~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

□『Mommy/マミー』□ ※ネタバレ有

2015-05-04 20:03:52 | 映画【スペイン・ラテンアメリカ・カナダ】


  『Mommy/マミー』:公式サイト

希望

発達障害者の子をもつ親が経済的困窮・身体的・精神的な危機に陥った場合、
法的手続きなしで養育を放棄、施設に入院させる権利を保障した法律“S18法案”が可決した
とある世界のカナダを舞台に、夫を亡くした母:ダイアン〔アンヌ・ドルヴァル〕と
発達障害を抱える息子:スティーヴ〔アントワン=オリヴィエ・ピロン〕の葛藤を描き出すヒューマン作品。
2014年の【カンヌ国際映画祭】審査員特別賞受賞作。

1:1の比率の画面が中盤まで続き、
中盤以降は1:1画面と通常のスクリーン比率の画面が交互する。
1:1は心の閉塞感?通常比率は心の解放感?
中盤にスティーヴがサイドを押し広げるように手を広げ、
通常比率になる場面が重いタッチの中で唯一清々しくて印象深い。

スティーヴはメンヘラ?と言ってしまえばそれまでだけど、
衝動にさいなまれながらも必死にもがいているんですよね。
ダイアンは親としての責任と息子への愛情の狭間での苦悩・・・。
普通、子供は成長するにつれ、自立していくから、母子は必然的に親離れ子離れしていく。
だけど、発達障害の子は社会に適応しづらく一人で生きていくのは困難だから、
いつまで経っても子供に手がかかるので過保護になりがちな場合も・・・。
なので、親離れ子離れのタイミングがなかなかつかめなかったりする。
心を鬼にして施設に入れようとしても、スティーヴが抵抗して嫌がっていたら、
息子可愛さの気持ちが湧き上がってくる・・・。
その辺の描写は実にリアルだったな。

心象はリアルであっても、映像や演出はメルヘンを帯びているのがドランらしいね。
繊細なタッチは少し岩井映画ぽさもあるけど、青を基調としたみずみずしさはドラン独特。
カナダを舞台にしているけど、カナダを強調した作りでもなく、
無国籍な寓話のようにも感じさせる。
映像自体は決してダークではないのが良いね。

それと、か弱いタイプではなくて、地に足着いたドシッと構えているような風貌の女優アンヌ・ドルヴァル。
一見、“雄”をイメージさせる強そうな女性の弱い面が表れると
より一層、痛切さが伝わってきて心に響くんだよね。
それが母親だったら尚更。
親は子供を守らなきゃいけないのは当然だけど、
夫がいないと自分を守ってくれる人はいないから、心細いだろうし・・・。

愛や希望って形あるモノじゃないから何が真実なのか?見極めが本当に難しい・・・。
だけど、諦めない限り、何らかの道はみつかるのかな?
自分の意志で駆け出して風に寄り添えば
確かなモノじゃなくても何かを感じとれるのかもしれないね。


2 コメント

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こんにちは (とらねこ)
2015-05-13 11:26:03
本当!青を基調としていて、目に心地よいんですよね〜。
スティーブは発達障害だけど、どことなく“男の子の子供の頃”に共通な部分も感じたりして…
そっか、成長が遅いからこそ母も息子離れが出来ない面もあるのかもしれませんね。
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青色。 (BC)
2015-05-15 22:36:57
とらねこさん、こんばんは。

澄んでいるけど、鮮やかすぎないから目の保養になる青色ですよね。
私は子供の頃から青が好きでブログも青系のテンプレートにこだわっているので、
青色を基調にしている映画は心地良いです。^^

親にとってはいくつになっても子供は子供だとは思うけど、
子供が成長して自立していくとそれを受け入れていかなければいけないし、
それが掛け替えのない歓びになる。
だけど、発達障害の子だと自立が困難でいつまでも手がかかるから、その歓びはまず叶わないから、
気持ちの整理やタイミングが難しいだろうなとは思います。
でも、それを一概に絶望と捉えるのではなく、
その中でも母・息子それぞれが希望を感じようとしていたのが印象的でした。
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