
【評点】5(5段階中)
最近の東野圭吾の作品は暗いイメージがあるが、この本は面白い。
怪笑小説や毒笑小説と同様に短編集だ。
全13作品のうち、作家が主人公である物語は4つ。
このどれもが面白い。
だが、個人的にはその4作品外の「笑わない人」がいい。
・もうひとつの助走
文学賞の発表を待つ作家、寒川心五郎と編集者たちの駆引き。
皆、内心でいろんなことを思っているようである。
鬱憤電車のようで面白い。
・巨乳妄想症候群
見る女全てが巨乳に見える病気のはなし。
・インポグラ
バイアグラの逆で、飲むとインポになる薬を開発した博士と広告プランナーがこの薬を売るために悪戦苦闘する。
・みえすぎ
誇りなど空気中の細かい分子が見えすぎてしまう人のはなし。
・モテモテ・スプレー
会社の同僚の女に振られた主人公は、モテモテスプレーを使って再度この女に接近する。このスプレーをかけると女に持てるのだが、持続時間が短い。
デートに誘っていい場面になると効果が切れて、スプレーをしてまたいい雰囲気になってとドタバタの物語。
・線香花火
新人賞を受賞した新米の作家がの話し。
主人公の熱海圭介はキャラがいい。
・過去の人
「線香花火」の続編。
新人賞受賞パーティに呼ばれた熱海が面白い。
この作品で表紙に少しだけ写っている「虚無僧探偵ゾフィー」が登場する。
・シンデレラ白夜行
百夜行の雪穂がシンデレラだったら、こんな風になるのか。
・ストーカー入門
華子に突然ふられた主人公。
1週間後華子から電話があり、それを機に華子のストーカーをすることになる。
途中までは面白いがオチはちょっと寂しかった。
・臨界家族
女の子に大人気のキャラクター、スーパープリンセスのキャラクターグッズにまつわるはなし。うまいこと考えてるなーと思うが、これ実際にあるのかも。
・笑わない男
売れないお笑いコンビが何かの手違いで超一流ホテルに泊まることになった。
このホテルのボーイはきちんと教育されているため、鉄仮面のように無表情で笑うことをしない。2人はこのボーイをなんとか笑わせようと努力する。
・奇跡の一枚
主人公の女子大生が、グループの旅行中に撮った写真で1枚だけとんでもなく綺麗に撮れている写真があった。兄や父までもが、本人と疑うようなものだった。
主人公はメル友にこの写真を送ると会いたいと言われ困惑する。
最後は綺麗にまとまった感動的なはなし。
・選考会
寒川先生と虚無僧探偵ゾフィーがまた登場。
途中でオチは見えたが、面白い。