
かつて大人気だったロックバンド、クリスタルキング。
その名前は、大ヒット曲「大都会」、そして続いてヒットした「蜃気楼」などで記憶されている。
個人的には、大好きだったNHK時代劇ドラマ「風神の門」の主題歌である「時間差」という曲も忘れ難い。ドラマだけでなく主題歌も大好きだった。
クリスタルキング・・・略して「クリキン」は、なんといっても、ツインボーカルがこのバンドの特徴だった。
一人はムッシュ吉崎さんで、もう一人は田中昌之さん。
吉崎さんは、パンチパーマの強面な風貌で、ドスをきかせた渋いボーカルで、男っぽい。
田中さんは、一度聴いたら忘れられない、電気を通したようなハイトーンボーカルで、いかにも当時のロックミュージシャンという風貌。
この二人の対比がインパクト絶大。
なんで、こういう対照的な2人が一つのバンドにいて、2人でフロントマンをつとめてるんだろう・・・・とも思ったが、そのアンバランスさは、ビジュアル的にすごく面白かった。
吉崎さんは、個人的なイメージでは宇崎竜道みたいなイメージで、田中さんはクイーンのギタリストであるブライアン・メイみたいなイメージを個人的に感じた。
まるで、宇崎竜道さんとブライアン・メイさんが同じバンドにいて、2人でボーカルをとっているようであった。
ブライアン・メイさんは本来ギタリストであったから、ブライアン似の田中さんがボーカルのポジションにいることが余計面白くて。
で、大ヒット曲「大都会」では、なんといっても田中さんのハイトーンボーカルがものすごくて。一体どこまで高い声が出るんだ?って感じだった。
だが、私がここで紹介したいクリキンの曲「セシル」は、なんと!
ボーカルは吉崎さんでもなきゃ、田中さんでもない。
山下さんという、ギタリストの方が歌ってた曲である。くせのない、素直な歌い方に好感を持った覚えがある。
クリキンは、吉崎さんの男っぽさと、田中さんのハードロック系のハイトーンボーカルの強烈なイメージが強かったのだが、この「セシル」という曲は、いつものクリキンとは全く違う系統の曲である。
甘く、切ないラブソングだ。
メロディラインは極めて親しみやすく、なおかつ優しくて、キュート。
山下さんのボーカルは少し地味目だが、それがかえって、この甘い曲には合ってた感じ。
曲調からいって、確かに吉崎さんや田中さんのボーカルキャラとは違う。
私がこの曲を初めて聴いたのは、・・確か、何かの音楽番組だったと思う。
クリキンが出てきて、てっきり吉崎さんと田中さんが歌うのかと思ったら、普段後ろに引っ込むような感じでギターを弾いてる方が歌いだすから、「あれ?」と思ったものだった。
でも、曲が進むうちに、「なるほど、こういう曲なら、吉崎さんや田中さんがリードボーカルをとらないのは、分かるなあ」と思った。
と同時に、この曲の持つメロディラインに引き込まれ、「うわ~、いい曲だなあ」と感心。
また、いつもはリードボーカルをとっている吉崎さんと田中さんが、少し暇そうにも見えた(笑)。
・・・と思ったら、曲の1コーラスごとの終盤で、田中さんが必殺のシャウトコーラス・・・というか、シャウトによるバックボーカルが入ってくる。
田中さんのシャウトコーラスが入ってくると、リードボーカルがかき消されてしまうパワーがあり、田中さんのような凄腕ボーカリストを1コーラス隊にまわすことの難しさも感じた(笑)。
要するに、それだけ、リードボーカルを「くって」しまう存在感があるということ。
吉崎さんの声は、しっかりコーラスに溶け込んでいるのか、入っているにしてもあまり目立たない。少なくても私は聞き分けられなかった。バッキングにも徹することもできる・・ってことなのかな。
だが、田中さんの声はコーラスに溶け込むには強烈すぎた(笑)。「この曲ではボーカルとってないけど、俺のことをお忘れなく!」とでも田中さんに言われているようであった。
でも、そういう要素が、この曲を「ただの甘い曲」に終わらせてない、いつものクリキンらしさが一瞬そこに現れる。
とはいえ、やはり「甘く切ないラブソング」である本質はしっかりしていた。
一度聴いただけでは「大都会」や「蜃気楼」「時間差」のほうがアピール度は高いだろう。
でも、「セシル」は、地味ながらも、じわ~~っと良さが染み込んでくる感じの名曲だった。聴くにつれ、良さが増してくる・・そんなバラードだった。
また、コーラスワークも、凝っていた。私の大好きなビーチボーイズをも彷彿とさせる秀逸さ。そんな点も、私の心は鷲掴みされたのだろう。
この曲は、密かな人気があったようで、学生時代に私が所属してた音楽サークルで、後輩がこの曲を弾き語ってもいた。
「こいつ、いい選曲するなあ」なんて思いながら、私は聴いてたものだった。
その数年後、私は友達が経営するカラオケパブに常連として通うようになった。
普段あまり私はカラオケは歌わないほうである。
でも、この「セシル」が大好きで、その店では気が向くと、この曲を歌ってた覚えがある。
あまり有名な曲じゃなかったにもかかわらず、私がたまにこの歌を店で歌うので、他の客もこの曲を覚えてしまい、気づけば、その店でこの「セシル」を歌う人が増えたのを覚えている。
当初、その店では、この「セシル」を選曲する人は誰もいなかった。だからこそ「他の客の手あかがついていない」ような気もして、大好きだったこの曲を歌い始めた私であったが、気づけば他の人にとられてるような気がした(爆)。
でも、この曲を気に入る人が増えたこと自体は、嬉しかった。
私にとっては、その店の思い出も染み込んでる曲である。
クリキンというと「大都会」のイメージしかない人、ぜひ、この「セシル」も聴いてみてほしい。
この珠玉のメロディラインを、そして絶品のコーラスワークを味わってほしい。これだけで、泣けてくるような曲。
貴方のクリキン観が、少し変わること、うけあい。
出だしから中盤までは、クリキンという気がしないだろう。終盤で、田中さんのバックボーカルが出てくるまでは。
クリキンには、こういう曲もあったのか・・・と思ってもらえたら、この曲をこのブログでネタにした意味もある。
人によっては、この曲こそクリキンのナンバー1と評価する人もいる。
クリキンって、こんなに音楽性の幅が広い、優れたバンドだったんだね。
決して・・決して「大都会」だけのバンドではなかった。それだけは間違いない・・ということが、この1曲で分かるだろう。
この曲でリードボーカルをとった山下さんにとっては、満を持した曲であっただろう。
まさに、ビーチソングの隠れた名曲・・・という表現がぴったりくる、珠玉のラブバラード。それが、クリスタルキングの「セシル」だ。
もっとヒットしてほしかった・・・。
どうして、こういう曲があまりヒットしなかったんだろうね。そんな現実が、なんだか、悲しい。
今も。
♪ さよならセシル 渚に今 思い出を集めて・・・・
小中高の生徒たちにとっては、夏休みももう、4分の3ぐらいは過ぎ去ってしまった。
私は学生時代、8月下旬は、夏休み終了のカウントダウンのように感じたものだった。
そんな時期に、ちょっと前の夏最盛期を思い出し、こんな曲を聴いてみるのも・・いいかもしれない。
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