筆子〔常盤貴子〕は“鹿鳴館の華”と言われる才媛。
しかし、最初の夫:小鹿島果〔細見大輔〕との間に生まれた
三人の娘は知的障害や病弱、
そして最初の夫は病死してしまう・・・。
その後、筆子は社会活動を精力的に行い、
日本初の知的障害者施設【滝乃川学園】の石井亮一〔市川笑也〕と
出会い再婚し、学園の子供達に献身的に接する。
やがて筆子は“障害児教育の母”と称されるようになる・・・。
明治時代後半、知的障害者は“ハクチ”などと言われ
人間としての尊厳を剥奪されていた時代・・・
他人に冷たい目で見られても知的障害者の娘と外食する筆子。
娘の自立と仲間達に囲まれる普通の幸せを経験してほしい為に
娘を施設に預ける事を決意する筆子。
施設の火災で6人の子供が犠牲になり、
落胆する夫:亮一を励ます筆子。
(↑筆子のほうが一気に老け込んでしまうぐらい憔悴しているのに・・・。)
綺麗でしっかりしていて現代的な思想を持っている筆子。
でも、結婚してからは大切な家族を次々と亡くしてしまう・・・。
常盤貴子は後半では少し痩せて?
老いていく筆子を姿勢をかがめて真摯に演じきっていたと思います。
市川笑也は舞台で女形を演じているのを何度か観た事あります。
歌舞伎俳優さんなので声が通りますね。
冗談も通じない生真面目な役柄だったけど、
障害者教育に取り組む誠実な役に合っていました。
太平洋戦争時代、知的障害者も戦場へ出征しなければならない・・・
知的障害者施設というだけで配給(食料)も満足にもらえなくなって、
栄養不足で多くの子供達が犠牲に・・・
という事実は初めて知りました。
筆子は終戦を知らずに昭和19年に亡くなってしまったのですね・・・。
知的障害者施設(福祉教育)というシリアスな題材でありながらも重苦しくならず、
かと言ってお涙頂戴的な感動を捲し立てるベタな演出にしなかったのは良かった。
障害者施設の側面(施設の経営の厳しい実情など)を取り入れながらも
子供達の朗らかな笑顔(施設での日常生活)を映し出していて微笑ましく思えたりもした。
この映画制作に携わった方達の温かい眼差しは伝わってきました。
でも、朗らかすぎる気もしました。
情緒不安定な子やパニックやひきつけを起こす子、
目を離すと遠くへ行ってしまう多動な子・・・
知的障害者と言っても実に様々なタイプの子が居るはず。
この施設の子供達は多少言葉(単語)が話せて、
ある程度意思の疎通が出来て、
穏やかな施設生活環境に順応している子供達が多いのかもしれないけど、
皆、落ち着きすぎていて違和感を覚えました。
それと前半、柱に縛られた男の子と座敷牢の女性〔演じているのは山田監督の娘さん〕
の場面は説明的なカットになっているだけだった。
穿った見方をするならば、娘を出演させる為にこの場面を加えたようにも思えた。
こういう酷な時代背景の説明はナレーションだけで充分だった気がする。
私見ですが・・・
知的障害の子供の世話に手がかかってしまい、
親(家族)も知的障害の子供とどう接してよいのかわからなかったから
柱に縛ったり座敷牢に閉じ込めたりするしか仕方がなかった諸事情もあるのではないのでしょうか?
“知的障害者”というだけで酷い事をする家族ばかりではないと私は信じたいし・・・。
P.S.
上映終了後、著者の一人:車取ウキヨさんが舞台挨拶をされていました。
それから映画館の売店でパンフレットと小説本を買って、
車取さんのサイン会があったので小説本にサインして頂きました。(*写真参照)
車取さんに声をかけようかと思ったのですが、
緊張してしまって結局何も話せなかった私です。。。