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通勤途中に読んだ本。
勝手に5段階の評点つけてます。

ララピポ

2007-11-21 23:22:27 | 奥田英郎
【評点】2(5段階中)


奥田英郎の短編集。マドンナ、ガール、東京物語のようなものかと思っていたが、ちょっと違う。いや、物語の根底にある人物像を描いたという部分は同じか。
短編が6話だがこれらはつながっており、1話目の登場人物の一人が2話目の主人公になり、2話目の登場人物の一人が3話目の主人公というようになっている。

それぞれの物語の主人公はいわゆる負け組みといわれる設定で、年齢はさまざまだが今までの人生にパッとしたこともなく、ただ単に人生を送っているだけである。
その人生の一部をエロを中心に紹介している。
そう、この本はちょっとエロい。

表紙からしてそうだが、鍵穴の向こうに見える女の顔。カバーが鍵穴の形でくりぬかれており、その形で表紙が見えるようになっている。カバーをはずすと、エロい浮世絵が描かれている。
そして帯には犬の交尾の絵。
電車でブックカバーなしで読むのはちょっと恥ずかしい。
西澤保彦の「両性器具迷宮」も恥ずかしいが。

物語としては残念ながら面白いとはいえない。
ただ、すべての話しの中でちょっとしたオチがついている。
1話目のオチは結構よかった。

タイトルの「ララピポ」の意味は最終話で明らかにされるが、どうってことはない。


野球の国

2007-08-24 23:16:46 | 奥田英郎
【評点】3(5段階中)

筆者の野球観戦のエッセイ。
キャンプを観にいく沖縄編から始まって、松山編・広島編・台湾編など。

中日ファンの筆者がありのままで野球に対する思いを語る。
野球観戦だけでなく、現地での食事やホテルなどのことも描かれている。

野球ファンなら、地方球場へ行く楽しみはわかるだろう。
野球を好きでない人はこの本は楽しくないと思う。
私は野球を見るのが好きなので楽しく読めたのだがが、それも最初の沖縄編と次の松山編までで、それ以降は同じような内容なのでやはり飽きた。

真夜中のマーチ

2007-08-10 23:36:50 | 奥田英郎
【評点】4(5段階中)

3人の登場人物が10億円を狙って繰り広げるコメディー。
お見合いパーティなどを主催する小さな会社の社長で、一攫千金を狙っているがよく失敗するヨコケン。
三田物産に勤め、たまたま名字が三田ということで三田家の御曹司と勘違いされることが良くあるが、実は何の関係もない冴えないサラリーマンのミタゾウ。
父が財産家で、その父に一泡吹かせてやろうとたくらんでいる美人のクロチェ。

物語は3部で構成され、第一部はヨコケン、2部はミタゾウ、3部はクロチェの視点で展開する。
個人的には1部のヨコケン視点が面白い。

凝ったストーリーではないが、キャラクターに個性を持たせてうまく引き込まれるようになっている。

ガール

2007-03-02 23:47:48 | 奥田英郎
【評点】4(5段階中)

30代OLが主人公である話を5つ集めた本。
職場での出来事を楽しく描いている作品で、ほのぼのする。
30代のOLさんにはぜひ読んでもらいたい。

・ヒロくん
課長になった聖子は年上の部下の扱いにとまどう。
その課長とのやりとりがいい。

・マンション
ひとり暮らしのマンションを購入すると結婚する気はないと思われるのでは、と思いながらもマンション購入のためにがんばる女性。
秘書室の女にはむかつくがラストはいい展開。

・ガール
もう若くない自分にショックをうけながら、日々を乗り切る話し。
途中でちょっと脱線してオチを迎えているような。

・ワーキングマザー
子育てしながら仕事するのは大変。
これはもひとつ。

・ひとまわり
ひとまわり年下のイケメンの男子社員に好意を抱く。
女性同士の対決が面白い。

ウランバーナの森

2006-04-16 23:25:01 | 奥田英郎
【評点】2(5段階中)

明示はされていないが、ジョン・レノンが主人公。
名前もちゃんとジョンとなっている。
ジョンが妻のケイコと息子とで軽井沢の別荘でお盆をすごす話し。

ジョンが便秘になって、医者へかようのだが、その帰り道に死者と出会う。
昔の悪行の罪滅ぼしをする。


東京物語

2006-04-07 08:27:19 | 奥田英郎
【評点】5(5段階中)

1980年代の東京を舞台にした若者のある1日を描く。
5つの短編からなるが、主人公は同一人物だ。
また、短編のサブタイトルは日付になっており、ジョンの死や江川初登板などその日におこったことが作品に盛り込まれている。

私は80年代は、中学生・高校生だったので、年代が違うが楽しく読めた。
特にレモンはなつかしい学生時代を思い出させるようでとても気に入っている。
といっても、同じような経験があるわけではないが。

