役者は技
生きざま
映画出演150本、舞台主演は60本を越える
俳優生活60周年の名優:仲代達矢のドキュメンタリー。
1975年から主宰する俳優養成所【無名塾】の入塾審査、
舞台『ロミオとジュリエット』の公演に取り組む姿を通じ、
俳優・人間としての仲代達矢の魅力に迫る。
仲代達矢 - Wikipedia
大阪での公開初日に観に行きました。
上映後には稲塚監督の舞台挨拶があって仲代さんのエピソードを伺う事が出来、
舞台挨拶後はサイン会もありましたので、稲塚監督と少しお話しする事も出来ました。
仲代さんは私の両親よりも年上の方なので、リアルタイムでは知らないのですが、
往年の日本映画の名作には必ずと言っていい程、ご出演されていますし、
市川雷蔵主演の『炎上』にも出演してらしたことを思えば、
かなりの芸歴になるんだろうなとは思っておりました。
近年では映画『引き出しの中のラブレター』にもご出演されていましたし、
一昨年の【大阪アジアン映画祭】では映画『日本の悲劇』でスペシャルメンションを受賞されましたので
ご高齢でも現役の名優であるのは認識していました。
仲代さんは“年の半分は舞台、あとの半分は映像(映画・ドラマ)”
という若い頃からの仕事のペースを崩していない。
仲代さんは舞台の膨大な台詞を墨汁を使い、筆で紙に書き写し、
相手役の台詞は少し薄い墨汁を使い、筆で書き写して台詞を覚える。
そうやって、自分以外の役の台詞も全て覚えてから舞台に挑む。
相手の気持ちもわからないと芝居の受け方がつかめない。
若い頃に受けたアドバイスをそのまま忠実に守って貫いている。
芝居に関して“トシだから”という言い訳は決してしたくないような強い信念みたいなモノが感じとれた。
ただ、それでも高齢なので足腰がいつまで持つかどうかの体調面の不安は抱えている。
無名塾の先行きを危惧もしている。
出来れば続いてほしいが、難しければ致し方ないのも悟っている。
(だけど、本当は難しくても愛妻と築き上げた無名塾は継承していきたい想いを抱いているようにも感じとれた。)
役者として芝居への熱い情熱を漲らせながらも、主宰者として客観的に現実も見据えている。
そういった繊細な心境も伝わってくるような気もした。
2013年仲代さんが入塾生に向けた言葉の中で
「生きる為に食うのでなく、食う為に生きて下さい。」
という言葉が強く印象に残った。
「自分が無名塾に合わないと思ったら辞めてもらって構いません。
また、素質が無いとコチラが判断したら辞めて頂きます。」
という旨も言いきっていた仲代さん。
合格者4人(男性3人・女性1人)を選んでもそれでめでたしではなく、
二か月後には試験があり、一週間休暇を与え、入塾生各自に適性を考えさせる。
結局、戻ってきたのは2人(男性1人・女性1人)。
舞台挨拶での監督さんのお話によると、
「『ロミオとジュリエット』の公演後に(2013年の入塾生の)男性1人が辞め、
残っているのは女性1人だけ。」との事。
選ばれるのも難しいだろうけど、
何より難しいのは卒業の域に達することが出来るまで在籍し続ける事なんだなと感じた。
『ロミオとジュリエット』では若手に主演を譲り、仲代さんは脇役に徹しているんだけど、
ポスターの序列では仲代さんの名前が一番上だし、ポスターの下半分は仲代さんの写真。
そういうところはスター性の名残なのかな?^^
『ロミオとジュリエット』ロミオ役の若手俳優さんが
「今でも仲代さんの前では入塾した時と同じぐらい緊張するのですが、
緊張をしないのは舞台で共に演じている時だけです。」
という旨を仰っていて、舞台上では先輩も後輩も関係なく、フラット。
演劇のプロ同志なんだなと。
『ロミオとジュリエット』上演前の楽屋でのインタビューの中で仲代さんは
「役者は技」
と仰っていました。
私はその意味をつかみきれなかったので、サイン会の時に監督さんに伺ってみました。
「仲代さんの“役者は技”という言葉が深かくて印象に残ったのですが、
その“技”が意味するものは
アクション的なモノなのでしょうか?
感情表現に関してなのか?
それを含めて全てにおいてなのでしょうか?
よくわからなくて。」
監督さんは
「確かに深いですよね。舞台をなさっている方ですから。」と。
映像(映画・ドラマ)もやってこられた仲代さんだけど、役者としての原点は舞台なので
舞台人(演劇人)としての特別な思い入れもあるのかもしれないですね。
役者は見た目も大事だけど、それは加齢と共に衰えていく。
でも、築き上げた“技”は永遠に宝になる。
役者としての“技”は人間としての“生きざま”そのものなのかもしれないですね。
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