赤い戦車
自身も下半身不随で車いす生活の仲倉重郎監督が
実在の女性看護師のリハビリ記録をもとに映画化。
下半身不随になった女性看護師:彩夏〔秋元才加〕が過去と折り合い、
リハビリセンターの仲間達と共に再生を目指していく姿を描く。
少し、パ〇企画の映画ぽい感じもしたんだけど、教育映画的なお堅さや家族主軸ではなく、
この作品は家族も描かれているけど、リハビリ病院での群像モノとして描かれていました。
彩夏のおばあちゃん:勝子〔三田佳子〕が彩夏の為に赤い靴を残していて、
それを彩夏が履こうとする場面にウルッときた。
なかなか履けなかったのは下半身が不自由だからなのか?
障害を抱えたことによって足がむくんで靴のサイズが合わなくなってしまったのか?
認知症も発症していたらしいおばあちゃんだったので、彩夏の子供の頃の靴のサイズだったのか?
色々と想像を掻き立てられて、そのどれであってもせつないし・・・。
彩夏役の秋元才加はAKB時代に『虫のバラード』というソロ曲?の動画を拝見した事があって、
ロックバラードを男勝りにカッコ良く熱唱している彼女の歌唱力に圧倒されたことがありました。
芯が強く自然な演技も抜群ですね。
AKB出身女優にありがちな無意識のうちに可愛く見せようクセもないし。
特に、ライブを聴いている場面で目を真っ赤にして涙をためている演技は素晴らしかったし美しかった。
彩夏の母親役が愛華みれだと鑑賞後にパンフレットを見るまで気づかなかった私。。。
(宝塚歌劇の男役トップ時代に何度か宝塚大劇場で舞台観ていたのにすいません。m(_ _)m)
男役トップ時代はスタイリッシュな感じだったけど、今はおおらかな佇まいになられているのが印象的でした。
明るく振舞っていても心根は人一倍繊細な
彩夏の病院の同室の女子高生:千尋役の吉岡里帆の演技も印象深かったな。
『グッモーエビアン!』の頃の能年玲奈に通じる雰囲気もあるので、今後の活躍が楽しみです。
人生の途中で下半身不随になられた方がその現実を受容して、
新しい人生を歩みだしていこうとする作品は今までにも映画やドラマで数多く扱われ、既視感ある。
なので、私はそういう作品はどちらかと言うと物語そのものよりも
どう描くか(どう演出するか)、障害者役の演者がどう演じるかに目がいったりする。
この作品はほとんどの場面がリハビリ病院で作業療法士のもとで訓練を受けて、
退院していくまでのお話なので単純と言えば、単純。
だけど、この作品は障害というシビアなテーマを扱っていて、
それに伴う現実も描かれてはいるんだけど、重苦しさがないんです。
リハビリ病院であっても先生も患者も皆が皆暗い顔はしていないし、
普通に和気藹藹としていたりする。
(それが却ってリアルだなって感じたの。
だって、現実は映画やドラマみたいに悲劇ぶってはいないでしょ。
命ある限り生きていかなくてはいけないわけだから。)
そんな中でも人それぞれメンタルの波があって、
誰かが絶望的な気持ちに陥った時は他の誰かが身を挺して救おうとする。
そうやって助け合っている姿にじーんときた。
クライマックスの幻想的なベッドシーンは要らない気もしたし、
病に侵されたミュージシャン役の人がもっと演技上手い人(せめて台詞が棒読みじゃない人)なら良かったんだけど、
歌が歌えてギターも弾ける人となると本職の俳優さんでは難しいのかしらね?
まっ、それを差し引いても悪人があまり出てこない穏やかな作りは観やすかったです。