お世話になります。財務メタボ改善研究会 会長の渡辺です(^^)
今回は消費税の納付額というキャッシュアウト要因も考慮した場合の資金繰り損益分岐点売上高の計算や考え方をご紹介します。
(今回は消費税が資金繰り損益分岐点売上高の計算にどのように影響を与えるかを明確にしたいので、法人税等は考慮しないで計算や説明をします)
本題に入る前に、消費税の仕組みについてちょっとだけ説明します。
簿記的な話、税務・会計的な話しに少しなりますが、消費税の仕組みを分かっていないと消費税の納付額というキャッシュアウト要因も考慮した場合の資金繰り損益分岐点売上高の計算などはできませんので、少し頑張ってついてきてくださいね。
消費税の納税は「預かっている消費税」から「すでに払った消費税」を差し引いて、残っている消費税を納税します。
消費税の概念は「あくまでも消費者からの預かり」です。
私の姉妹Facebookページ「OfficeパートナーのFacebookページ」で紹介した事例を引用して説明していきます。
『消費税納税額の計算方法(簡略説明)』
携帯電話ショップのマルサ興業での取引事例です。
お店は人気スマホ機種の ”USO800” を5台仕入れました。仕入れ先業者へスマホの”USO800”の代金として 100,000円と消費税分5,000円の 合計 105,000円 を支払いました。
仕入れをした ”USO800”は人気機種だけに、店頭に並べたら来店する人がすべて気に入って購入していきます。今日一日で仕入れた5台がすべて売れてしまいました。
この”USO800”の販売額は5台の合計額で210,000円です。(内 消費税分が10,000円)。
携帯電話ショップのマルサ興業の消費税納税額を計算してみましょう!
売上に対する消費税(10,000円)から、仕入に対する消費税(5,000円)を差し引いて、残った5,000円が納税する消費税です。
上でも書きましたが、消費税は消費者が負担者です。携帯電話ショップのマルサ興業のケースで言いますと、人気のスマホ機種の ”USO800” を買ってくれた消費者の皆さんが消費税を負担しています。
携帯電話ショップのマルサ興業はあくまでも消費者から頂いた消費税(この事例の場合は10,000円)は携帯電話ショップのマルサ興業の懐に入るのではなく、あくまでも一時的に預かっているだけなんです。
また、携帯電話ショップのマルサ興業も人気のスマホ機種の ”USO800”を仕入れる(購入する)事によって消費税(5,000円)を支払います。
一時的に預かっている消費税(売上に対する消費税分 10,000円)と支払った消費税(仕入れに対する消費税分 5,000円)とを相殺して手元に残っている消費税を納税するのが消費税の仕組みです。
これが消費税における基本中の基本の部分です。
次に、消費税法における消費税納税額を求めるまでの計算過程について紹介します。
消費税の納税額を求めるには 【 2通りの計算方法 】があります。
一つは上記の携帯電話ショップのマルサ興業で紹介した通りの方法で、売上に対する預かった消費税から仕入れ経費に対するすでに支払った消費税を差し引いて、手元に残った消費税を納める方法です。これを【本則課税】といいます。
もう一つの計算方法は、売上に対する消費税を把握して、消費税法によって決められた「業種ごとの割合」を使って簡便的に計算する方法です。
上記の 【本則課税】は売上も仕入も経費も消費税が係るすべての取引を正確に把握して、それぞれの預かっている消費税分と支払っている消費税分を集計しないと納税額が求められません。
しかし、企業活動の上では、消費税がかかっているモノと消費税がかからないモノとが混在していて、特に経費に関する消費税の課税非課税の正しい知識がないと正しく支払っている消費税の額を集計できません。
この煩雑・複雑な部分を簡易的に計算できるようにしたのが、もう一つの計算方法である【簡易課税】という制度です。
【簡易課税】は仕入等に対する支払ってある消費税額を、実際の仕入れや経費の支払いに係る消費税を集計して求めるのではなく、売上に対する預かった消費税を基に、業種ごとに決められた一定の割合(みなし仕入れ率といいます)を乗じて求めた金額を、仕入れや経費等に対する支払った消費税とみなして納付額を求める方法です。
この【簡易課税制度】は基準期間の課税売上高が5000万円以下でないと適用できない制度です。
さてさて・・・・
大丈夫ですか?
