時間の外  ~since 2006~

気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

さて、大河「天地人」のことでも書いておこうか。

2010年01月05日 | レビュー(テレビ、ゲーム、本、映画、その他)

09年のNHK大河ドラマ「天地人」。
番組も終わったし、新しい大河「龍馬伝」も始まったし、そろそろ「天地人」について書いておきたい。

結局一年間最初から最後まで見続けた。

その間、このドラマのことについて何度書こうと思ったことだろう。
色んな思いがある。
以下に書くことは、全て私個人の感想であり、それを他の人に押し付ける気持ちはない・・ということを前置きした上で。


とりあえず刹那的な感想は書きたくなかったので、全部見終わってから書こうと思ってた。
今こそ。


どんなドラマにも良い点や悪い点はあるだろう。
すべての人が納得するドラマなんてのは、ほとんど無いだろう。
それが歴史ものであれば、なおさらだ。
そういうことは自分なりに分かってはいるのだが・・。

結論から言うと、私にとってドラマ「天地人」は極めて残念な作品になってしまった。
個人的におおいに期待していただけに、この落胆ぶりは辛い。

役者は皆頑張っていた。
兼続、景勝、信長、三成、秀吉、家康、そのほかたくさんの役者さんが、この作品を救っていたと思う。

だが・・終わって全体を振り返ってみれば、シリーズ構成のミスやシナリオの物足りなさが目立った気がした。少なくても、このドラマに大いに期待した私にとっては。
途中、見てて、演じる役者が気の毒に思えたこともあったくらいだ。

ちゃんと構成はシナリオ打ち合わせなどで考えたはずだが、全体的に「場当たり」的に見えてしかたなかった。

途中、話の軸がぶれることがあったし、最初の頃のエピソード配分の浪費のせいで時間がなくなり、後半は描きこみ不足のエピソードが目立つようになった。
それゆえ、人物の登場の仕方や、心理、描き方や相関関係に唐突な点が増えた。

外してもいいエピソード、外してはいけないエピソード、たいして時間をかけなくてもいいこと、描かなくてはいけないこと、描かなくてもいいこと、各エピソードの時間配分や取捨選択に疑問点が多くなっていった。
これは、見てて痛かった。

架空の人物を出すのはいい。フィクションで膨らませるのもいい。ドラマなのだし。
だが、架空の人物に時間をかけすぎて、肝心の「実在した重要人物」を描く時間がなくなってしまっていた。
それゆえ、登場人物の掘り下げ不足、もしくは「重要人物のカット」という事態に陥った。


主人公に直江兼続を選んだ意義や意味合いや独自性が、後半になるにつれ薄くなっていった。
そのせいか、私は、後半は惰性で見ていたような気がする。

特に関が原の時など、「この作品は、本当に直江兼続を愛して作っているのか?」と疑問に思えてしかたなかった。

主人公を愛していないスタッフに描かれた主人公ほど悲しいものはない。
妻夫木さんが頑張って演じてただけに、特にそう思った。


天下の一大事「関が原の戦い」と、「慶長出羽合戦」を「二つの関が原」と位置づけるという、兼続主役作品ならではの視点を持っていたのなら、なぜ「慶長出羽合戦」の戦いをナレーションですませて、カットしたのか。
兼続の盟友・石田三成「関が原」のほうはそれなりに描いていたのに。
一体、兼続と三成のどちらが主役なのか。
本来、ここは兼続の人生のハイライトシーンであろうに。

兼続が主人公である以上「慶長出羽合戦」を中心に描くべきだった。
もちろん「関が原」も重要な戦なので、それをカットできないなら、どちらも公平に描くべきだった。
三成は光っていた。だからこそ、兼続も対比としてしっかり描かれるべきだった。
そうしてこそ、「二つの関が原」という視点も説得力がでてくるのだ。


だが、この「天地人」では、それをやらなかった。
これはもう致命的なシリーズ構成ミスに思えた。

ハイライトシーンでスルーされてしまうなんて、主役の直江兼続にも、主演の妻夫木さんにも失礼だったのではないか。


巷で話題になった、前田慶次郎の件もそうだ。
出さないなら出さないで、仕方ない。
だが、番組開始当初、「前田慶次郎は出す」方針だったのは明らかだ。

番組開始時の番組前ふりのところで「家康に恐れられ、真田幸村や前田慶次郎に慕われた男、直江兼続」という紹介の仕方をしてたではないか。
前田慶次の名前をはっきりと出していたのだ。
その時に慶次と共に名前を出された人物・・真田幸村、石田三成、家康、伊達政宗、秀吉は皆ドラマに出てきていることを考えても、慶次も出てくる予定だったのは明らかである。

また、出演者も、インタビューで、「やがて前田慶次郎も出てくる」ということを語っていたのは私は忘れていない。

番組のHP内の人物紹介のところで、当初前田慶次郎の名前もあったのを私はよく覚えている。

NHKへのファンからの問い合わせにも、「後半、前田慶次郎は出てきます」とNHKは答えていたのも分かっている。

それが、何の説明もなく、知らんぷりをしたままの方針変更と、対応。


NHKは今「アジアの一等国」という番組で、何千人もの人から訴えられているが、それに対して何の謝罪もなく、ひたすら「もみ消そう」とするあがきをしているが、それにも通じる「知らぬ存ぜぬ」の精神が、「天地人」にも反映されていた・・・ということなのだろうか。

