店の前に出て、「今日は人通りが少ないなァ、またヒマな日かァ」と思いつつ、反対側の歩道に目をやった。すっすると、本で見たり話に聞いたことはあったが、実物を目の当たりに見るのは、はじめてだった。
「げっげげぇ~っ、夢じゃねのか?」と自分のほおをつねってみた。
「うっ痛えっ!」「ってことは夢や幻じゃない。現実だ。」
・ ・・何?何を見たのかって、そう、見たものは口裂け女だった。
白いワンピースを着て、真っ赤な口が両耳のつけ根まで広がっている。
もう、あまりにびっくりして、「こりゃ、みんなに知らせなくちゃ」と思い店の中に戻って従業員のH君に「えっH君っ!そっ、外に、くっ、口裂け女が歩いてるぞっ!」
するとH君平然とした感じで
「ボク、さっき出勤してくる時にあの口裂け女とすれ違いましたよ。」と言うではないか。
なっ、なんでそんなに落ちついて話せるんだ。オッオレなんか、びっくりしてオシッコちびりそうになったんだぞ・・・。
そして・・・翌日、自分がお店に入ったととたんH君が
「店長、昨日見た口裂け女がさっき来ましたよ!」
「えっ、なんだってぇっ!で、大丈夫だったのか?」とオレ。
「ええ、何か薄気味悪かったですけど、店中の品物を眺め回して、ニタニタしてましたよ。」
オレ「で、写真は撮ったんだろうな」
H「えっそんな、そんなことしたら何かされそうで恐いじゃないですか。」
オレ「なんだぁ~写真、撮らなかったのかァ、だけど顔は間近でみたんだろ。本当に耳まで口が裂けていたのか?」
するとH君「昨日見たときはすれ違った瞬間に気がついたんで、不気味だったことしか覚えてなかったんですけど、今日見てみると口紅ですよ。真っ赤な口紅をくちびるのまわりから両耳のつけ根まで塗ってるんですよ。」
「え~~口紅~~っ。なんだぁ、じゃあ本物の口裂け女じゃなかったのか・・・でも何でそんなに激しい口紅の塗り方をしてるんだろう。」
「たぶん、目立ちたがり屋か、そういうファッション的なものでやってるんじゃないですか」・・・
と言いつつも慌てふためいている自分と違って、やけに落ちついているH君・・・見習わねば。
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