黒い老犬は電気ウナギイヌの夢をみるか

誰にでも人懐こく無防備な笑顔で近づくので、人からよく「犬みたいだね」と言われるのだが、最近それも意外とアリかなと思う僕。

竜兵

2016-05-26 12:32:58 | 我が自閉的人生
(2011年)


A先生:「ごめんなさい。私、腕の調子が悪くて、指揮とか難しくて…」

あれれ? それじゃあ、卒業式の歌、誰が指揮をするの?

B先生:「ごめんなさい。私が代わりにやりたいんだけど、喉の調子が…」

声が出なけりゃ指導ができませんからね。そりゃ仕方ないけど。

B先生:「C先生とD先生は新人だから、ちょっと難しいですよねぇ…」

ははは。そりゃ困った。


黒犬:「ははは、みんな難しいんだ。何なら僕がやりましょうか?」
一同 :「じゃあ、それで。」



*****

E先生:「黒犬先生、F先生が『ふざけるな』と怒ってます」

知りません。

G先生:「何で音楽部じゃない黒犬先生が振るんですか?アリなんですか?」

知りませんって。

E先生:「黒犬先生、F先生が校長室に抗議に行ったみたいです」

勝手に行ってください。僕は知りません。
っていうか、誰か代わってください。

E先生:「黒犬先生、A先生がF先生に責められて泣いてます」

だから、知りませんって。
大体、4拍子って何だっ。





*****

落ち着いた、感動的な雰囲気。素晴らしい卒業式でした。
子どもたちの呼びかけも歌も、心が込もっていて素晴らしかったです。
みんな、感動をありがとう。



H先生:「でも黒犬、お前の指揮はひどかったなぁ。」



だから、知りませんって!


原因

2016-05-25 20:14:34 | 我が自閉的人生
(2011年)


畑に植えたひまわりが大きな花を咲かせています。



10年前に植えたライムの木には、今年初めて実がなりました。
正確には2年前に1個だけ実がなったのですが、
長男が大きくなる前にもいでしまいました。



でも今年は、たくさん実がついています。
今からジンを買って、収穫を楽しみにしています。

しかし、肝心の畑はというと、



今年はどうしたの?っていうほどの不作ぶり。
去年までは、放っておいても毎日山ほど収穫できたキュウリ…
それが、2ヶ月経っても、ご覧の状態です。

そもそも、最初に植えた苗は1週間で全滅。
わざわざ「放っておいて大収穫」って品種を買ってきたのに。
植え替えた苗も、5本中何とか伸びたのは2本だけ。

どんな土地でも育つのが取り柄のジャガイモも、
ひょろひょろと伸びてあっという間に枯れました。
近所のおじさんが、畑を覗いて「こりゃひどい」と爆笑。
掘り起こして、消しゴムくらいの大きさのジャガイモを収穫。

…本当に一体どうしたんだろう?
去年よりも手をかけているはずなのに。
畑に立ち尽くし、隣の妻に話しかける僕。

黒犬:「どう考えてもおかしいよね。連作で土地がやせちゃったのかなあ。」

妻:「そうねえ。今年はちゃんと世話もしてるのに…」

黒犬:「水も肥料もちゃんとあげてるし…」

妻:「雑草が生えないように除草剤も撒いたし…」

黒犬:「……」







それだっ!!!!!!



修士論文

2016-05-24 02:22:29 | 我が自閉的人生
(2011年)


大学院に派遣されて、カウンセラーの免許も取得して、先週はめでたく修士論文を提出いたしました。

毎週、指導担当の教授に課題を出され、何とかやっつけては、また課題を出され、ギリギリに何とかやっつけていたら教授から、

「黒犬君、研究で大切なのはスピードとクオリティだよ。」

と駄目出しをされました。
具体的にどうしたらよいかが分からなかったので、僕はとりあえず便所に、

「スピードとクオリティ」

と書いた紙を貼りました。

******

そんな貼り紙の効果もあったのかなかったのか、なんとか論文もある程度の形になり、無事に提出の許可をいただくことができました。何はともあれ、一年間の研究の成果。感慨深いものを感じます。
教授からは、

