2】 足神(あしがみ) 足神神社は北条時頼が諸国行脚の途中、痛めた足を治療して全快させた池島の庄屋を祀った神社と案内されています。時頼は鎌倉幕府を安定させた立役者。晩年に各地を廻国したという伝承がありますが、35歳の短命でした。時頼伝承の最たるものが〝いざ鎌倉〟の「鉢の木」でした。ところが時頼が諸国を廻国したという記録はないそうです。しかし伝承も歴史の一つという考えた方もありますから、少なくとも伝承の元になった何か、たとえば人物がかかわったことも考えられます。とすれば池島の足神にはどのような人物がかかわったのでしょうか。




【独り言3】 早太郎(はやたろう) 信州駒ヶ根市光前寺の早太郎は、いけにえの娘を要求する遠州磐田市見付の妖怪を退治した犬で、悉平(しっぺい)太郎ともいわれています。悉平は疾風がなまった呼び方らしいです。妖怪の泣き所をみつけ、犬を借りてきたのは旅の僧でした。しかし妖怪を退治した早太郎も傷を負い死んでしまいます。死に場所は磐田市の見付、帰る途中の青崩峠道のこの山中、そして帰った光前寺の三か所で、それぞれに早太郎が祀られています。青崩峠道の早太郎は木祠のなかの小さな石像でした。旅の僧はどこでも困りごとを解決してくれるありがたい存在だったのでしょう。その半面、願いを断ると悪さをするのも旅の僧です。




【独り言4】 宗吾大神(そうごおおかみ) 木地屋の墓の脇にあるのが「宗吾大神(そうごおおかみ)」です。説明はありませんが、下総佐倉藩内の義民・佐倉惣五郎を神格化した石塔のようです。「大正九年」の造立です。この地にどうして宗吾の石塔があるのでしょうか。宗吾に何を願ったのでしょうか。飯田や遠州には宗吾を祀る神社や石塔があるという情報もあります。歌舞伎や講談として広まったといわれる義民・宗五郎、祖父が買った本『講談全集』(昭和4年)に「佐倉宗五郎」がありました。

 


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