~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

■『MR.LONG ミスター・ロン』■ ※ネタバレ有

2017-12-31 00:40:37 | 映画【中国・香港・台湾】


  『MR.LONG ミスター・ロン』:公式サイト

ロンちゃん

日本での任務に失敗した台湾の殺し屋ロン〔チャン・チェン〕が、
追われた先の村で個性豊かな人々と出会い、人間らしさを取り戻していく姿を描く。

殺し屋のお仕事の場面から始まり、シャブ中毒の女性と出会う。=思いっきりハードボイルド。
   ↓
逃れてきた田舎町でロンを警戒せず、お節介しまくる世話好きな住民達の姿が時に滑稽。=人情劇に転調。
   ↓
女性も更生し、疑似家族のような絆が芽生えたかと思いきや・・・。=再びハードボイルド。

こういうプロットだけ見たら展開が激しそうな印象を受けるけど、
終始、間延びだと感じるほどじっくりしたテンポで描かれる。
だからこそ、その間合いから登場人物達の言葉に出来ない様々な想いが感じとれるの。
特に、中盤の子供が少年野球を眺めている姿を見て、
ロンが子供に「日本語で野球やりたいと言ってきなさい。」との旨勧める場面のやりとりが好き。
ロンは日本語が話せないからというのもあるだろうけど、
やりたい事があるなら自分から動いて自分の意志でつかみとる事を教えていたんだと。

後半の長回し10数人メッタ斬りのたたみかけるようなアクションが圧巻。
ロン役のチャン・チェンはクールに演じきっていて、
女性とその子供と接する場面ではもう少し感情を見せても良いんじゃないかと思う程だったけど、
クライマックスで住民達と子供が台湾にやってきて、
子供を抱きしめる場面ではロンの温かい心が全身から溢れ出ていて心にぐっときたよ。
それまでは常にクールに徹する事で、この場面の温もりが際立って名場面になった。
チャン・チェンは優れた役者だと改めて思った。

女性は組織に引き裂かれた男性の事を永遠に愛し続けていただろうから、
ロンとの信頼関係は一口に愛とは言いきれないかもしれない。
だけど、ひとときだけでも至福の時間を過ごせたロンとの絆は恋愛を超えた大きな存在だったんだろうな。

そして、結婚していたわけでもなかった女性の子を引き取ったロンは根は良い奴だと思う。
観ていて、ロンが愛おしくなった作品でした。


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