~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

□朗読劇『私の頭の中の消しゴム 8th letter』〔竜星涼&真野恵里菜ペア〕□ ※ネタバレ有

2016-05-04 22:12:41 | 〔RR〕


  朗読劇『私の頭の中の消しゴム 8th letter』:公式サイト

心に建てる家
君が僕を忘れても

連続ドラマ『Pure Soul』が韓国映画『私の頭の中の消しゴム』としてリメイク。
その後、日本でもスペシャルドラマ化。
2010年日替わりキャストによる『朗読劇 私の頭の中の消しゴム』がスタートし、2016年の今公演が8回目。
今回は9組のペアですが、その中の1組竜星涼&真野恵里菜ペアの2公演を鑑賞。

建設会社で働く浩介〔竜星涼〕とアパレル会社に勤める薫〔真野恵里菜〕は結ばれるが、
薫が若年性アルツハイマーになり・・・。

二人共、座って本を持って演じる。
座る位置は数回左右交代する。
時折、立って動いて演じる場面もある。
背景説明はバックスクリーンに写真が映り、
背景をイメージしやすいように演出している。

【4月29日(金・祝日)ソワレ(夜公演)】
B列センターブロック端寄りでの鑑賞。

◆出だしは竜星くんが登場。
若干声が弱かった。
(後方の席の人は聴こえるんだろうかと思ったほど。)
その後は持ち直した。

◆竜星くんはサ行が弱いのかな?「しち」なのか?「ひち」なのか?発音が微妙だった。
台詞は4回噛んでいたけど、滑舌は心配したほどでもなく、台詞は全部聴き取れた。

◆竜星くんは利きの左手はがっしり本を持っていたけど、右手は微かに震えていたように見えて
相当緊張はしているんだろうなと感じた。

◇真野さんは1回噛んだのみでほぼ完璧。
声がキレイに通っていた。
症状が悪化して幼児化しているような口調やうつろに遠くを見つめている表情が実に上手かった。

◆最初は意識して観ていたわけではなかったんだけど、
竜星くんから飛び散っている水分はいったいなんなんだろう?
と思って注目して観ていたら、激しく叫ぶ場面では唾が飛んでいたし、
涙と鼻水が同時に飛んでいたりもしたし、前髪が振り乱れていた時もあった。
振り切った感情表現はとても迫力あった。

私宝塚も含めると年に3~5本は舞台も観ているけど、
唾・汗・涙・鼻水が空を切って床に勢い良く落ちる熱く凄まじい感情表現は初めて観た気がした。
竜星涼は私が思っている以上に凄い役者なのかもしれない本気でそう感じた。
この人のファンになって良かったと素直に思えた。

◆泣き崩れると台詞言えなくなるからか瞬時に鼻を一気に上にすすってから
台詞を感情強くせつなく言い放っているのが負けず嫌いで男らしい彼らしさが出ていて印象的だった。


【5月2日(月)ソワレ】
F列センターブロック真ん中辺りでの鑑賞。

◆出だしの竜星くんの声の音響がなんか不自然だった。
マイク声に聴こえて・・・。
(もしかしたら、彼の声の調子が良くなかったから、音響で補正しようとしたのだろうか?)

◆前半、真野さんが噛んで、それに動揺したのかつられるように竜星くんが噛んで。
竜星くんは「マンション」を「マンソン」と言ってしまっていたから、やっぱサ行が苦手なのかなとも?
真野さんも竜星くんも噛んだのは2回だけでした。

◆今回は水分飛ばしたのは前半汗を飛ばした1回のみだったけど、役への入り込み度は今回のほうが上回っていた。
クライマックスの立っている場面の演技は尋常ではない感じだったので、思わずオペラグラスで観たんだけど、
竜星くん滝のようにとめどなく大筋の涙流しながら
心から張りさけそうな痛切な感情を精一杯込めている台詞回しだった。
(小さなお顔が涙で埋まるんじゃないかと思った程だった。)
その後の座る場面では感極まったのか一瞬台詞がつまってた。
すぐに持ち直して台詞続けてはいたけど。
渾身の演技で圧巻だった。
(背は高いけど、細い体型でどこにそんなパワーが備わっているんだろうって思ったな。)
役に入り込んでいる分、語感も微かにぼやけたりはしていたんだけど、感情はビビッドに伝わるので許容範囲だった。

正直、映画『orange-オレンジ-』の泣きの芝居はわざとらしかったし、
ドラマ『超限定能力』の泣きの芝居は『orange』よりかはマシだったものの涙や鼻水の量は少なかったので、

