~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

*『ポエトリー アグネスの詩』* ※ネタバレ有

2012-03-04 00:02:55 | 映画【韓国】


  『ポエトリー アグネスの詩』:公式サイト

過酷な現実に直面した初老の女性ミジャが一篇の詩を紡ぐまでの心の軌跡を描く。
第63回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞作。
主演ミジャ役のユン・ジョンヒは
青龍映画賞・大鐘賞映画祭・アジア太平洋映画祭の主演女優賞を受賞。

邦題のサブタイトルはネタバレやん。。。
シンプルに“ポエトリー”か“詩”にしたほうが無難な気もしましたよ。

余分な状況説明は削ぎ落とし、行間を読みとり観客に想起させる作り。
ゆったりとしたテンポ、季節も定かにせず
名所ではないありふれた田舎町を舞台にしている所がまさしく詩的。
(名所を舞台にしていたり季語があったりすると俳句ぽくなってしまうから。)

美に憧憬を抱く初老のミジャに次から次へと突きつけられるよどんだ現実。
卑劣な言葉で語る刑事は実は正義漢のある人。
清濁は表裏一体で儚くも感じる。

ミジャはずっとスカートを履いていたよね?
花柄など柄モノの洋服を組み合わせていたりする。
ピンクや水色など淡い色合いで清楚な装い。
孫に対しては距離を置いて接している感じでいわゆる母性は感じとれない・・・。
孫もミジャに馴染んでいる感じは伝わってこない・・・。
クライマックスの無表情でのバトミントンも虚無的だなと思っていたら
ああいう展開になったし・・・。
娘は息子をミジャに預けぱなしにして遠くで働いてしまっているし、
そういう娘とも疎遠がちになっていたようで家族の情が伝わってこないのだ。
ミジャは少女がそのまま大人になったような印象で、
他者とのコミュニケーションが苦手なのかもしれない。
だからこそ、詩に心の拠り所を求めたのだろうけどね。

認知症によって言葉が思い出せなくなってきているミジャの姿に
時代の栄枯盛衰を隠喩させたのかしら?
時代の流れと共に昔からの文化も映り変わっていく。
その中で衰退していく文化もあれば新たに活用される文明の利器もある。
だけど、昔からの文化に心寄り添っている人の気持ちはそう簡単に変えられはしない。

イ・チャンドン監督の前作『シークレット・サンシャイン』では主人公が被害者側だったけど、

 『シークレット・サンシャイン』・・・ ※ネタバレ有

今作では主人公は加害者側の設定で描いている。
ラストの詩を聴くと前作への回答のような気もしてきて、
連なっているような感じもしました。

この監督は一貫して慈しみを描いてきた印象を受けるんだけど、
今作では“ポエトリー(詩)”をモチーフにした事で
男女・家族という名目を越えた人間の業の域に達したような気もしましたよ。


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
素晴らしかったです。 (rose_chocolat)
2012-03-04 00:37:22
数年に1本でしょうね。 最後の俯瞰は本当にお見事でした。
その目線はそうなのかと気が付いた瞬間、一気に感情が入ってきてたまらなくなりました。
自分を語れる人が作った作品という感じがしました。
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素晴らしかったですよね。 (BC)
2012-03-04 17:45:50
rose_chocolatさん、こんばんは。
久々に私達は意見が合ったよね。^^
この作品は現時点で今年のマイベスト1位です。

川に始まり川で結ぶシークエンスが秀逸でしたね。
映画を模索しながらも映画を通じて語る監督自身が詩の主人公とも言えるでしょうね。
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