テニスと読書とデッサンと!

ただの夢。




ぼくの周りににぎやかに

集まっていたものたちが

少しずつ静かに離れていく

だれもが申し合わせたように

深い森の中に入ってしまった

戻っておいでよ!

ぼくは言い知れない寂しさを感じ

何度も力の限り叫ぶのだけれど

声はことごとく土の壁に阻まれ

いたずらに虚しいシミを作るだけ

いったいあの森の中で

なにが始まっている?

ぼくも混ぜて欲しい

強くそう思ってシミのついた壁を叩く

すると離れていったものたちは

さらに森の奥へ行ってしまいそう

こんなに青い空の日

みんなあの森の中でなにしてる?

ぼくの眼はいつまでも森の中の

みんなを探し続けている


「孤独を感じているのね?」

「いや、そんなこともないんだけどね」

「ウソ!顔にちゃんと書いてあるわ」

「えっ!」

「ほら、左の眉毛の上に[僕]が、

右目のすぐ下には[は]が、

左の頬には特太ゴシックの[孤]が、

ほらほら[独]はいま右の頬から

顎のあたりにスッとずれたわ」

「僕・は・孤・独・・・それ、マジ?」 

「ええ、間違いないわ。

フレキシブルな刺青みたいよ」

「フレキシブルないれずみ?」

「タトゥーシールってことよ」

「えっ、ぼくの顔にシール?

シールが貼ってあるの?」

「そうよ、でも心配しないで。

ただのシールだから」

「ぼく、さっきマルエツに

夕飯の買い出しに行っちゃったよ」

「今ごろご近所中の評判かもね」

「どうしよう!

もうぼくこの町に住めないじゃん」

「なーんてね。ウソよ。

ちょっとからかってみただけ」

「ウソ・・・ふーっ、脅かさないでよ。

ぼく心臓弱いんだから」

「でもそう書いてあるような表情だったわ。

心の中のホントの気持ちって

うまく隠せているようでも

ふとしたことでバレてしまうものなの。

森の中なんかに入って行ってはダメよ」

「あれはただの夢だよ」

「ただの夢?」

「うん」

「ホントにホント?」

「ホントにホント!」

「寂しくない?」

「大丈夫さ」

「じゃあ歌ってみて?」

「歌うってなにをさ」

「決まってるじゃない、ピンクレディよ」

「えーっ、こんなところで?

わかったよ。それじゃ歌ってみるよ。

ペッパー警部 邪魔をしないで〜え

ペッパー警部  わたしたち

これからいいとこ〜ろ〜♪」

「それよ、それ!キャー、もうサイコー!

音程の狂いなんて気にしなくていいわよ。

ほら表情がパッと明るくなったじゃない。

もう森の中に行きたいなんてバカなこと

言い出さないわね?」

「だから、あれはただの夢だって・・・」

「じゃ、あたし帰るから」


そう言ってお姉さん肌の

ポジティブシンキングな

もうひとりのぼくは、

森の中へと消えて行った。

マジか・・・




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