ついてこれていますか?・・・
もう少し 頑張ってくださいね!
では次に、消費税の会計処理についてご紹介します。
消費税の会計処理ですが、下記のシンプルな損益計算書をご覧ください。
『 携帯電話ショップのマルサ興業のシンプル損益計算書 』
・売上高 210,000円(内 消費税が 10,000円)
・仕入高 105,000円(内 消費税が 5,000円)
・経費 31,500円(内 消費税が 1,500円)
・消費税 3,500円
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差引利益 70,000円
という場合です。
消費税の決算書・試算表での表示方法及び会計処理方法にも 【 2通りの方法 】 があります。
一つの方法は上記の携帯電話ショップのマルサ興業のシンプル損益計算書の通りの、消費税も含めて売上高や仕入高を表示し、納付すべき消費税も【経費の一項目】として損益計算書上に表示して利益を計算する方法です。(税込表示と言います)
多くの決算書や試算表では 「租税公課」の勘定科目を使ったり、消費税額を明確にわかるように「消費税」という勘定科目を使って、販売費及び一般管理費(固定費)に表示してあると思います。
上記の携帯電話ショップのマルサ興業のシンプル損益計算書は【税込表示】で表示及び集計されているという事になります。
そして、もう一つの表示方法は、すべての科目から消費税を抜いて、消費税が含まれていない数字で決算書や試算表に表示させる方法です。(税抜表示と言います)
この場合は、決算書・試算表にたどり着く前に、
売上に対する預かっている消費税を 仮受消費税等 という勘定科目に一旦集計し
仕入れや経費に対する支払済みの消費税を 仮払消費税等 という勘定科目に一旦集計し
仮受消費税等から仮払消費税等を差し引いて、残った消費税額を 未払消費税等 という勘定科目に振り替える作業が必要になります。
ここに出てくる 「仮受消費税等」「仮払消費税等」「未払消費税等」という勘定科目(集計科目)は貸借対照表の勘定科目です。
では、上記の携帯電話ショップのマルサ興業のシンプル損益計算書を税抜表示で表示してみましょう!
(損益計算書)
・売上高 200,000円
・仕入高 100,000円
・経費 30,000円
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差引利益 70,000円
(貸借対照表)
未払消費税等 3,500円
という表示になります。当たり前の話ですが、【税込表示】でも【税抜表示】でも 最終の差引利益額は 70,000円 と変わりません。
上記を見ての通り、消費税は決算書や試算表の表示や集計額に影響を与えてきます。
では、消費税を考慮して資金繰り損益分岐点売上高を計算してみるのですが、今回は、消費税が資金繰り損益分岐点売上高にどのような影響を与えるのか?を明確にしたいので、減価償却費などの資金支出を伴わない経費や、借入金の返済、法人税等は除外してシンプルにシミュレーションしていきます。
よって、損益分岐点売上高 = 資金繰り損益分岐点売上高 になりますので、以下の表記は「分岐点売上高」に統一して表記します。
【税込表示】の場合、納税すべき消費税は【固定費の一項目】として固定費に集計されます。よって、上記の携帯電話ショップのマルサ興業のシンプル損益計算書から分岐点売上高を求めると、
・売上高 210,000円
・変動費(仕入) 105,000円
・変動利益 105,000円
・変動利益率 50%
・固定費 31,500円+3,500円=35,000円
と集計しなおして、
(固定費)35,000円÷(変動利益率)50%=70,000円
と分岐点売上高が計算されます。
では、検算してみましょう!
売上高が 70,000円ですと、
仕入高は売上高の原価率50%で計算されますから、35,000円となります。
そうしますと、変動利益は 35,000円になります。
経費は固定費ですので、35,000円はそのままですので、
変動利益35,000円から固定費35,000円を差し引いて、
損益は 収支ゼロとなり、損益分岐点売上高の計算が正しいと検証できました。
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と、、、 本当にこの検算であっているでしょうか?
この計算で間違いはないでしょうか?
ちょっと考えてみてください。
宿題にしますね(笑)
続きは次回にします。