谷地山(やちやま) 四国八十八霊場本尊(れいじょうほんぞん)
【データ】 谷地山 180メートル(国土地理院地図に山名無し。浅虫温泉の南西、浅虫トンネル上の180.6三角点)▼最寄駅 青い森鉄道・浅虫温泉駅▼登山口 青森県青森市浅虫字山下の陸奥護国寺▼石仏 護国寺の裏山一帯に点在、地図の赤丸印▼地図は国土地理院ホームページより=下写真は弘法大師=
【案内】 浅虫温泉の裏山に建つ陸奥護国寺は真言宗の寺。寺の案内によると、創建は不明だが、津軽家の高野山菩提所の寺の縁で津軽に別院として建てられたが、僧の派遣が滞り廃寺に。これを大正末青森に再興したのは尼僧堤隆興だった。浅虫温泉の現在地に移転したのは昭和10年、このときに四国八十八霊場の本尊石仏も造立されたと伝えている。霊場本尊は本堂の裏山の尾根を大きくめぐるように置かれている。いまでこそ歩きやすい周回コースになっているが、石仏運搬のころは難工事だったようで、石仏は女性の髪の毛で編んだ毛綱で運ばれたという。
石仏はどれも新しく、表情が明るい。本尊の高さは110センチ、二重の台座の上に寺院銘と尊銘、下に寄進者の銘が入る。ぶら下がる白い笊は賽銭入れ。
【独り言】 上の写真、あまり見たくない光景です。すべての石仏に白い笊がひもで固定されていました。お賽銭は台座に直接置いた方がご利益ありそうですが……。
弘法大師・空海の四国八十八霊場の本尊は薬師如来が多く、阿弥陀や大日の如来もあります。観音では千手や十一面です。移し八十八霊場の石仏もこれを忠実に再現しています。同じような石仏が並びますから、これを一尊ずつカメラに写しながら登ると、正直あきてきます。そんなとき気を紛らわせてくれるのが、ちょっと珍しい仏菩薩です。四国霊場の本尊では9番法輪寺の寝釈迦、20番鶴林寺の地蔵菩薩、63番吉祥寺の毘沙門天、70番本山寺の馬頭観音などが気分転換になります。寝釈迦は涅槃に入った場所にあった沙羅双樹も彫ってある石仏もありますが、この谷地山の涅槃物にはありませんでした。鶴林寺の地蔵には鶴が彫られていることがありますが、これもありませんでした。谷地山の石仏は押しなべて平凡です。
空海と縁の深い虚空蔵菩薩も三体あります。空海は記憶力を倍増させる虚空蔵求聞持法の修行を行い、四国の室戸岬の洞窟で修業中に習得しました。当時仏教経典を覚えるためにはく求聞持法は必須の修行でした。その場所は南に空が見える洞窟が最適とされていました。室戸岬の洞窟もそのような場所です。