偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏614扇山(山梨)双体像

2015年10月19日 | 登山

扇山(おおぎやま) 双体像(そうたいぞう)

【データ】扇山 1137メートル▼最寄駅 中央本線・鳥沢駅▼登山口 山梨県大月市富浜町の鳥沢駅▼石仏 扇山の東南、新田集落北の山中。地図の赤丸印。青丸は独り言で案内した石仏▼地図は国土地理院ホームページより


【案内】扇山の登山口・梨ノ木平へは、休日に1本だけ出るバスで入った(4~11月の土・休日のみ運行、ただし8月は運休。バス停は国道に出た左手)。梨ノ木平に立つ観音石仏=上写真=は扇山で命をおとした人の供養と山に入る人の安全を祈願して、平成5年に立てられたもの、と案内にある。



 ここで案内する双体像は扇山から尾根続きの、古くは萩ノ丸と呼ばれたピークの中腹にある石仏。新田集落の北になる山の中腹である。新田は甲州街道の脇本陣で、村を見下ろす高台に丹勢神社が建つ。そこからさらに登った山の中腹に、今は解体されて小さな木祠になったもう一つの神社があり、境内脇に双体像が立つ。脇に「文化九甲(1812)上大野入合」の銘がある。大野はいま大野貯水池がある一帯の地名。入合は、ある地域の住民が共同利用する権利を持つ山や原野の一部地域。この双体像は大野でも上大野集落の入合地を示すために立てられたものである。その姿は道祖神風であるが、この扇山がある上野原や大月一帯の道祖神は文字塔と丸石が混在し、石棒(男根石)と双体像が若干ある土地柄。したがってこの双体像を道祖神としてもいいのだが、この地は道祖神が祀られる場所でもないし、地元の確認がとれなかったので、双体像としておく。高さ40センチ。すべてが風化して銘もやっと読める状態。

【独り言】新田から犬目、恋塚、山谷と続く在所はかつての甲州街道沿いの集落。その道端にはいろいろな石仏が立っていましたので、珍しいものを三体紹介します。

 まず犬目の先の白馬不動入り口には、狐に乗る不動明王があります。狐に乗る烏天狗は飯縄権現、秋葉権現ですが、狐に乗る不動は記憶にありません。この石仏の台座に銘があり、江戸中橋の山万という富士講が立てたもとわかります。中橋は東京駅八重洲口の東にあった地名です。

 恋塚の山住神社で見たのは、地蔵菩薩を本尊とした「天和三癸亥(1683)」銘の庚申塔。青面金剛が庚申塔の本尊として登場するのは江戸時代の寛文期(1661~)ごろからで、それ以前は地蔵をはじめさまざまな仏が本尊になっていました。

 山谷に下り手前の土手の上に集められた石仏群のなかにあるのが石祠型墓石。その中に双体像が祀られていたので、恐れながら屋根を外して取りだして写したのが3枚目の写真です。同型のものは戦国時代末期から江戸時代初期に、関東と静岡・山梨・長野で盛んに造られました。これを調査し祠内石仏としてまとめたのが、拙著『東国里山の石神・石仏系譜』の「祠内石仏は道祖神の原型か」です。
 追伸ですが、石祠の屋根の取り外しは所有者・管理者に断ってから行っています。ただ重いのであまりお勧めできません。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 石仏613高松山(神奈川)第六天 | トップ | 石仏615滝富士(福島)石祠・... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。