~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

〇『渾身』〇 ※ネタバレ有

2013-01-13 19:53:04 | 映画【日本】


  『渾身』:公式サイト

柱の誇り
ニッポンの心

家族や島への想いを抱きながら隠岐諸島で古くから20年に一度行われてきた
古典相撲大会に臨む青年とその家族を中心とした人間模様を描く。

私が好きな作品『白い船 - goo 映画』の錦織良成監督で
その作品で主演していた中村麻美も出演しているし、
伊藤歩が珍しく主演しているというのも興味深かったので観に行きました。

 年末年始公開の日本映画界のアラサー女優主演の2本。

高い陸地から海を眺める島の風景がキレイで寄り添うように流れる音楽も優美。

英明〔青柳翔〕が結婚式ドタキャンした相手も登場したらもっと面白くなったんだけどな。。。
結婚式ドタキャンで島では肩身の狭い思いをしているという設定なんだけど、
島の人々とのやりとりでは就職を拒絶されたり、父に勘当されているぐらいだったので
島生活のコミュニティの窮屈さはあまり伝わってはこなかったな・・・。

多美子役の伊藤歩が料理上手な女性を柔らかい表情で母性愛もにじませながら演じて新鮮でした。
主演作だと力が入りそうなものだけど、彼女は肩の力を抜いて楚々と演じていて良かった。
澄みきった声も美しいね。

英明役の青柳翔は稽古の場面で強い眼差しで
口からはよだれ?みたいなのが流れ落ちていて凄いなと思った。
役に入り込んでなりふり構わず一生懸命稽古していたんでしょうね。
この俳優さんプロ根性ありそうだね。

多美子の母役の宮崎美子は近年の映画では
成人した子供を持つおおらかながらも芯の強いお母さん役が定着してきている感じ。
(田中好子のようなポジションになってきているような気もしますね。)

多美子は英明が正三役大関に選ばれたお披露目となる取組を観に行くのを躊躇したのは
亡き親友で英明の前妻だった麻里〔中村麻美〕に申し訳ない気持ちもあったのかな?
琴世が多美子の事を「あの姉ちゃん」と呼び続けていてなかなか「お母ちゃん」と呼ばなかったのは、
多美子になじめなかったからとか反発心ではなく、
「お母ちゃん」と呼んでしまうと天国のお母さんである麻里のように
写真だけの人になってしまうかもしれない・・・という不安があったから。

琴世が多美子の事を「お母ちゃん」と呼んでも
多美子は琴世の事を呼び捨てにせず「琴世ちゃん」と他人行儀?で呼ぶのは
多美子自身、女としては妻として母として認められたいけど、
親友の娘である現実にはあがなえないから・・・。
その辺の葛藤は今後も抱えていくんだろうなとは思った。

だけど、映画的には多美子も「琴世」と呼び捨てにしたほうが、
多美子も琴世を娘として受容した感じもするし、
二人は母娘になれたような気がして素直に感涙出来た気もする。
映画として感動を煽る演出は観客のツボを押さえきれていなくて物足りなかったな。

根っからの悪人は登場しないので観やすいけど、人間描写を美化しすぎて生々しさには欠けた・・・。
とは言え、朴訥とした雰囲気の甲本雅裕といなせな口調の財前直見、
子役と伊藤歩・青柳翔のほのぼのとした一家のやりとりは微笑ましかった。
爽やかな余韻が残る作品でした。


≪『渾身』関連記事≫

 『渾身 KON-SHIN』伊藤歩&青柳翔&財前直見&甲本雅裕 単独インタビュー 〔シネマトゥデイ〕


4 コメント

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コミュニティ。 (BC)
2013-01-18 23:38:48
にゃむばななさん、こんばんは。

私は田舎のコミュニティが描かれた映画と言えば『八つ墓村』『黒く濁る村』など、
ドロドロしたのを思い浮かべてしまったからか、
この作品は映画としてはちょっと小奇麗な印象も受けてしまいました。

だけど、周囲を海に囲まれた島なので閉鎖的な雰囲気ではなく、
おおらかでのどかな気風なのかもしれないですね。
台湾に似た風土のような感じもしましたよ。
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ニッポンの心。 (BC)
2013-01-17 22:33:05
kiraさん、こんばんは。
この作品はポスターの種類多いですよね。^^
キャストの顔写真が載っているポスターにしようかと思ったんだけど、
別記事で使ってしまったので、島の雰囲気が伝わるこの2種類にしました。

いにしえの伝統を大切にする島での晴れ舞台は古典相撲の取り組みなんですよね。
その晴れ舞台ではわだかまりも消えて人と人の気持ちが繋がって
「あっ、良いな。」と思える“ニッポンの心”が描かれていましたね。
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こんにちわ (にゃむばなな)
2013-01-17 13:57:26
確かに生々しさには欠けるのかも知れませんが、逆に言うとあれが伝統文化を守る田舎ならではの風景かも知れませんね。
高校野球でもそうですが、敗者を讃える文化は日本の美徳。それが息づいているのが田舎でもありますからね。
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こんばんはー☆ (kira)
2013-01-16 01:16:01
ポスター、2つともいいですね~

登場人物には特に個性があるわけでもないのに、
オープニングから、ラストの穏やかに迎える、どこかちがった日まで、
結構印象に残る情景や、ほんの一コマ
なんだか大切にしたい、日本の良さを改めて教えてもらったような作品でした
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