『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』:公式サイト
カーネーション
多くの歴史的建造物が残るポルトガルの古都であるギマランイスを題材に
ヨーロッパ映画界を代表する4人の名匠によるオムニバス作品。
【バーテンダー】 アキ・カウリスマキ監督
アキ・カウリスマキ - Wikipedia
バーで働く男の1日を描く。
霞んだトーンの原色の背景に無表情な登場人物、カウリスマキ王道の設定。^^
戸口で野良猫にミルクを与える男の姿が哀愁あったな。
【命の嘆き】 ペドロ・コスタ監督作
1974年のカーネーション革命(ヨーロッパ最長の独裁を無血で終わらせた革命)をモチーフに
エレベータの中の二人の男の会話を描く。
現実なのか?妄想なのか?
人間なのか?彫像なのか?
どうしてエレベータに閉じ込められているのか?
とにかく意味不明。。。
深刻な語りなんだろうけど、パジャマ姿の男にブロンズぽく身体を塗った男の
飄々とした掛け合いは可笑しみも帯びていたね。
【割れたガラス】 ビクトル・エリセ監督
昔は隆盛を誇りながらも、1990年の経済危機により閉鎖され、
“割れた窓ガラス工場”と呼ばれるようになってしまった
紡績工場に勤務していた労働者達の証言を綴る。
空間の真ん中に人を座らせ、
労働者達に過酷だった勤務のエピソードを次々と語らせているだけなんだけど、
最後に射し込む一筋の光に慈愛の眼差しを感じた。
画の構図はさすがに完璧で美しかったんだけど、
エリセにはドキュメンタリータッチの作品よりも
劇映画を撮ってほしかった気もする。
そして、エリセの長編映画復帰はいつになるんだろうね?
【征服者、征服さる】 マノエル・デ・オリヴェイラ監督作
ギマランイスの広場にやってきた観光客とガイドの様子を描く。
【バーテンダー】【命の嘆き】【割れたガラス】は閉鎖的な空間が主だったので
【征服者、征服さる】まばゆい陽光の広場は一気に開放的な空気だったな。
とはいえ、その空気とは相反するシニカルなオチが効いていましたね。^^
◎まとめ◎
時間数30分はありそうな話もあれば、数分程度の話もあり、まちまち。。。
だけど、それぞれの監督の持ち味はちゃんと出ていたと思う。
(私はペドロ・コスタ監督の作品は初めてだったので断言は出来ないけどね。
『ヴァンダの部屋』は観ておくべきかしら?)
街を題材にした作品は必要以上に観光名所を盛り込みすぎて“観光案内映画”になりがちだけど、
街の外面ではなく、
街にまつわる庶民・近代史・産業文化・古代史をモチーフに見つめているのが印象深いオブニバスでした。