全ての作品において、80年代をあらわすような単語が登場する。
本当に懐かしさを感じる。

ぜひともお勧めの本だ。

マドンナ

2006-03-28 22:26:43 | 奥田英郎
【評点】5(5段階中)

40代のサラリーマンを主役にした、会社が舞台となった作品。
とくにオチがあるわけでもないのだが、非常に楽しめる。
自分は30代の男だが、興味深く読めた。

短編が5つで、どれにも共通しているのが下記の事項だ。
・主人公は営業部の課長
・奥さんが出てくる。
・主人公は作品中、名字は無く名前で語られる。
・部下である20代の女性が主人公の相談役として登場する。
・最後は喧嘩になる。

もともと奥田作品は感情移入がしやすい。
邪魔の及川婦人とか最悪の町工場の社長とか。
そして最後にぷっつんと切れるのが共通している。

40代の男性でなくても楽しめる。
会社が舞台のほのぼのドラマ。

サウスバウンド

2006-03-19 19:16:49 | 奥田英郎
【評点】5(5段階中)

主人公の上原次郎は小学6年生。
子供の目から見た大人を描く作品。

第1部は、東京が舞台。
次郎の父親の一郎は元過激派であり、彼が様々な問題を起こす。
また、中学生にたかられたりと小学生としての悩みも描かれている。
私も昔も思い出し懐かしい気持ちで読めた。

第2部は西表島。
上原一家は西表島へ引っ越した。
そこは電気も水道もないところだが、島の人々が差し入れをくれたりと田舎生活の中で親切を感じる。

最後は国家権力に対抗し一波乱ある。
一郎が大暴れするのだ。

かなり無茶な人間だが、この一郎を通して国家のあり方を述べた作品であると思う。

最悪

2005-08-22 22:12:28 | 奥田英郎
【評点】5(5段階中)

面白い。心理描写がすごくいい。
こういうのを犯罪小説というらしい。そういえば前に読んだ奥田英郎の「邪魔」もこんな感じだった。

物語は全く関係のない3人の人間の話しがそれぞれ進んでいき、最後にその3人が接点をもつというもので、3人称3視点ですすんでいく。

まずは川谷信次郎。町工場の社長だ。得意先からきびしい注文を受けるが生活のために仕方なくそれをこなしていく。苦労がわかる。
私はサラリーマンだが、この人にすごく感情移入してしまった。
騒音問題でマンションに住む大田という奴とやりあうことになるが、この大田はとても腹のたつ野郎だ。
読んでいて気分が悪くなった。

次に銀行に勤める藤崎みどり。銀行のきびしいというか古い組織体系の中で仕事をこなしていくが、支店長にセクハラされる。
おまけに同僚の裕子は、同じ支店の若い営業と出来ていてむかっ腹が立つ。
でも酔って、この営業とやってしまうのがすごいところだ。

最後に野村和也。定職につかずパチンコや恐喝で生計を立てている。
仲間とトルエンを盗むが、それを目撃されていた。
しかも目撃された車は仲間の兄貴分のヤクザが手配した車だった。
ヤクザから落とし前をつけられ、ボコボコにされてしまう。

この3人が通常の生活からかけ離れてどんどんと最悪の状態におちていく。
そしてピークに達したところでうまい具合に接点を持つことになる。

3人が出会ってからの展開も面白く、スピーディーでそれぞれの心理をうまく表現しているところが最高だ。

先にも述べたが、町工場の社長の川谷がとても哀れで仕方がない。
得意先のこと、従業員のこと、近隣住民のこと、家族のこと、銀行からの融資のこと、問題がいっぱいだ。
ピーク直前の銀行員や支店長とのやりあいはどうなるか、ハラハラものだ。
すると「邪魔」の及川恭子の最後のように、狂ったような挙動を振舞うことになった。

結局オチでは、皆落ち着くとこに落ち着いた。
ある意味よかったのかもしれない。



邪魔(下)

2004-07-25 14:50:03 | 奥田英郎
【評点】5(5段階中)

主婦(及川恭子)と刑事(九野薫)が登場する。
2人に接点はないが、それぞれの立場で悩みがありそれをどうするかといった感じ。

7年前に妻を事故で亡くした九野は、妻の母親を心のよりどころとしていた。
そんな九野が放火事件を担当する。
怪しいのは及川だ。

一方及川恭子は、夫の疑惑を忘れたいがために、自分がパートとして勤めるスパーの職場改善運動をすることになる。
だがこの運動の真の目的を知って、ぷちっと切れた。

一人の人間が崩れていく様を、充分な前ふりを見せて、見事に描いている。
及川の心境の変化がわかるようで恐ろしい。

また九野も同僚の事件に巻き込まれ、精神的に追い込まれていく。

人間心理をうまくあらわした面白い作品だ。