真弓山(まゆみやま) 三十番神(さんじゅうばんしん)
【データ】真弓山 219メートル▼25000地図 日立太田▼最寄駅 JR常磐線・大甕駅▼登山口 茨城県常陸太田市真弓町▼石仏 山頂にある真弓神社境内の山門手前
【案内】真弓町に立つ大きな案内=写真左=に導かれて真弓山の表参道を辿ると、山頂近くの真弓神社山門の手前に神明を刻んだ石塔がいくつかころがっている。その中の一つだけ立っている石塔には「天照大皇太神三十番神」とあった。三十番神である。三十番神は1ヶ月30日を交代で「法華経」を守護する日本の神々。『日本仏教事典』(2004 年、吉川弘文館)に三十番神は「平安時代前期、円仁が法華経を書写して比叡山の北塔(横川)に首楞厳院を建立して納め、経典ならびに堂の守護として神々を勧請したことに始まる」とある。また、はじめ日本各地の神から選んだ十二番神が成立し、「延久5年(1073)に首楞厳院の良正により十八神を追加して三十番神が完成した」とある。十八には比叡山を中心とした近江路の神々を多く選ばれているのが特徴である。真弓山の三十番神は「春日大明神」「二日八幡大菩薩」「三日加茂明神」「八日比叡山大権現」「十日聖真子権現」など一部しか見当たらない。残りの番神はこの境内のどこかにあるのか。それに日にちと神名が一般にいわれているものと違っている点が気になる。『望月仏教大辞典』には「三十番神には其の種類甚だ多く、総じて十種あり」とし、それによると真弓のものは「妙法経守護」の三十番神となる。後に日蓮宗は三十番神を「法華経」の守護として取り入れ、それは今日まで続いている。真弓山は古くは比叡山天台宗の影響が強かった山。そのような関係から三十番神の石塔が建立されたのかもしれない。
【独り言】三十番神の石造物は山でも里でも珍しいものです。真弓山では一部しか見つかませんでしたので、その神々を江戸時代の仏像図版集「佛像図彙」から紹介しておきます。
朔日熱田大明神 2日諏訪大明神 3日広田大明神
4日気比大明神 5日気多大明神 6日鹿島大明神
7日北野天神 8日江文大明神 9日貴船大明神
10日天照皇太神 11日八幡大菩薩 12日加茂大明神
13日松尾大明神 14日大原大明神 15日春日大明神
16日平野大明神 17日大比叡権現 18日小比叡権現
19日聖真子権現 20日客人権現 21日八王子権現
22日稲荷大明神 23日住吉大明神 24日祇園大明神
25日赤山大明神 26日建部大明神 27日三上大明神
28日兵主大明神 29日苗鹿大明神 30日吉備大明神