~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

*『トルソ』* ※ネタバレ有

2010-03-20 15:18:41 | 映画【日本】


  大阪アジアン映画祭2010|上映作品
  (上記リンクサイトのトルソの詳細をクリック。)



あの『
愛のむきだし』に出演していた渡辺真起子と安藤サクラ主演という事で観に行ってきました。

 
★『愛のむきだし』★ ※ネタバレ有

『愛のむきだし』では二人共強烈な役柄を演じていたけど、
今作では地味な姉妹役。
渡辺真起子は化粧気がなく、トルソ(頭手足がない空気人形)と共に生活している姉役。
内向的な役柄だったけど、台詞回しに説得力がありさすがに上手いです。
安藤サクラは姉の元恋人と同棲していて恋人に暴力を振るわれていて首にアザがある妹役。
この姉妹はかなり年齢が離れていて父親は違う。
姉が義父(妹の父)をお父さんと呼ばず、葬式にも行かなかったのは
辛すぎる過去の出来事があったから・・・。
その事に薄々気づいていてもその事に触れられたくない母・・・。
妹が姉の元恋人をはじめ姉の物なら何でも欲しかったのは姉の愛情が欲しかったから。

デリケートな心情が渦巻く物語で羨望や憎悪など
女心の一番触れられたくないシビアな部分を浮き彫りにしている。
姉妹二人が言い争う場面はあるもののギスギスはしていないし、ドロドロ感はない。
むしろ、この姉妹は話す事でお互いの心の傷を浄化し合っているような気もした。
そういう意味でとても清らかな作品だと感じた。

彼氏に暴力をふるわれ、耐えられなくなったら姉の部屋に居候。。。
常に誰かにすがりついていた妹が自分の意志で人生を決め、
赤ちゃんを産み育てていく事を決意する。
トルソを代用品にしていた姉はトルソに穴をあけて空気を抜く。
そして、姉自身はメガネを外し、口紅をつける。
前へ一歩踏み出していく姉妹が潔く美しかったです。


≪上映後に山崎裕監督による観客とのQ&A≫ ※『空気人形』のネタバレ有
上映が終わった後の拍手はまばらだったし、
上映後のQ&Aも最初は誰も質問する人がいなくてちょっと寂しい雰囲気でしたね。

■ 山崎裕監督は是枝監督・河瀬監督の撮影監督をしていた人

■ トリノ、香港で上映され、日本初上映。

■ ヨーロッパで見たトルソをモチーフにして映画を作れればと思った。

■ 是枝監督の『
空気人形の前から自分もトルソをモチーフにした話を考えていると話していた。

  
~『空気人形』~ ※ネタバレ少々

■ 『空気人形』は是枝監督らしいファンタジーなので自分が撮影ではないだろうとは思っていた。
      人形がARATA(『空気人形』でARATA演じるレンタルビデオ屋の店員)を刺して
      テープで留めようとする場面は原作にはない。
      是枝監督のペ・ドゥナLOVEぞっこん映画。

■ 出演者には演技指導はなし。
   目の前にあるものだけに反応していって感情的な場面はテストしない。
     そういう撮り方は『
DISTANCE(2001) - goo 映画』で経験済み。

■ 渡辺真起子は映画『
M/OTHER(1999) - goo 映画』でシーンだけが決まっていて
      自分が考えて演じるというのを経験している。
      (即興演出を経験しているという意味だと思います。)
      プライベートでは一緒に食事に行ったりした。

■ 安藤サクラは『
俺たちに明日はないッス - goo 映画』で一緒に仕事をした。
     二人のキャスティングは最初に思いついた。

■ スーパー16で撮影、フィルムではない。

■ 石橋蓮司とはテレビ番組で旅したり、『
花よりもなお』で一緒に仕事したりした。

■ ドキュメンタリーは突然、何が起こるかわからない。

■ カメラと対象を意識している。
   対象の感情をすくいとれたらと思い、手持ちカメラで撮っている。 
     『ディスタンス』『花よりは~』は手持ちカメラで撮ってはいない。
     今作は全部手持ち。
     (作風に合わせて撮り方を決めているそうですが、
      手持ちでは作風に合わない時は普通に撮っているそうです。)

■ 監督は春日井出身。安藤サクラの父の奥田瑛二の故郷と同じ。

■ 作品中、男性不在については女性のほうが好き。^^
    ジョン・ボイド、黒澤映画が好き。
   子供の頃は男っぽい映画を数多く観ていたが次第に
   男性的強い男の映画に魅力を感じなくなってしまった。
    戦前生まれで女性の変遷を見てきた。
    成瀬映画のように女性側から男性を見る映画を作りたかった。

■ まんがと連動して夏か夏前に公開予定。 
     監督自身は観客の反応を見て「複雑な思いがしました。」と仰っていました・・・。     
     私はこういう繊細な女性心理を描いた映画は好きですけど、
     暗い雰囲気なので一般受けはしないでしょうし、
   この作品で描かれるヒロイン像は可愛らしい女性像ではないので
   男性には受けないタイプの作品かもしれないですね。


≪山崎裕監督によるサイン会≫
サイン会好きのBCは監督にサインをして頂きました。
「清らかな映画でした。」
「美しい映画でした。」
としか言えなかった私だけど、
監督は嬉しそうな表情で「ありがとうございます。」と仰って下さいました。


2 コメント

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Unknown (KLY)
2010-08-05 23:41:28
繊細で丁寧に描かれた映像に惹かれました。女性が辺にかっこうつけていない素の様子を映し出したと監督は言っていましたが、だからこそ男の私からみると、何か見てはいけないものを見ているような気すらしました。
例えばストッキングを履くシーンも、渡辺さんやスタイリストさんは普通はスカートを着てからだと提案したそうですが、他人の目を意識しない状態ならば普通にストッキングから履くものだと仰ったそうです。少なくとも今までの監督の経験ではそうだと。(笑)
まあ実際にどうなのか、それは私には解りませんけどね。嫁さんのなんて意識して見てないし^^;
こういう作品ってホント好きです。レイトショーでシネコンのような大混雑とは無縁にぼーっと見るのもいいんですよねぇ。
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女優さん。 (BC)
2010-08-06 20:39:22
KLYさん、こんばんは。

私はその日の気分で選んだストッキングを先に履いて、
そのストッキングに合わせて服を選ぶ事が多いです。^^
人にもよるとは思うけど、
女優さんとしては先にストッキングを履くというのは抵抗あるのかもしれないですね。

誰かと一緒に気軽に観に行って
大いに盛り上がる事が出来るシネコン映画は醍醐味があるけど、
一人でこっそり観に行って
心の奥で感銘して静かに余韻が残り続けるミニシアター映画も良いですよね。(*^-^*
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