<瀬戸先生に血圧測定されたら・・・急上昇>
お医者さんの白衣には、
ケーシー型
コート型
の2種類があるようですが、これまではずっとケーシー型だった瀬戸政希先生が、今回の第4話でようやくコート型の白衣スタイルを披露してくれました。
ケーシー型は軽快で活動的な雰囲気ですが、伝統的なコート型は、長い裾がマントのようで、いい意味での「お医者様の権威」や、身体を覆い隠すことによる色気を感じさせてくれます。
もっとも、自分や身内が深刻な症状になったら、色気どころではなくなりますが・・・。
不謹慎を承知で、純粋にドラマの扮装として楽しませていただければ、今回の第4話は、瀬戸先生のこの白衣姿が最大の収穫でした。
悲劇のヒーロー=仲代壬琴(なかだい・みこと)以来のファンにとっては、田中幸太朗さんのコート型白衣には、ひときわ思い入れがあるのです。
「天才外科医」である壬琴の、医者としての勤務の現場が登場した回は、物語の中でたった一度
*-1、しかも白衣姿は、急患発生の知らせを受けて、病院の廊下を早足で歩きながら、コート型白衣を引っ掛けるように羽織った場面だけでした。
壬琴はこの後職場放棄して、「ときめき」を求めて自分の命を削る、激動の人生を突き進み、二度と医師の仕事に戻ることはありませんでした。
ただ、物語の主人公である正義感あふれる若者が、一貫して壬琴を「仲代先生」と呼び続けたこともあって(壬琴はその天才的技術で、瀕死のケガを負ったこの若者の命を、手術で救ったのです)、壬琴が「医者である」ことは、ファンにとって重要なアイデンティティーとなりました。
そのため、一度しか見られなかった白衣姿は、貴重な思い出として、心に残り続けたのです。
この回が放送された2003年6月22日以来、約2年ぶりの白衣姿は、壬琴以来のファンを、大いに喜ばせてくれることになったというわけです。
この他、主人公の若者を救った手術のシーンでは、マスクと帽子が鋭い目線をよけいに引き立てた、
緑色の手術着スタイル*-2もありましたし、三つ揃いのビジネススーツに黒いトレンチコート
*-3という、映像では
*-4、今に至るもたぶんこの時限りという、非常に貴重な社会人スタイルもありで、たいへん充実した回でした。
*-1,3
テレビ朝日系『爆竜戦隊アバレンジャー』
第18回──誰だ?アバレキラーだ!──
2003年6月22日放送
「あらすじ」の下の「みどころ」に、スーツ+黒トレンチスタイルの幸太朗さんあり
*-2
手術シーンはこちらにも(写真2枚目)
ちなみに、写真3枚目の、ホームレスみたいにボロボロの服で倒れ伏しているのも幸太朗さんの壬琴です。せっかくの社会人スタイルもだいなしです。左手首(指先がスッと伸びてて、きれい・・・)にはめたダイノマインダーのエネルギーが強すぎて、感電状態で気絶してしまったのです。左上に見えるひしゃげたサッカーボールみたいなのが、その強大エネルギーの発信元・のちに生涯のパートナーとなる爆竜トップゲイラーの卵。
幸太朗さんの「倒れ方」はいつもおもいきりがよくて色気があります。
──課題企画「私の好きな倒れ方ランキング」
*-4
舞台『ニューヨーク青春物語~アランとバディ~』
2004年6月8日~13日、三越劇場
父親が経営する会社に勤務する、ウブで真面目な青年=バディ・ベーカーとして、地味なスーツ姿を披露
このような思い出を胸に秘めつつ、改めて瀬戸政希としての幸太朗さんを観察すると、今回は、今までの3回では見せてくれなかった、柔らかな笑顔が印象的でした。
やはり、単なる「イヤな人」ではなさそうです。
お母さん(真柴由美)の残り少ない時間を、充実したものにするべく、協力しているかのようです。
ドレッサーが置いてある畳の部屋は、由美さんがふだん、寝起きしている部屋なのでしょうね。
好意で往診してくれた瀬戸先生は、彼女の血圧を測っていたようです。
血圧測定といえば、人に測ってもらうときでも、筒の中に腕を通して機械で測る場合でも、腕がギュッと空気で締め付けられると、息まで苦しくなるようで、私は毎回、ごく微小なパニックを感じるのです。
病院ではない、自分の部屋のふとんにあおむけに横たわった状態で、上から覗き込む瀬戸先生にギュッと締め付けられたら──締め付けるのは先生ではなく機械ですが──血圧も心臓も大騒ぎになって、とても正常なデータは採ってもらえそうにありません。
和室での往診は、やはりコート型白衣にかぎりますね。
靴を脱いで、畳に座った腰から下半身が適度に隠れて、姿に情緒が生まれます。
羽織で端座する男性の色気にも通じるものがあります。
そして帰り際にスックと立ち上がった時、裾がわずかにひらめき、ハッとした瞬間にはもう、落ち感ある白布は彼の全身を静かに包んでいる・・・。
この静→動→静というドラチックな流れは、機能優先のケーシー型では、叶わないことでしょう。
もうすぐ命が消えてしまう美しい人妻と、
才能を生かす道をあきらめて、敢えて何かに服従しているような青年医師──
大きな運命に囚われているふたりが、視線を交わす様子が印象的でした。