冒険家あっこのワールドたいむず

幼き頃より将来の夢は冒険家。青年海外協力隊、民間会社勤務を経て、目下次の夢へと邁進中!

【ワルシャワ編】パヴィアク刑務所博物館

2015年01月08日 | ポーランド旅行記
2015年1月8日(木)

朝から天候はすっきりしないものの、雨は降っていなかった。

宿泊していた場所からヨハネ・パウロ2世大通りを南へまっすぐ下っていくと、

突如不思議な広場が現れた。



広場の先には何やら塔のようなものが建っていて、

よく見ると、人の顔が複数彫ってある。



隠れているのか、鉄格子の奥にいるのか、とにかくこちらを窺う目がどれも鋭い。

これは何を表しているのだろうと裏に回ってみた。



どうやら先程の広場の方が裏側だったようだ。

少し進んでみる。



現れたのは「PAWIAK」の文字。

なんとここが目的地の一つ目、「パヴィアク刑務所」の跡地であった。

監獄としての歴史は古いが、特に1939年から1944年にかけて、

ポーランド総督府におけるゲシュタポの主要な刑務所として果たした機能が有名である。

中に入ってまず目に入るのが、当時の様子を再現した薄暗い廊下。



一瞬にしてその独特の空気に捕らえられ、体が強張った。

この状況における唯一の救いは、係りのおばちゃん達のお喋りの声である。

昨日のゲシュタポ本部跡もそうだったが、ここでも係りのおばちゃん達は大声で世間話をし、

大声で笑い、その声が館内に響いていることを全く気にしない。

おまけに一人は風邪を引いているようで、合間にくしゃみや鼻をかむ音まで響かせている。

全く無神経なお喋り声が、ここでは唯一自分を現実世界とつなぎ留めてくれる、

大変心強いものとなっていた。


この刑務所は今、博物館として当時の貴重な資料を展示している。



被収容者の所有物や刑務所から投函した手紙、獄中の様子が描かれた当時の絵・・・



実際のこれらのもの以上に当時を物語るものは、おそらくない。



その中の一つ、布で作られたように見えるこの花が特に私の胸を強く打った。

被収監者の一人、Zofia Talmaという女性が刑務所内で作ったというこの花。

彼女はそのままアウシュビッツ強制収容所に送られた。

後日母親の元に彼女の私物が送り返され、その中にこの花が見つかったという。

刑務所で、彼女はこれをどのような気持ちで何のために作っていたのだろう。

迫り来るあまりに酷い運命を、どこまで察していたのだろう。

そして彼女の亡きあと、母親はどのような気持ちでこの花を手にしたのだろう。

私たちには、それらの気持ちを想像してみることくらいしか出来ない・・・


ここで、私は思いがけない出会いを果たした。



これはコルベ神父を描いた絵である。

コルベ神父はアウシュビッツ強制収容所で、ある男の身代わりとして、

拷問の中でも一番恐れられていた餓死刑に自ら処された聖人として有名である。

また宣教師として長崎に約6年間滞在していたことから、日本と非常に縁のある

神父であったことも付け加えたい。

知らなかったが、パヴィアクは、アウシュビッツ強制収容所移送前の約3ヶ月間、

コルベ神父を収容していた刑務所だったのである。

そして神父はここからアウシュビッツ強制収容所に送られていったのだ。

パヴィアク刑務所に収容されている間のコルベ神父の姿を、

図らずもこうして絵を通して知ることができ、少し感慨深かった。



またもう一つ大きな出会いがあった。



これは、ポーランド人のカミラという女性が作った日本人形である。

カミラは反ナチス・レジスタンス活動に従事していた罪で夫や姉妹とともに投獄されていた。

彼女は獄中、日々の恐ろしい拷問や生活のなかで自分の死が近いことを悟り、

死の恐怖を紛らわせるため、また自分が生きた証として、人形制作に取り掛かった。

人形のモデルは喜波貞子といい、昔から日本文化に強い興味を持っていたカミラが、

公演の度に劇場に足を運び鑑賞したオペラ、「蝶々夫人」を演じていた歌手である。

材料の調達も、人形制作も、そして完成した人形を持ち運ぶのも、

見つかればすぐに殺されるという状況のもと、

まだ捕まっていない仲間の協力を得ながらの決死の行動であった。

材料の布切れは、なんと身分を偽り看守を務めるレジスタンス活動家の仲間が、

服の襟に縫い付けてカミラのもとに届けていたようである。

ようやく人形が完成すると、家族宛に次のような手紙を添えて仲間に託した。

「・・・あなたへの人形が出来上がりました。日本人が立っています。

ピアノの上に飾ってください。そして『テイコ・キワ』と名付けてください。・・・」

カミラは遂に刑務所から出ることなく、ワルシャワ郊外の森に連行され、そこで射殺された。

この人形について書かれた本が何冊か出版されている。

新しいもので言えば、田村和子著「ワルシャワの日本人形」が有名である。


1939年から1944年の間、パヴィアク刑務所には十数万人が収容され、

そのうち約四万人が射殺、約六万人がそこから強制収容所に移送された。

ワルシャワ蜂起後、ドイツ軍によって刑務所は爆破されたが、

一部の外壁とニレの木、そして一部の監房が当時の姿を残している。





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パヴィアク刑務所博物館

HP: http://www.warsawtour.pl/en/tourist-attractions/museum-of-the-prison-pawiak-muzeum-wi-zienia-pawiak-2449.html

所在地:Dzielna 24/26 00-162 Warszawa, Poland

開館時間: 水~金:9.30 am - 5 pm, 土・日: 10 am - 4 pm

入場料:8PLN
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