泣きの芝居は苦手そうな印象を抱いていたからここまで涙を流せる人だとは思っていなかった。
本当に驚きました。
映画やドラマのように決まった場面でスポット的な涙を要求されるよりも、
ワンカットの舞台の方が感情の流れをつかみやすいというのもあるかもしれないけど、
やり直しが効かない生のステージで顔を崩して感情をさらけだして泣ける度胸は只者じゃないし、
大げさな言い方かもしれないけど、天才だと思えたりもした。

◇後半の真野さんは竜星くんに若干喰われ気味ではあったけど、
竜星くんにのまれる事はなく、安定した演技をされていたと思う。
記憶がある時の芯の強さと記憶を無くしてからの儚げな感じを自然な流れでリアルに演じきっていた。
竜星くんと真野さんは掛け合いのテンポも感情が高ぶった時の声量もバッチリ合っていた。
映画『orange』では絡みの場面はなかったので、

実質初共演で稽古二日間?でこの完成度は凄いと思う。


◎2公演共通の感想◎
◆後半、薫の症状が悪化して、浩介ではなく前彼の名を呼ぶ事にショックを受けながらも
浩介は「行ってきます。」としぼりだすような声で言った時の語り口が物凄くせつなかった。
前彼に嫉妬し動揺しつつもそんな薫を受け入れざる負えないやりきれなさがひしひしと伝わってきた。

◆浩介は次々起こる現実に真正面から向き合おうとするけど、どうしていいかわからなくて、
苛立って荒っぽい口調になってしまうけど、
それは薫を受け入れようとするが為で優しさゆえなんですよね。
相手との向き合い方は要領良くないけど一生懸命。
きっと竜星くんにもそういう面あるから説得力ある演技になったんだと思う。

◆病状の悪化は容赦なく二人の人生を引き裂くけど、
記憶を失くしても、相手を慈しむ想いは本能には残っているのでしょうね。
だからこそ、ラストの薫の姿はせつないんだけど、
その想いの一片であるスケッチブックに触れた浩介の心は少しは救われたと信じたい気持ちになりましたよ。


◎余談・まとめ◎
私的には前半のドラフターが懐かしかったな。
今はCADだけど、学生時代や社会人になって間なしの頃はよく使って図面描いていたから。
(まっ、ツッコミ入れるなら1級は資格学校行かずに1度の受験でそう簡単に合格はしないと思うんだけど。。。)
好きな俳優が同業に近い役って嬉しいよね。

私は日本の連ドラやスペシャルドラマは未見だけど、韓国映画は観ていたので、
ある程度、筋書はわかるから物語で今更感銘受ける場面とかはないんだけど、
浩介の母親のエピソードは映画とは違ったからか、少しじーんときました。
あと、前半薫が倒れた時に浩介が薫を守っていかなければいけない大切な存在だと気づき、
支えていこうと心に決める語りも聴いていて胸が熱くなったよ。

竜星くんが演じた浩介役は多分アラサーなので、実年齢よりも上の役。
この朗読劇の男性キャストの中では最年少だったらしいし。
(真野さんは1991年生まれで竜星くんは1993生まれなので、真野さんのほうが年上でもあるんですよね。)
なので、気迫が溢れていても少し背伸びした落ち着きのある雰囲気だったけど、
カーテンコールで二人でちゃっかり腕組んだりスキップしたりしているのは20代の若い子らしくて微笑ましかった。
最後のカーテンコールのハグも爽やかでした。

ただ、楽日の2日は確か4回のカーテンコールだったけど、両日共スタンディングオベーションまではいかなかったので、
まだ足りないモノがあるのかもしれないと感じたりもしました。
そのペアの観客層(キャストのファン層)にもよるだろうし、
この演目のファンの方がどういった朗読劇を求めているのかわからないので何とも言えない面はあるんだけどね。

多少ミスはあったけど、二人で息を合わせて全力で感情表現する姿は観ていて清々しかった。
一切手を抜かず、なりふり構わず全ての感情を出しきった上で
限界を超えた高みを目指すのは演技者なら当たり前の事なんだけど、
なかなか出来る事じゃないです。
(特に若い人はカッコ良く見せたい可愛くみられたいという意識が働きがちだから。)
朗読劇の領域を越えていて、演劇として成り立っていました。
素晴らしかったです。


P.S.
2日は少し時間あったので、この劇場が入っている建物の外装や内装を見物出来ました。
3年前に別の朗読劇でこの劇場に来て以来、再びこの劇場に来れたのも嬉しかったです。


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