「完成した論文を周りの人に読んでもらい様々な視点からの示唆をもらいなさい。」

とのお言葉を頂きました。

その日、帰宅した僕は、まずは我が妻に

「今までありがとう。やっと完成したよ。」

と論文を差し出しました。
妻は受け取った論文をそのまま机に置き、

「お疲れさま。それよりお風呂掃除してくれる?」

と、やさしい言葉をかけてくれました。


専業主婦の妻に学校課題研究(修士論文)の感想を求めたのは、僕の間違いでした。
次の日実家に行く機会があったので、元教員の僕の母親に、

「論文が完成したんだけど、読んでみてくれる?」

と差し出しました。すると、

「論文出したんなら時間が空くんでしょ?お母さん旅行に行きたいんだけど…。」

と、僕の論文を机の上に置き、旅行の資料を持ってきてくれました。

母の旅行の話に一通りつき合った後、机の上の論文を拾い上げ、

「あのさ、色々あったけど、論文ね、一応出来たんだけど。」

と、今度は元小学校長の父親の所に持っていくと、

「論文?そういえば、お父さんが昔書いたやつがあったな。参考になるだろうから読め。」

と、2枚のわら半紙を渡されました。

******

夜も深まり、家族は楽しそうに談笑しています。
床の上にずっと放置されているのは、僕の修士論文。ふと気がついた長男のロプロスが、それを拾い上げて、
「父さん、これなに?」と聞きます。

「それかあ、それは、父さんの宿題だよ。ロプロス、読める?」


「…わあ、字がいっぱいっ。父さんって、すごいっ。」


僕は思わずロプロスを抱きしめていました。



選択

2016-05-23 04:12:10 | 子育て日記(過去~現在)
(2011年)

長男ロプロス週1回の習い事、テニスからの帰り道。
助手席に座ったロプロスが、おもむろに話しかけてきました。



「父さーん、心理テストねー。」



何故、今心理テストをするのかは全く理解できません。
でも、そんな唐突さにも、もう慣れました。はいはいってなもんです。



「あのねー、山にね、山に行って、遭難しちゃったのー、山でねー」



はいはい、とりあえず山は分かりました。



「それでねー、夜になっちゃったんだけどー、

 1、懐中電灯を使って周りを照らす
 2、焚き火をして、明るくする
 3、じっとしていて、暗闇に目が慣れるのを待つ

 父さんだったら、どうするー?」



そりゃ懐中電灯でしょ。間違いなく。1番で。



「はい。これで、あなたの性格が分かります。
 3番を選んだ人は、勇気がある行動的な人です。
 2番を選んだ人は、少し勇気がある人です。
 1番を選んだ人は、臆病で引っ込み思案な人です。」



ふざけんなっ!山で遭難してるんだぞっ。
呑気に焚き火したり、目を慣らしたりしていられるかっ。
懐中電灯持ってるんなら、間違いなく懐中電灯だろうがっ。
懐中電灯持ってるのに、使わないで焚き火したりとかは阿呆じゃっ。
死んでしまうぞ。死んでしまう。
何に載ってた、その心理テスト。何?本?
そんな本、ビリビリに破いてしまえっ。
遭難したら懐中電灯じゃっ。覚えとけっ。

…そんな思いを込めて、ガツンと一言。








「へぇー…」







めでたしめでたし。


001ライフ

2016-05-13 04:47:15 | 僕と妻との非日常
最近の妻は元気だ。
もちろん前ほどではないが、いろいろ何かやろうとしている。

しかし1週間後の妻は、また寝込んでいることだろう。
妻は月に1回、2時間かけて病院に行き検査を受けて、再発を抑える抗がん剤を5日間服用する。吐き気が相当キツいらしく、1週間はほぼ寝たきりになる。

半月元気で、半月寝たきり。
まるでサイボーグ001のようだ。
そして、その001ライフが一生続く。



最近の妻は元気だ。
だから、子どもたちも笑ってる。

でも来週の妻は、寝たきりだ。
「母さんっていつまで薬飲まなきゃいけないの?」って次男が聞くので、さらりと「一生だよ。」って答えた。
目を丸くしていた次男だったが、「だから俺たちが支えるんだよ。」という言葉に、多分よく分かってないかもしれないけど真剣な顔で頷いた。
手が掛けられず足りないところだらけだが、よい子に育った。僕ら家族は、こんな001ライフを一緒に楽しんでいくのだ。




時々、猛烈に恐ろしくなる。
001ライフの終わりを考えてしまうのだ。
仕事してる時も、洗濯してる時も、
子どもたちとふざけている時も、
常に001ライフの終わりを考えてしまう。
日によって大きさは変わるのだが、その恐怖が僕の胸からなくなることはないだろう。

僕はその恐怖ともうまく共存しながら、この限られた001ライフがそれでもずっと続くことを夢見て、ふざけ続け働き続けていこうと思う。