テニスと読書とデッサンと!

夏の夜の出来事。

ちょっと前の夜のことだけど

ぼくはお父さんと一緒に

寝室でユーレイのテレビをみていたんだ。

すっごくこわかったけど

中指と薬指のあいだから

のぞくように見ていると、お父さんが

「アッハッハ!んなことありえない。

なんだジュンザブロウ、こわいのか?

ただの作り話さ。

さぁ、テレビを消してもう寝なさい。

夜中にオシッコ、行けなくなるぞ」

なーんて言うからテレビのスイッチを消して

しかたなくふとんの中にもぐりこんだ。

 

なんだ、あんなにこわがってたのに、

もう寝息を立ててる。まだまだ子どもだな。

いや待てよ、タヌキ寝入りかもしれない。

どーれ、ためしてみるか。

「ジュンザブロウがやっと寝てくれたから

冷蔵庫からよーく冷えたマンゴーを出して、と。

なんだなんだ?ものすごく甘い匂いがするぞー・・・」

どうだ?目をさますか~?ん、どうやら寝たみたいだぞ。

えーと、テレビのリモコンはどこだ?

あったあった、パチッ!

 

あー!お父さんだけ、ずるーい。

よーし!ぼくも気づかれないように

お父さんの後ろからこっそりみちゃおうっと。

がめんには細い吊り橋が映ってる。

ダメダメ!そこをわたっちゃダメ~!

きっと出てくるよ、まちがいないよ!

心臓の音がお父さんの耳にとどくくらい

バクバクしてる。

 

おー、ついにわたったか。おや?あれはなんだ?

祠(ほこら)か、うすきみわるいなぁ。

懐中電灯があと3つくらい欲しいところだぞ。

えっ!いまのはなに?

 

ゥギャー!!!!

 

ぼくとお父さんは同時にさけび声をあげて

無意識に抱き合ってしまった。

 

「なんだジュンザブロウ、まだ起きていたのか」

「だって今お父さんだってみてたじゃない。

ぼくだってみたいんだから」

「まったく!これは作り話だってさっき言っただろ?」

「でもお父さんもこわがっていたよ」

「ちがうちがう、お父さんはなぁ・・・

そのぉ、お前がホントに寝たかどうか

チェックするためにテレビをつけてみたら

急にお前が抱きついてきたんだ」

「うっそだー!抱きついてきたのは

お父さんの方からじゃない」

「バカを言うな!お父さんはオトナだぞ。

ユーレイごときで・・・」

「あっ、お父さん、ほらあそこ!」

お父さんがテレビの方をふり返ると・・・

 

「ぅわー!」

 

今度もふたり同時にさけび声をあげた。

 

「ジュンザブロウ、いまのどう思う?」

「どうってあれはぜったいユーレイだよ。

日本髪をゆったむかしの女の人だった」

「やっぱりお前にもそうみえたか」

「うん!お父さん、ボクこわい」

「じゃあテレビ消して寝るとするか」

「えーっ、もうちょっとだけみようよ」

「それならお前ひとりでみてなさい。

お父さんはもう寝るぞ!」

「ダメダメ~~~~~!ボクも寝る」

テレビを消して灯りも消すと部屋はまっくら。

「お父さん、くっついて寝ようよ」

「あぁ、その方がおたがい心強いものな。

スモールライトもつけておくか」

そう言いながらお父さんは

ジュンザブロウより早く寝息を立て始めました。

ジュンザブロウはやっぱりお父さんだって

ホントはユーレイがこわいんだ、

そう思うとなんだかとってもおかしくなりました。

 

「ねぇ、お父さん、もう寝た?」

スー、スー。

お父さんの寝息が聞こえると

ジュンザブロウはもう一度テレビをつけようか

どうしようかちょっと迷いましたが

やっぱりやめてお父さんに背中をくっつけて

寝ることにしました。

まだ少し心臓がバクバクだけど、なんだか安心。

ユーレイがおそってきたらすぐに

お父さんを起こせるからね。

だけどお父さんはユーレイをやっつけられるのかなぁ。

んー、わからない。っていうか、かなりしんぱい。

あれ?なんか音がする。

えっ、足音?階段をゆっくり上って来るみたい。

ぼくは思わずナマツバをのみこんだ。

ねぇ、お父さん!だれか来るよ。お父さんってば!

ダメだ、お父さんはぐっすり寝ている。

 

「カチャ!」

 

ゆっくりと寝室のドアがひらく。

ぼくは思わず頭からふとんをかぶった。

 

”こんな時間までよふかししているような

わるい子はだ~れ~”

 

そのしわがれた女の人のような声を聞いたぼくは

寝たフリというよりおそろしさのあまり

ほとんど死んだフリをしていた。

 

そして寝室のドアしまる音がそっと聞こえ、

やがて足音がとおざかっていった。

 

「フーッ!」ぼくは短く息をはいたことまでは

なんとなくおぼえているんだけど

いつの間にかぼくは寝てしまったらしい。

 

次の朝目をさましたぼくはお母さんに

ゆうべのユーレイのことを話したら、

お母さんは声をしわがらせてこう言った。

「そのお化けの声ってこんなかんじじゃななったかい?」

 

「あっ、お母さん!」


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