出てこないなら出てこないで、最初から「登場を期待」させるようなことはしないでほしかった。

そのへんも、軸のブレ、優柔不断、場当たり的なシリーズ構成だったと言わざるを得ない。
一年続く長丁場シリーズなのに、長期ビジョンが欠けていた。
それは「臨機応変」という長所にはなっていなくて、「場当たり的」という短所になってしまっていた。

「大阪の陣」への時間配分もそうだった。

また、登場人物の善悪のつけかたは極端だった。幼年向け漫画ならともかく。
本来こういう歴史ものは、善悪の判断は難しい。どちらにも正義はあるし、どちらかが一方的に悪と決め付けられるものではない。

敵役イコール悪・・というわけではないのだ。
だからこそ、そういう視点を持って描いてこそ、こういう歴史ものは、見ている人の胸を打つ。

まあ、善悪をはっきり色分けして、歴史入門者には分かりやすかったといえば分かりやすかったのかもしれないが、奥深さには欠けた。


とまあ、物足りない点ばかりをあげてきたが、フォローもしておこう。
直江兼続や上杉景勝という人物を一気にメジャーにした功績はあるだろう。

歴史ファン・・・とりわけ戦国時代ファンにとっては兼続という人物の優秀さは知られていたが、一般の人には直江兼続という人物はイマイチ認知度や知名度は、この番組が始まるまでは低かっただろう。
上杉景勝にいたっては、なおさらだ。上杉謙信の偉大さの前に、景勝はこれまで影が薄かった印象があった。


だが、今回のドラマで、直江兼続と上杉景勝という人物の存在感は増したことだろう。

ゲームなどでは、今後上杉景勝の能力値設定はアップさせられるかもしれない。

また、敗者の視点で見る「関が原の戦い」というのは、それなりに新鮮だっただろう。
また、これまであまり良いイメージで描かれないケースが多かった石田三成のイメージには、新たな側面やイメージが加わったことだろう。


シリーズ構成のミスやシナリオの物足りなさを、役者が懸命にカバーしていた。
そんなドラマだった。
直江兼続を主役に選ぶことで揃えられたり、描くことのできる「独自性」の要素はいっぱいあったのに、それを活かすことができなかった。
もったいない・・と思えてならない。
できればリメークしてほしいくらいだ・・。


役者の皆さん、本当にお疲れさまでした。頑張ってくれてましたね!

松方さんは、ちょいと悪乗りの部分もあるくらい(笑)、生き生きと、楽しんで悪役家康を演じてくれてました。
さすがです。キャラ、立ってましたよ!おおいに。

北村さん、今回の景勝役で、役者としての幅を大いに広げられたと思います。いい味を出してました。
後半、景勝の影が薄くなってしまったのは、あなたのせいではありません。

小栗さん、三成役、お見事でした。すがすがしかったです。
これで、世の中の三成のイメージには一石を投じたと思います。

与六役の加藤君。素敵でした。かわいかったです。
私は特に、その声が好きでした。

謙信役の阿部さん。ともかくかっこよかったです。貫録勝ちです。
個人的には前田慶次郎を阿部さんに演じてほしかった。
いつか、阿部慶次郎主役で、いかがでしょうか?

笹野さんの秀吉は、ハマり役でしたね!イメージ、ぴったりでした。
またどこかで秀吉を演じてもらいたいです。

吉川さんの信長、本当はもっと出ていたかったのでは?
強烈な印象を残してくれました。

玉山さんの景虎、切なかったです。そして、美しかった。

お船を演じた常盤さん、私は特に序盤の「兼続と夫婦になるまで」の時期のお船が好きでした!

そして主役の妻夫木さん。
途中、構成やシナリオに不満があったりしませんでしたか。
まあ、あったとしても、そんなこと口に出せないでしょうけど・・。
でも、大河の主役を全うしたことは、今後の役者人生で大きく役立つことでしょう。これからも頑張ってください。
ちなみに私は、ガスパッチョのCMでの妻夫木さんも大好きです。
あのCMがドラマになったら、面白いでしょうね。

役者さん全員のことを書いていくときりがないので、このへんでやめるが、役者さんたちには全員に拍手を送りたい!



これで、私の見た「天地人」への思いは一区切りとしたい。


今年2010年の大河は、私が大好きな人物坂本龍馬が主人公。
一年、見させていただきます。


とはいえ、現段階では、先日まで放送されていた「仁 ~JIN~」のイメージがまだ私の中で残ってる状態。
そう、まだどこか「仁」というドラマを引きずっている。
こりゃ困った(笑)。


龍馬伝を見てると、どうしても「仁」の内野龍馬と福山龍馬を比べてしまうし、怪我人や病人が出てきたら、仁先生を呼びたくなる(笑)。

で、ドラマの最後になるであろうエピソード・龍馬暗殺は、仁先生に阻止してもらいたくなりそうだ。


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